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第18話 歓迎は美女の味
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森を抜けると、エルネット姉妹が暮らすという、村の全景が見えてきた。
先の尖った杭が点々と打ち込まれており、グルっと村を囲んでいる。
杭の間には、鉄条網が張り巡らされている。
村を囲う杭の向こう側には、背の低い茅葺き屋根の家屋が建ち並んでいるのが見て取れた。
数棟の家屋から、細く白い煙がモクモクと立ち昇っている。誰かが火を焚いているのだろう。
「あれが、ピセナ農村。農村といっても、作物は全部カッパに食い荒らされて、いまでは荒れ果てた土が広がるだけなんだけど」
エルネットが、村を指さしながらそう言った。
エドワールたちは、早速村へ近づく。
「裏側にまわれば、村の入口があります。そこまで行きましょう」
杭の鉄条網の間近に立つと、ビリ、ビリと空気を切り裂くような音が聞こえてきた。
試しに手を触れると、ピリッとした感触が肌に走る。
なるほど。鉄条網には電気が通っているのだ。
これでは、ゴブリン等の弱小モンスターは、村に立ち入ることはできないだろう。
村の周囲を進むと、杭の鉄条網の一部が、ズタズタに壊されていた。
「……これは?」
「カッパが通った跡です。奴らは、鉄条網の電気など物ともせずに、村に侵入してきたんです」
鉄条網の壊された跡から推測するに、カッパの体の大きさは、自分とさほど変わらないようだ。
どうやら、村を荒らすカッパとやらは、想像していたよりも、かなり小さな奴らしい。
さらに進むと、木でできた大きな門が見えてきた。
門の上のやぐらのような所に、薄手の洋服を着た若い女性が二人、立っている。
「ただいま戻りました」
エルネットの快活な声に、二人の女性がこちらの存在に気づく。
……可愛い! エドワールと行動を共にする三人の美女にも勝る、その可愛さと言ったら!
「ねえ、エルネットとアメリエルが無事に帰って来ましたわ!」
やぐらの上に立つ二人の女性は、抱き合い、飛び跳ねて、歓喜の感情を表現した。
やがて一人の女性が、「急いで村長に知らせなきゃ」とやぐらを降りると、駆け足で村の奥へ消えていった。
「……ええと、そちらの方々は」
残った女性が、不思議そうにエドワールと聖女クレナを交互に見ながら、そう尋ねる。
「アメリエル姉さんがダンジョンの奥地でボスに襲われていたところを、この方に救っていただいたの」
「それは! なんと感謝申し上げればよいか!」
女性はエドワールに向けて、深々と頭を下げる。
「いいんですよ、頭を上げてください。偶然、通りかかっただけですから」
「その、腰に下げている剣は、もしや……」
「ああ、これですか」
エドワールは、何食わぬ顔で退魔の剣を取り出す。
「退魔の剣というらしいですね。要らないので、差し上げますよ。家の包丁の切れ味が悪くなったら、ぜひこれを使ってください」
ああ、驚きのあまり、やぐらの女性は、後ろ向きにバッタリと倒れて気絶しまった。
すると、ガラガラと大きな音を立てて、門が開いた。
門の向こうには、先ほどの女性と、ドレスのような服を着て冠を被った、不思議な女性が立っていた。
冠から垂れ下がる絹のベールに包まれて、不思議な女性の顔は、見て取れなかった。
「おかえりなさい。よくぞ帰ってきましたね」
落ち着いた気品のある調子で、不思議な女性は言った。
「……ええと、そちらの方々は」
いつの間にか意識を取り戻していた、やぐらの女性が、代わりに事情を説明すると、
「私は村長のガーネットと申します。ぜひ、村を代表して、お礼をさせていただけないでしょうか。村に招待させてください」
ガーネットは、慇懃に頭を下げながら、そう言う。
次の瞬間。冠のベールが、風でなびいて、チラッと顔が見えた。
ああ、その美貌と言ったら! まるで神様が、この世に存在する全ての美をかき集めて顔に貼り付けたのではないかと疑うほどの美しさ!!
「はい、喜んで」
エドワールは首肯する。
こうしてエドワールたちは、村長のガーネットに連れられて、村の門を潜るのであった。
先の尖った杭が点々と打ち込まれており、グルっと村を囲んでいる。
杭の間には、鉄条網が張り巡らされている。
村を囲う杭の向こう側には、背の低い茅葺き屋根の家屋が建ち並んでいるのが見て取れた。
数棟の家屋から、細く白い煙がモクモクと立ち昇っている。誰かが火を焚いているのだろう。
「あれが、ピセナ農村。農村といっても、作物は全部カッパに食い荒らされて、いまでは荒れ果てた土が広がるだけなんだけど」
エルネットが、村を指さしながらそう言った。
エドワールたちは、早速村へ近づく。
「裏側にまわれば、村の入口があります。そこまで行きましょう」
杭の鉄条網の間近に立つと、ビリ、ビリと空気を切り裂くような音が聞こえてきた。
試しに手を触れると、ピリッとした感触が肌に走る。
なるほど。鉄条網には電気が通っているのだ。
これでは、ゴブリン等の弱小モンスターは、村に立ち入ることはできないだろう。
村の周囲を進むと、杭の鉄条網の一部が、ズタズタに壊されていた。
「……これは?」
「カッパが通った跡です。奴らは、鉄条網の電気など物ともせずに、村に侵入してきたんです」
鉄条網の壊された跡から推測するに、カッパの体の大きさは、自分とさほど変わらないようだ。
どうやら、村を荒らすカッパとやらは、想像していたよりも、かなり小さな奴らしい。
さらに進むと、木でできた大きな門が見えてきた。
門の上のやぐらのような所に、薄手の洋服を着た若い女性が二人、立っている。
「ただいま戻りました」
エルネットの快活な声に、二人の女性がこちらの存在に気づく。
……可愛い! エドワールと行動を共にする三人の美女にも勝る、その可愛さと言ったら!
「ねえ、エルネットとアメリエルが無事に帰って来ましたわ!」
やぐらの上に立つ二人の女性は、抱き合い、飛び跳ねて、歓喜の感情を表現した。
やがて一人の女性が、「急いで村長に知らせなきゃ」とやぐらを降りると、駆け足で村の奥へ消えていった。
「……ええと、そちらの方々は」
残った女性が、不思議そうにエドワールと聖女クレナを交互に見ながら、そう尋ねる。
「アメリエル姉さんがダンジョンの奥地でボスに襲われていたところを、この方に救っていただいたの」
「それは! なんと感謝申し上げればよいか!」
女性はエドワールに向けて、深々と頭を下げる。
「いいんですよ、頭を上げてください。偶然、通りかかっただけですから」
「その、腰に下げている剣は、もしや……」
「ああ、これですか」
エドワールは、何食わぬ顔で退魔の剣を取り出す。
「退魔の剣というらしいですね。要らないので、差し上げますよ。家の包丁の切れ味が悪くなったら、ぜひこれを使ってください」
ああ、驚きのあまり、やぐらの女性は、後ろ向きにバッタリと倒れて気絶しまった。
すると、ガラガラと大きな音を立てて、門が開いた。
門の向こうには、先ほどの女性と、ドレスのような服を着て冠を被った、不思議な女性が立っていた。
冠から垂れ下がる絹のベールに包まれて、不思議な女性の顔は、見て取れなかった。
「おかえりなさい。よくぞ帰ってきましたね」
落ち着いた気品のある調子で、不思議な女性は言った。
「……ええと、そちらの方々は」
いつの間にか意識を取り戻していた、やぐらの女性が、代わりに事情を説明すると、
「私は村長のガーネットと申します。ぜひ、村を代表して、お礼をさせていただけないでしょうか。村に招待させてください」
ガーネットは、慇懃に頭を下げながら、そう言う。
次の瞬間。冠のベールが、風でなびいて、チラッと顔が見えた。
ああ、その美貌と言ったら! まるで神様が、この世に存在する全ての美をかき集めて顔に貼り付けたのではないかと疑うほどの美しさ!!
「はい、喜んで」
エドワールは首肯する。
こうしてエドワールたちは、村長のガーネットに連れられて、村の門を潜るのであった。
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