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第4章
突然のコンニャク(コンニャクとは言ってない)
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「国王になる道を選ぶ。」
そう言った瞬間に、ウォルトス王子が反応したが、開きそうになった口を閉ざすように、ディランが手を挙げて制止する。
「ただし、それは今すぐのことではない。事が済み、さらに数年の期間を空けてから、国王になるための活動を行うことにする。」
ディランの発言に、浮きかけた腰を下ろして、難しい顔になってディランを睨むウォルトス王子。納得がいかないという顔だ。
「なぜ期間を設ける必要がある。それに次期国王を見据えるからこそディランの発言に力がこもるのだ。王子として返り咲き、上に立てばこそ騎士団を御せるというのに、いったいどうするつもりだ?」
「簡単な話ですよ。ライムの力を借ります。私とライムの力をうまく利用すれば、騎士団の7割から8割ほどは掌握できるでしょう。まあ、期間限定ではありますが。」
急に私たちの名前が出てドキッとした。確かには私は協力すると言ったし、美景も協力してくれるから、ある程度のことなら力になれる。努力するのは当然だし、ディランの望みをかなえようとは思う。
けれど、騎士団を掌握するのに私たちの力がいるというのはどういうことなのか。
ウォルトス王子は怪訝な表情をしているし、私たちも首をかしげている。それを見てディランは別に大したことはないと前置きしながら説明する
「要は私たちに付いたほうが得であると思わせればいい。それに一番有効なのが、次期国王として表に立つことだが、これをすれば、私はおいそれと城を離れることができなくなる。それは避けたい。本当はそう簡単に次期国王として認められることはないのですがね。」
最後にそう言ってすっとウォルトス王子に目を向ける。
確かに、本当はディランが国王になると言ったところで、実際に次期国王として認められるには様々な段階を踏まなければいけない。
まずは国王の退位。国王が存命の間に新たな国王を選ぶ際には、現国王が退位するかどうかを決めなければならない。国に王は一人だけ。現国王が君臨しているのにもかかわらず新たな国王を決めるなど論外なのである。
次に継承権順位からの国王選抜。これは単純に第一位から順に国王にふさわしいかどうか、またその意思があるかどうかを有力貴族が中心となって選考するものであり、そこで選ばれれば内々定のような状態になる。ここではまだ次期国王とは呼べない。
それが終われば次は民への選抜内容の発布、並びに異議の受付を行う。ここで異議がでなければ、民からも支持された正式な次期国王として認められる。
もしも異議が出た場合、その異議が一定数を超えた場合、貴族票を重視した国全体での投票を行うことになる。ちなみに貴族票は民の2倍の評価なので、貴族の後ろ盾が多いほうが有利ではあるものの、基本的には民からの信頼がものを言う形となる。
こうした様々な段階を踏んで初めて次期国王となるわけなのだが、これを行う場合、最速でも1月はかかることになり、最悪半年以上もかかることもある。
もちろん先を急いでいる私たちにとって、そんなことをしている時間は全くない。なので、ウォルトス王子の言うようなすぐに次期国王を決めるなんてことはできないはずなのである。
ただ、それにも抜け穴があるようで、ウォルトス王子はディランに目を向けられて軽く肩をすくめていた。
「私がどれほど前から準備をしていたと思っているのだ。ディランが同意すればすぐにでも話を通せるように手を回していたに決まっているだろう。」
随分と出しゃばった行動をとっていたみたいだ。平然とそう言うウォルトス王子は、いっそ清々しいとさえ思えてしまう。
「まあその話は今はいいでしょう。とにかく、私たちに付いたほうが得で、かつ次期国王として立たずに済む方法が必要。そこで、私とライムで一芝居打とうというわけです。」
「一芝居?いったい何をするというのだ。」
「ライムはルーナの弟子であり、かつエスカートの庇護を受け、光魔法では師であるルーナを上回っている。もっと言えば、彼女の人型はとても美しい。」
ディランは私たちに微笑みかけるけれど、なんだかその微笑みは少し陰って見えた。
とても面倒なことになりそうな気がする。
「ライム。人型にはもうなれるのか?」
「一応は。でもあまり大きな動きや激しい動きはできませんよ。維持できる時間だって短いですし。」
「どれくらいもたせられる?」
「じっとしているだけなら1時間くらいは。」
「魔法を使えばどうだ。」
「30分もてばいいほうかと。」
「十分だ。」
十分らしい。
何をさせられるのかは大体わかったけれど、壇上で魔法によるパフォーマンスでもするのだろうか。
ディランはウォルトス王子に向き直り、こう言った。
「ライムとの婚約を発表し、その中で次期国王を目指すことを匂わせる演説をする。これで多くの騎士を味方につけることができるはずだ。」
どうやら婚約発表するらしい。
力のある人と婚約を発表して、権威を強め、更にそこで次期国王としての活動を始めるような話をすれば、向こうが勝手に勘違いして味方になってくれるという算段らしい。
ほうほう。これはなかなかいい考えではなかろうか。
それで、お相手は誰かな。美人でエスカートに庇護を受けていて、ルーナの弟子らしいけど。
(のーちゃん。現実逃避はやめようよ。)
いや~。ディランと婚約なんて、すごく大変な立場をよく引き受けたもんだね。本当に頭があがらないよ。
「お幸せにね。」
「いったい何を言っているんだ?」
なぜか不思議そうに見られた。気づくとルーナはディランからかばうようにして私たちを抱き寄せているし、ウォルトス王子は苦り切った表情をしているし、エレアはなんだか複雑だけれどちょっと恥ずかしそうな表情をしている。なぜだろう。
「ディラン。いったい何を言っているのかわかっているのですか?」
「ライムはこの件について、私に協力してくれるといった。私が幸せになる道を選んでくれと。だから、その言葉に甘えることにしたまでだ。」
涼しい顔でそういうディランに対して、もはやあきれ返ってしまったルーナは、なんの反応も取らない私たちに目を向けてため息をついた。
「ライム。理解していますか?」
「何がでしょう?」
(のーちゃん。ディランに告白されたよ。やったね!)
とりあえず理解できないままに話は進められ、気が付いたころにはルーナと一緒に部屋に帰っていたのだった。
そう言った瞬間に、ウォルトス王子が反応したが、開きそうになった口を閉ざすように、ディランが手を挙げて制止する。
「ただし、それは今すぐのことではない。事が済み、さらに数年の期間を空けてから、国王になるための活動を行うことにする。」
ディランの発言に、浮きかけた腰を下ろして、難しい顔になってディランを睨むウォルトス王子。納得がいかないという顔だ。
「なぜ期間を設ける必要がある。それに次期国王を見据えるからこそディランの発言に力がこもるのだ。王子として返り咲き、上に立てばこそ騎士団を御せるというのに、いったいどうするつもりだ?」
「簡単な話ですよ。ライムの力を借ります。私とライムの力をうまく利用すれば、騎士団の7割から8割ほどは掌握できるでしょう。まあ、期間限定ではありますが。」
急に私たちの名前が出てドキッとした。確かには私は協力すると言ったし、美景も協力してくれるから、ある程度のことなら力になれる。努力するのは当然だし、ディランの望みをかなえようとは思う。
けれど、騎士団を掌握するのに私たちの力がいるというのはどういうことなのか。
ウォルトス王子は怪訝な表情をしているし、私たちも首をかしげている。それを見てディランは別に大したことはないと前置きしながら説明する
「要は私たちに付いたほうが得であると思わせればいい。それに一番有効なのが、次期国王として表に立つことだが、これをすれば、私はおいそれと城を離れることができなくなる。それは避けたい。本当はそう簡単に次期国王として認められることはないのですがね。」
最後にそう言ってすっとウォルトス王子に目を向ける。
確かに、本当はディランが国王になると言ったところで、実際に次期国王として認められるには様々な段階を踏まなければいけない。
まずは国王の退位。国王が存命の間に新たな国王を選ぶ際には、現国王が退位するかどうかを決めなければならない。国に王は一人だけ。現国王が君臨しているのにもかかわらず新たな国王を決めるなど論外なのである。
次に継承権順位からの国王選抜。これは単純に第一位から順に国王にふさわしいかどうか、またその意思があるかどうかを有力貴族が中心となって選考するものであり、そこで選ばれれば内々定のような状態になる。ここではまだ次期国王とは呼べない。
それが終われば次は民への選抜内容の発布、並びに異議の受付を行う。ここで異議がでなければ、民からも支持された正式な次期国王として認められる。
もしも異議が出た場合、その異議が一定数を超えた場合、貴族票を重視した国全体での投票を行うことになる。ちなみに貴族票は民の2倍の評価なので、貴族の後ろ盾が多いほうが有利ではあるものの、基本的には民からの信頼がものを言う形となる。
こうした様々な段階を踏んで初めて次期国王となるわけなのだが、これを行う場合、最速でも1月はかかることになり、最悪半年以上もかかることもある。
もちろん先を急いでいる私たちにとって、そんなことをしている時間は全くない。なので、ウォルトス王子の言うようなすぐに次期国王を決めるなんてことはできないはずなのである。
ただ、それにも抜け穴があるようで、ウォルトス王子はディランに目を向けられて軽く肩をすくめていた。
「私がどれほど前から準備をしていたと思っているのだ。ディランが同意すればすぐにでも話を通せるように手を回していたに決まっているだろう。」
随分と出しゃばった行動をとっていたみたいだ。平然とそう言うウォルトス王子は、いっそ清々しいとさえ思えてしまう。
「まあその話は今はいいでしょう。とにかく、私たちに付いたほうが得で、かつ次期国王として立たずに済む方法が必要。そこで、私とライムで一芝居打とうというわけです。」
「一芝居?いったい何をするというのだ。」
「ライムはルーナの弟子であり、かつエスカートの庇護を受け、光魔法では師であるルーナを上回っている。もっと言えば、彼女の人型はとても美しい。」
ディランは私たちに微笑みかけるけれど、なんだかその微笑みは少し陰って見えた。
とても面倒なことになりそうな気がする。
「ライム。人型にはもうなれるのか?」
「一応は。でもあまり大きな動きや激しい動きはできませんよ。維持できる時間だって短いですし。」
「どれくらいもたせられる?」
「じっとしているだけなら1時間くらいは。」
「魔法を使えばどうだ。」
「30分もてばいいほうかと。」
「十分だ。」
十分らしい。
何をさせられるのかは大体わかったけれど、壇上で魔法によるパフォーマンスでもするのだろうか。
ディランはウォルトス王子に向き直り、こう言った。
「ライムとの婚約を発表し、その中で次期国王を目指すことを匂わせる演説をする。これで多くの騎士を味方につけることができるはずだ。」
どうやら婚約発表するらしい。
力のある人と婚約を発表して、権威を強め、更にそこで次期国王としての活動を始めるような話をすれば、向こうが勝手に勘違いして味方になってくれるという算段らしい。
ほうほう。これはなかなかいい考えではなかろうか。
それで、お相手は誰かな。美人でエスカートに庇護を受けていて、ルーナの弟子らしいけど。
(のーちゃん。現実逃避はやめようよ。)
いや~。ディランと婚約なんて、すごく大変な立場をよく引き受けたもんだね。本当に頭があがらないよ。
「お幸せにね。」
「いったい何を言っているんだ?」
なぜか不思議そうに見られた。気づくとルーナはディランからかばうようにして私たちを抱き寄せているし、ウォルトス王子は苦り切った表情をしているし、エレアはなんだか複雑だけれどちょっと恥ずかしそうな表情をしている。なぜだろう。
「ディラン。いったい何を言っているのかわかっているのですか?」
「ライムはこの件について、私に協力してくれるといった。私が幸せになる道を選んでくれと。だから、その言葉に甘えることにしたまでだ。」
涼しい顔でそういうディランに対して、もはやあきれ返ってしまったルーナは、なんの反応も取らない私たちに目を向けてため息をついた。
「ライム。理解していますか?」
「何がでしょう?」
(のーちゃん。ディランに告白されたよ。やったね!)
とりあえず理解できないままに話は進められ、気が付いたころにはルーナと一緒に部屋に帰っていたのだった。
応援ありがとうございます!
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