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第31話 精霊の効果、発動!!
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「なんだか懐かしくって、つい喋りすぎちまったなぁ。……ぼうっとしてると、体が干からびてしまっう。おいガキども。昔話に酔ってなんかいないで、さっさと引っ越しの準備を進めるぞ」
ツッパツッパツッパツッパアァ!
訓練場に溢れ返った鯉とも金魚ともつかぬ魚たちが、一段と元気よく跳ね回る。
「あんた、爺さんの弟子なんだっろ?」
「え、あ、はい。そうですが」
「よかったなぁ、いい師匠に出会えて。爺さんの言うことをキッチンと聞いて、頑張るんだぜ」
「あ、応援、ありがとうございます」
「無理やりズルズル太陽の下へ引っ張り出されて、最初は何事かと思ったけっどよ……。蓋を開けてみりゃあ、あんたは、他人の昔話を黙ってウンウン聞いてくれる、誠実で紳士なハンサッムだったじゃねえかっ! 気に入った!! あんたのことを忘れねえ。決して忘れねぇ!!」
「はあ……」
なんだか知らないが、目の前の実に奇怪な精霊にベタ褒めされ、俺は、陰部がむず痒くなるような、変な感覚を覚えずにはいられなかった。
「おいガキどっも、用意はいいか。ここに居ちゃあ、俺様も貴様らガキどっもも、干物まっしぐらだっ。今から潜って、次の住処を探すぞ。もちろん、爺さんからは遠く離れねえ。この辺りの近場でなあっ!!」
潜るだって? ああ、そういえば、鯉金魚たちは全員、小屋の壁の中に潜って暮らしていたのだった。
今更になって、彼らの能力が気になってきた。彼らは如何にして、陸に打ち上げられたまま、次の住処を探すというのだろうか。
すると、黒の鯉金魚が、弓のように大きく体を反らせて……バチンと勢いよく尾びれを地面に叩きつけた。
次の瞬間。
「な……なんだこりゃ!!」
黒の鯉金魚を波源として、まるで土が全部水に置き換えられたように、地面が大きく波打つ。
波紋が通過するたび、否応なく体が上下する。
逃げることすら歯向かうことも出来ない俺は、サーファーにでもなった気分で、ただ呆然と土の波に揉まれていた。
ズル、ズルズルズルゥ!
とつぜん鯉金魚たちが、頭をドリルのように動かして、一斉に土の中へ潜り始めた。
……いや、もはや訓練場の地面は、土ではなくなってしまった。
粘性のある巨大な水溜まり。あたり一面、底なし沼のようだっ!!
鯉金魚たちは、先ほどまでの喧騒が噓のように、あっという間に姿を消してしまう。
そこに残されたのは、地表に浮かび上がる馬鹿でかい灰色の魚影と、複雑に入れ替わる波間だけ。
ズビビビビィィ……。
水中で屁をこくような、汚らしい音が、森中に響き渡る。
ああ、信じられない。俺は、眼前に繰り広げられる驚くべき光景に、しばし言葉を失ってしまった。
訓練用のカカシ、ロープの巻きつけられた木々、闘技場の金網、木の小屋……訓練場に設置された、ありとあらゆるモノが、いびつに傾きながら、次々と地中深くへ沈んでいくではないか!
もちろん、正一爺の座る杭とて例外ではない。
地面に突き刺さった太い杭の数々は、ピサの斜塔めいて左右バラバラに傾きながら、ゆっくりと、だが着実に、土の池の底へ向かって沈んでいく。
ああ、ぼうっと様子を眺めている暇ではない。
当然のように俺の体も、ズルズルと土の中へ引きずり込まれていくではないか。
なんとか浮かび上がろうと、手足をバタつかせて、必死に抵抗を試みる。
地面に沈み込む手足には、水を切るような感触が残るのに、細かい土の粒が付着するだけで、まったく濡れていない。なんとも不思議な現象だ。
ああ、鉛みたいな重りを背負って、水に浮かび上がれるはずはなく、無慈悲にも俺の体は、勇者の装備とともに、土の中に消えていく。
ついに、土の上に残されたのは、亀のように高く突き上げた頭だけとなってしまった!
ウンと首を伸ばして、懸命に薄い呼吸を確保する。
首根が土に浸かった。顎先が土に触れた。
後はもう、生き埋めになるのを待つだけである。希望に満ちた異世界生活も、もはや、これまでか……。
ツッパツッパツッパツッパアァ!
訓練場に溢れ返った鯉とも金魚ともつかぬ魚たちが、一段と元気よく跳ね回る。
「あんた、爺さんの弟子なんだっろ?」
「え、あ、はい。そうですが」
「よかったなぁ、いい師匠に出会えて。爺さんの言うことをキッチンと聞いて、頑張るんだぜ」
「あ、応援、ありがとうございます」
「無理やりズルズル太陽の下へ引っ張り出されて、最初は何事かと思ったけっどよ……。蓋を開けてみりゃあ、あんたは、他人の昔話を黙ってウンウン聞いてくれる、誠実で紳士なハンサッムだったじゃねえかっ! 気に入った!! あんたのことを忘れねえ。決して忘れねぇ!!」
「はあ……」
なんだか知らないが、目の前の実に奇怪な精霊にベタ褒めされ、俺は、陰部がむず痒くなるような、変な感覚を覚えずにはいられなかった。
「おいガキどっも、用意はいいか。ここに居ちゃあ、俺様も貴様らガキどっもも、干物まっしぐらだっ。今から潜って、次の住処を探すぞ。もちろん、爺さんからは遠く離れねえ。この辺りの近場でなあっ!!」
潜るだって? ああ、そういえば、鯉金魚たちは全員、小屋の壁の中に潜って暮らしていたのだった。
今更になって、彼らの能力が気になってきた。彼らは如何にして、陸に打ち上げられたまま、次の住処を探すというのだろうか。
すると、黒の鯉金魚が、弓のように大きく体を反らせて……バチンと勢いよく尾びれを地面に叩きつけた。
次の瞬間。
「な……なんだこりゃ!!」
黒の鯉金魚を波源として、まるで土が全部水に置き換えられたように、地面が大きく波打つ。
波紋が通過するたび、否応なく体が上下する。
逃げることすら歯向かうことも出来ない俺は、サーファーにでもなった気分で、ただ呆然と土の波に揉まれていた。
ズル、ズルズルズルゥ!
とつぜん鯉金魚たちが、頭をドリルのように動かして、一斉に土の中へ潜り始めた。
……いや、もはや訓練場の地面は、土ではなくなってしまった。
粘性のある巨大な水溜まり。あたり一面、底なし沼のようだっ!!
鯉金魚たちは、先ほどまでの喧騒が噓のように、あっという間に姿を消してしまう。
そこに残されたのは、地表に浮かび上がる馬鹿でかい灰色の魚影と、複雑に入れ替わる波間だけ。
ズビビビビィィ……。
水中で屁をこくような、汚らしい音が、森中に響き渡る。
ああ、信じられない。俺は、眼前に繰り広げられる驚くべき光景に、しばし言葉を失ってしまった。
訓練用のカカシ、ロープの巻きつけられた木々、闘技場の金網、木の小屋……訓練場に設置された、ありとあらゆるモノが、いびつに傾きながら、次々と地中深くへ沈んでいくではないか!
もちろん、正一爺の座る杭とて例外ではない。
地面に突き刺さった太い杭の数々は、ピサの斜塔めいて左右バラバラに傾きながら、ゆっくりと、だが着実に、土の池の底へ向かって沈んでいく。
ああ、ぼうっと様子を眺めている暇ではない。
当然のように俺の体も、ズルズルと土の中へ引きずり込まれていくではないか。
なんとか浮かび上がろうと、手足をバタつかせて、必死に抵抗を試みる。
地面に沈み込む手足には、水を切るような感触が残るのに、細かい土の粒が付着するだけで、まったく濡れていない。なんとも不思議な現象だ。
ああ、鉛みたいな重りを背負って、水に浮かび上がれるはずはなく、無慈悲にも俺の体は、勇者の装備とともに、土の中に消えていく。
ついに、土の上に残されたのは、亀のように高く突き上げた頭だけとなってしまった!
ウンと首を伸ばして、懸命に薄い呼吸を確保する。
首根が土に浸かった。顎先が土に触れた。
後はもう、生き埋めになるのを待つだけである。希望に満ちた異世界生活も、もはや、これまでか……。
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