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【08】共闘は完璧、関係は最悪
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閃光のような剣撃が、魔物の外殻を砕いた。
「――はっ、どうだ!」
アルヴィスが豪快に笑いながら剣を振るう。その勢いのまま、目の前の魔物を真正面から叩き伏せた。
(……本当に、信じられないほどの戦闘力ですね)
刃が通らないはずの硬い外殻を次々と破壊し、まるで戦場を駆ける猛獣のように敵をなぎ倒していく。その一撃ごとに衝撃波が生まれ、周囲の魔物すら怯ませているほどだ。
(でも、勢いだけでは勝てませんよ)
僕は冷静に戦況を見極めながら、アルヴィスの動きに合わせて魔法を展開する。
「右側、もう一体来ます!」
「任せろ!」
アルヴィスが振り向くと同時に、僕は地面を凍らせた。魔物の動きが一瞬鈍る――その隙を逃さず、アルヴィスの剣が鋭く振り下ろされた。
(……意外と、悪くないかもしれません)
最悪の相性だと思っていたのに、こうして共闘してみると、意外なほど噛み合っている。戦いの最中だけは、互いに言葉を交わすまでもなく、自然と動きが揃っていくのが分かる。
――なのに。
「お前、もうちょい素早く戦えよ!」
「貴方こそ、突っ込みすぎです!」
危機を脱した瞬間、それまでの連携が嘘だったかのように、僕たちはまた言い争いを始めた。
互いに息を切らしながら、睨み合う。周囲では兵士たちが歓声を上げていたが、こちらの言い争いはまるで気にしていないようだった。
――まったく、どうしてこいつとだけは、こうも毎回調子が狂うのだろう。
「……はぁ」
僕は額に浮かんだ汗を拭いながら、魔物の残骸を見下ろした。外殻は砕け、黒い体液が地面を焦がしている。強敵だったが、なんとか倒し切った。
「お前の魔法、思ったより使えんじゃねぇか」
「貴方の剣も、思ったよりは頼りになりました」
アルヴィスがにやりと笑う。僕はそっぽを向く。お互い、認めたつもりはないが、それでも戦いの中で得た実感だけは確かにあった。
「ま、俺たちの相性は最悪だが……戦い方は意外と悪くないかもな」
「それには、同意します」
不本意ながら、僕たちは少しだけ互いの力を認め始めていた。
――とはいえ、表向きに仲良くする気は、まださらさらない。
「でも、貴方の戦い方は危なっかしすぎます。もう少し冷静になってください」
「は? お前こそ、チマチマ考えすぎなんだよ。戦場で悠長に頭使ってる暇なんか――」
再び言い合いになりそうになったところで、不意に兵士の一人が駆け寄ってきた。
「アルヴィス殿下!セリオス殿!ご無事で何よりです!」
顔を上げると、兵士たちは興奮した様子でこちらを見つめていた。
「いやはや、あの魔物を倒してしまうとは……さすがです!」
「今の連携、見事でした!」
口々に賞賛の声が飛び交う。
「なっ……!」
僕は思わず絶句した。兵士たちの視線が、尊敬の色を帯びているのが分かる。今までどちらかといえば「敵国の王子」として距離を取られていたのに、戦いを経たことで空気が変わっていた。
「俺たちの連携が見事、だってよ」
アルヴィスがニヤつきながら肩を叩いてくる。
「勘違いしないでください。ただの必要に迫られた協力です」
「ハイハイ、そういうことにしといてやるよ」
アルヴィスが肩をすくめる。その様子が、いつもよりほんの少しだけ穏やかに見えたのは、きっと気のせいではない。
「それより、戦場の確認を」
僕は意識を切り替え、周囲を見渡した。
戦いの爪痕は大きいが、幸い、兵士たちの被害は最小限に抑えられていた。
「負傷者の手当を急いでください。戦える者は周囲の警戒を」
「了解しました!」
兵士たちが素早く動き出す。それを確認しつつ、僕はふとアルヴィスの方を見た。
彼は満足げに腕を組み、戦場を見渡していた。その顔には、妙な充実感が漂っている。
「……何をそんなに楽しそうにしているんですか」
「ん?いや、思ったよりお前と戦うのが悪くなかったなって」
僕は呆れながらも、小さく息をついた。
「それは……まあ、僕も少しだけ、そう思いましたけど」
アルヴィスが驚いたようにこちらを見る。
「おっ、素直じゃねぇか」
「違います! ただの事実を述べただけです!」
慌てて言い直す僕を見て、アルヴィスはまた楽しそうに笑った。
「セリオス殿とアルヴィス殿下の連携、見事でした!」
「次の戦いも、ぜひ一緒に!」
兵士たちが期待に満ちた笑顔を向けてくる。
「ちょっ……!だから、これはこの場の流れで仕方なく――!」
「まあまあ、次も俺に守らせてやるよ」
「余計なお世話です!」
僕の抗議をよそに、アルヴィスは満足げに笑っていた。
――どうやら、この関係が落ち着く日は、まだまだ遠そうだ。
「――はっ、どうだ!」
アルヴィスが豪快に笑いながら剣を振るう。その勢いのまま、目の前の魔物を真正面から叩き伏せた。
(……本当に、信じられないほどの戦闘力ですね)
刃が通らないはずの硬い外殻を次々と破壊し、まるで戦場を駆ける猛獣のように敵をなぎ倒していく。その一撃ごとに衝撃波が生まれ、周囲の魔物すら怯ませているほどだ。
(でも、勢いだけでは勝てませんよ)
僕は冷静に戦況を見極めながら、アルヴィスの動きに合わせて魔法を展開する。
「右側、もう一体来ます!」
「任せろ!」
アルヴィスが振り向くと同時に、僕は地面を凍らせた。魔物の動きが一瞬鈍る――その隙を逃さず、アルヴィスの剣が鋭く振り下ろされた。
(……意外と、悪くないかもしれません)
最悪の相性だと思っていたのに、こうして共闘してみると、意外なほど噛み合っている。戦いの最中だけは、互いに言葉を交わすまでもなく、自然と動きが揃っていくのが分かる。
――なのに。
「お前、もうちょい素早く戦えよ!」
「貴方こそ、突っ込みすぎです!」
危機を脱した瞬間、それまでの連携が嘘だったかのように、僕たちはまた言い争いを始めた。
互いに息を切らしながら、睨み合う。周囲では兵士たちが歓声を上げていたが、こちらの言い争いはまるで気にしていないようだった。
――まったく、どうしてこいつとだけは、こうも毎回調子が狂うのだろう。
「……はぁ」
僕は額に浮かんだ汗を拭いながら、魔物の残骸を見下ろした。外殻は砕け、黒い体液が地面を焦がしている。強敵だったが、なんとか倒し切った。
「お前の魔法、思ったより使えんじゃねぇか」
「貴方の剣も、思ったよりは頼りになりました」
アルヴィスがにやりと笑う。僕はそっぽを向く。お互い、認めたつもりはないが、それでも戦いの中で得た実感だけは確かにあった。
「ま、俺たちの相性は最悪だが……戦い方は意外と悪くないかもな」
「それには、同意します」
不本意ながら、僕たちは少しだけ互いの力を認め始めていた。
――とはいえ、表向きに仲良くする気は、まださらさらない。
「でも、貴方の戦い方は危なっかしすぎます。もう少し冷静になってください」
「は? お前こそ、チマチマ考えすぎなんだよ。戦場で悠長に頭使ってる暇なんか――」
再び言い合いになりそうになったところで、不意に兵士の一人が駆け寄ってきた。
「アルヴィス殿下!セリオス殿!ご無事で何よりです!」
顔を上げると、兵士たちは興奮した様子でこちらを見つめていた。
「いやはや、あの魔物を倒してしまうとは……さすがです!」
「今の連携、見事でした!」
口々に賞賛の声が飛び交う。
「なっ……!」
僕は思わず絶句した。兵士たちの視線が、尊敬の色を帯びているのが分かる。今までどちらかといえば「敵国の王子」として距離を取られていたのに、戦いを経たことで空気が変わっていた。
「俺たちの連携が見事、だってよ」
アルヴィスがニヤつきながら肩を叩いてくる。
「勘違いしないでください。ただの必要に迫られた協力です」
「ハイハイ、そういうことにしといてやるよ」
アルヴィスが肩をすくめる。その様子が、いつもよりほんの少しだけ穏やかに見えたのは、きっと気のせいではない。
「それより、戦場の確認を」
僕は意識を切り替え、周囲を見渡した。
戦いの爪痕は大きいが、幸い、兵士たちの被害は最小限に抑えられていた。
「負傷者の手当を急いでください。戦える者は周囲の警戒を」
「了解しました!」
兵士たちが素早く動き出す。それを確認しつつ、僕はふとアルヴィスの方を見た。
彼は満足げに腕を組み、戦場を見渡していた。その顔には、妙な充実感が漂っている。
「……何をそんなに楽しそうにしているんですか」
「ん?いや、思ったよりお前と戦うのが悪くなかったなって」
僕は呆れながらも、小さく息をついた。
「それは……まあ、僕も少しだけ、そう思いましたけど」
アルヴィスが驚いたようにこちらを見る。
「おっ、素直じゃねぇか」
「違います! ただの事実を述べただけです!」
慌てて言い直す僕を見て、アルヴィスはまた楽しそうに笑った。
「セリオス殿とアルヴィス殿下の連携、見事でした!」
「次の戦いも、ぜひ一緒に!」
兵士たちが期待に満ちた笑顔を向けてくる。
「ちょっ……!だから、これはこの場の流れで仕方なく――!」
「まあまあ、次も俺に守らせてやるよ」
「余計なお世話です!」
僕の抗議をよそに、アルヴィスは満足げに笑っていた。
――どうやら、この関係が落ち着く日は、まだまだ遠そうだ。
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