ダンジョンの魔王の種族はエルフー配下と共にまったりのんびり過ごしますー

柚ノ木 碧/柚木 彗

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ダンジョンは地下深く

これさえ無ければなぁ。

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「よーし全員名前貰えたな?なら今から飯だ飯!人数多いからな、手伝え」


 アデルさんや、何処から出したんですかその木のお玉。

 極々普通に手に持っているけど。そして大きなお鍋。私持ってないよ、こんな大きなの。昨夜出したのはもっと小さかったし。



 何だか色々突っ込みたい気分なのだけど、兎に角お昼ご飯です。

 無論料理人はアデルで、お肉や野菜のごった煮です。調味料は塩だけだけど、物資が無いし文句は言いませんよ?でもちょっと聞いておきたい。



「ん?砂糖に他の調味料を手に入れたいって?」



 うんうん。

 流石に塩だけだと飽きるし、時々は甘味が欲しい。

 調味料が無いようならハーブとかでもOK。味が単調で無いほうが良いしね。


「砂糖とかハーブ類か、レーベル女の子だもんな成程」


 いや女の子じゃなくても甘味って食べたくなるじゃない?それに辛いモノだって食べられるよ私は。

 それ以前に前世通りの年齢なら女の子って感じじゃないんだけど、そこはアデルだからなぁ…三千年の年齢と前世の年齢、どう考えても私のが幼い。


「俺の場合はダンジョンの内部でキビ砂糖を収穫してる。後は…」


 ん?収穫?



「ダンジョンの内部は気温が穏やかでな、そこでダンジョンの手先が器用な魔物達が農作業をしている。俺の場合見た目がどうみても魔物だし、実際魔物以外何者でも無いしな。人間が居る所等は寄れないし、人間が食うものを購入など、本来なら出来ない。ま、あの変わり者の商人が通いで来るから今はかなり助かって居るし、前と違って随分と贅沢になったな」



 そうか、アデル蜘蛛だもんね。

 今ちょっとだけ寂しそうな気がしたけど、気の所為…って訳じゃないのかも。


「言っとくが」


 ん?


「俺のダンジョンには俺、いや私と同じ様な種族の蜘蛛が配下として居るからな。だから特に不自由ってワケじゃないし、寂しいってワケじゃないぞ」


 んん?


「…私のこの姿になってから配下と意思の疎通は出来るが、会話はし難く為り、話は通じなくなったがな…」


 そしてツイッとそっぽを向くって、アデル?


「ぱぱ、よしよし」


「…」


 あざとくルクレツィアがアデルの頭を撫でようとして、身長が足りないからアデルの蜘蛛の足あたりをナデナデしている。それでも嬉しいのか何なのか、大人しく撫でられているアデル。

 …そっか、寂しいのか。

 だから私が産まれて見に来たのかな。



「(こういう事しとくと気が引けるって本当か?)」


「(ん。女は寂しそう、な、男に弱い。かも?ぱぱ、女顔で綺麗、だから、こう言った、普段と違う顔見せる、と、キュンキュンくる、かも、知れない。…来ない、かも、しれない)」


「(どっち?)」


 もしもし?

 小声で話しているつもりだろうけど丸聞こえだよ!

 そしてアデルにルクレツィア、二人共腹黒い!

 何時の間に二人の間で相談っていうかこういう風に言うって言うのを決めたのやら。

 油断ならないわ…。













 * * *













「あ」


「ん?どーしたレーベル」


「何か眼の前にルーレット?みたいなのが急に出て来た」


 相変わらずお皿が無いのでアデルに貰った竹筒を2つに割り、それをお皿代わりにし、またアデルが皆のお箸を制作してくれたのでそれを頂いて使う(私のは前に作って貰った物を洗って再利用)。お行儀が悪いけど今は我慢して貰って、皆で床に直接座ってご飯を食べ終わった。中々美味しかったなってのんびり食後のお茶、ではなくアデル曰く、『薬草の葉っぱ』を容器に入れてからお湯を沸かしただけのお茶の様なモノをのんびりと頂く。


 休憩したからMPが回復したかな~と思ってステータス画面を出してみたら、唐突に半透明な丸いルーレット画面が表示された。


「お、珍しいな。俺の場合だと数年に一度あるかないかしか出て来ないな。ここ数百年程配下召喚はしてないから尚更だけどな」


 ほうほうって感心した様に此方をみて呟くアデル。


「因みにこれ、放置しておくとどうなるの?」


「んー確か翌日には勝手に消えた気がするな。アノ時は例の大蜥蜴が邪魔しに来て、それ所じゃなかったからな。ったく、デカトカゲめ」


 アデルの機嫌が悪化してる。
 蟀谷の辺りがピクピクとしている辺り、業腹なんだろうなぁ。

 その気持はとっても分かります、ええ、嫌になるぐらい。私の糧の深淵の森を燃やされて、死活問題直結してもしあの場にアデルが居なかったらどうなっていたのやらって感じだしね。

 水も無い、食料も無い。あるのはスグ燃やされそうな出来立てほやほやのダンジョンだけって言う。しかもドラゴンさんに掛かればあっという間に燃やされてしまうって言う、貧弱さ極めたダンジョン。


 ほんっとドラゴンさん、頼むからこれ以上迷惑掛けないで欲しいんだけど、多分無理だろうなぁ~あの口調だと。


 しっかしまぁ…




「んん?MPがすっかり元に戻ってる?」


 ごはんを食べ終わって、ルーレットみたいなのが出たから回すついでにステータス画面を見てみたら、ほぼ空になっていたMPが全快している。この世界ってもしかして食事とかで回復する事も出来るのかな?


「ごった煮の中にMP回復剤の元になった葉を入れたからな。その分MPの回復が早まったんだろ。これで少しはレーベルが倒れ難くなったんじゃないか?」



 アデルに気を使われてしまったらしい。

 う、うーんこの人、いや蜘蛛さんってば怖いくらい私に優しいんだよなぁ。




「(これで少しはレーベル俺のこと気にかけるかな?)」


「(ぱぱ、ふぁいと)


「(おう)」


「(でもまま、ますたー、これだけ、じゃ、落ちない)」


「(だよな。どうすれば良い?)」


「(時間、大事)」


「(時間か、甲斐性あるとこ見せればなんとかなる、か?)」


「(ぱぱ、だいじなこと、見逃してる)」


「(お?何処らへん見逃してる?)」


「(ますたー、ぱぱの足、蜘蛛足、コワがってる)」


「(これはなぁ…)」


「(ぱぱ、むずかし?し?)」


「(進化すればなんとか。だが前に進化したのは三百年ぐらい前だから、早々出来ないだろうしなぁ)」


「(ぱぱ、進化すれ、ば、人なる?ごぶりんなる?)」


「(ゴブリンは無いな、次あるとしたら擬態とか化身かと思うんだが、中々なぁ)」


「(ぱぱ、きあ、い)」




 そこの二人、部屋の隅でコソコソしてるけど声丸聞こえだから、エルフだけあって聴覚が良いのかも知れないけど。


 …これさえ無ければなぁ。

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