乙女ゲームの期限は過ぎ、気が付いたら三年後になっていました。

柚ノ木 碧/柚木 彗

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「はぁ…」


 やっとだ。
 長い間かかり、漸く実現した。

 この場を音を立てて離れて行くデュシー姉さんとその子供のまだ幼いティナを乗せた馬車を眺め、安堵し息を吐く。


 長かった。

 本当に長かった。

 …このままかと何度も諦めかかったが、やっと開放されこの日が来た。


 次女であるデュシーが強制的に妾として隣の領地を収めているロドリゲス伯爵家の跡継ぎ、ゲシュウに連れ去られたその僅か数年後。まだまだ未成年、と言うか幼女と言っても良い位の年齢の時、油断していた私は…拉致されて一つ上の姉と同じく強引に妾にされた。

 しかもニヤついた男爵家の三女である私…つまりレッティーナ・アレイの実父、カルロス・アレイに強制的に引き渡されてである。

 ついでに実長男カイデンも居た気がするが、彼は速攻で末っ子の妹、オルブロンによって制裁と言う名の『カンチョー!(何故か此方でも通じる)』というお尻への攻撃?によって撃退され、遙か後方で蹲って居る姿しか見えなかったので記憶の中では居ない事にした。


 居ても私を助けない長男だから、スルー1択とも言う。


 我が妹ながらナイス。

 だがオルブロン。そのやり方は前世の記憶だと突き指になる可能性があるらしいから、指先を使わずに別の無機物を使ったほうが良いよ。

 例えばそこらに転がっている石とか、枝とか。

 …枝だと突き刺さってしまうかも知れないけど、私が許す。思う存分やっておしまい。






 * * *






 さて。

 十代の子供、つまり幼き身で大好きな母様達から引き裂かれ、当初はどうしたら分からず泣き暮らして居たが…なんて。

 見た目は兎も角(異論は認めません)、そんな大人しい子供では無かった。

 妾としてまんまと手に入れたと油断していたゲシュウを、私は容赦なく叩きのめした。

 主に彼の下。下半身の分身部分を潰す方向で。

 ん?

 子供なのにどうして大の大人、しかも男性相手に叩きのめせるかって?

 ゲシュウはどうやら鍛錬と言う事をしたことが無いらしく、残念ながら…いや、私にとっては有り難い事に、筋力の無いモヤシのようなお貴族様だったから。

 もしかしたらこの世界のお貴族様の子息はこの状態が普通なのかも知れないけれど、そのコトが私に幸運をもたらしたと言っても過言ではない。

 うん、多分。
 いや絶対に!

 幼少時から『ロリコン(強調)』であるゲシュウに、『狙われて居る』のが分かっていたからコッソリと影に隠れて特訓し、次男や三男である兄達が使う肉体強化魔法を見よう見まねで覚え、使えるようにした。

 これも己の身を守るため。

 前世の記憶的には「イエス・ロリコン・ノータッチ!」、あれ?「YES・ロリータ・ノータッチ」だったっけ?ううん、忘れた。兎に角紳士の掟よ、オキテ。

 とは言えこの世界、いやこの国のお貴族様は未成年同士の結婚等も普通にあるし、まして妾となると………



 誰だか昔領地で話していた言葉を思い出す。

 8歳の女の子が60過ぎの好色爺に嫁がされた、とか。

 幼女が同じ年齢の幼児な男の子の嫁に出された、とか。

 後半は別にいい。

 前半の言葉は悪いが、このエロジジイとは思う。

 両方共何処かの国の皇族だか王族だと聞いたけど、高貴すぎる身分の方々だから私には遠い存在だ。


 まぁなんだかんだと言って、前世の記憶持ちの私からしてみたらこの世界の結婚事情は【絶句】の二文字。失せろ!紳士失格者!

 てなもんである。


 そしてそんな変態に狙われて、しかも実父が実家の借金の形に私や姉を妾として物のように扱い押し付けるクズ人間。

 ちなみに長女であるシドニー姉さんはロドリゲス家の跡継ぎ、ゲシュウの好みでは無い年上という事で免除されている。

 多分年上というより、ゲシュウとシドニー姉さんの性格が合わなかった為と、上手いこと逃げ切ったからだと私は思っている。それにゲシュウが来ると尽くシドニー姉さんは頭突きやら腹に蹴りやら、問答無用で反論など一言も言えないうちに『物理的制裁』と言う名の品をお見舞いしていた。

 何時でもそんな調子なので、シドニー姉さんにゲシュウが対抗出来なかったのでは無いかと思う。



 さて、と。

 まず、どうやっても年齢がゲシュウよりも年下なのは覆らない。

 ナ・ラ・バ。

 長女のシドニー姉さんを見習う事に決定。

 つまり、自分で自分の身を守るしか無い。

 コソコソ次男と三男が体を鍛えている所を眺めていたら、何だか兄さん達がやり方を教えるように、見えやすいようにと、ユッタリと動いてくれたように思えるのは多分気のせいでは無いと思う。

 そのことに心の中で精一杯お礼をしつつ、決して次男と三男の兄二人の輪には踏み込まない。

 ここで兄達の中に入ると、確実に娘を借金の方に引き渡す気満々の実父と、父親のコピーの性格の長男カイデンが邪魔してくるのは分かりきって居る。

 それならば、コッソリと訓練を見て覚える方が何かと都合がいい。


 ふむふむ、成程ね。

 基本走る時は足全体を強化するのだけど、その状態だと無駄に魔力を使いすぎて効率が悪い。兄達二人はあまり魔力が無い…と、普段言っている。

 その為、無駄な魔力を消費させないように、更には効率を上げる為か足の部分的な…筋力を使う部分にのみ集中して魔力を使っているようだ。

 集中して魔力が纏っている部分を見詰めれば、表面には魔力を纏わず、内部にのみ纏っている。なんとも器用な事だと思う。

 これが長男のカイデンだと、足全体を魔力で覆い、無駄に魔力を消費してガス欠ならぬ魔力欠乏症を引き起こすことが多い。だが二人の兄は、特に三男のジーニアス兄さんはヒラメ筋(足首のスナップ部分)や、足だけでなく腹直筋、更には背筋にまで魔力を帯びている。

 更には大円筋も強化をしているみたい。

 ここまでしているのは三男のジーニアス兄さんだけがやっているのだけど、成程。腕も強化すると多少勢いが付く気がする。

 後程走ってみた時に両腕にも強化魔法を使用して見たのだけど、成程、納得。先ず走り出す時の一歩目の勢いが違う。それに腕を振って走り出した時、普段の状態よりも早く走れるし、地面に足を下ろし、二歩目に入る時の速度が違った。

 成程、前世の記憶の中に『体幹』という言葉があったけど、その都度必要な人体の部分を魔力で補強して強化すれば、この小さな体でも瞬発的な爆発力を出せるのでは無いだろうか。

 だがこの身体は未発達の小さな子供。

 じっと己の手のひらを眺める。


 裕福で無い代償のためか、年齢より小さな手。

 食事もなるべく改善しないとなぁ…出来る範囲だけど。

 プラス、己を鍛え上げなければ為らない。


 けれど…

 チラリと背後を伺う。


「あの二人、暇人だな」


 庭木に背を預け、レッティーナの様子を伺う父、カルロス。どうやら同じく暇と言うか真似をして威張っている気なのか、良くわからない長男カイデンがじっとりとした目で此方の様子を伺っている。


 正直気持ち悪い。


 あの様子だと『私』が長女の二の舞…シドニー姉さんのように、ゲシュウを痛め付けて逃げ出さないように見張っているつもりらしい。

 そんな暇があったら借金返済のため、領地のため、領民のために働けばいいのに。

 この領地は決して肥沃な大地では無い。だが領民が一丸となって此処まで開拓してきたのだから。

 あら?

 末の妹であるオルブロンが何時の間にかカイデンの足元に姿勢を低くして影に隠れて居て、暇そうに突っ立っているように見えるカイデンの周囲に…

 うん?

 細縄を仕掛けている?

 長男の足元に仕掛けたなぁ~と思ったら、後に下がってから……


「ぎゃあ」


 カイデンはオルブロンによって成敗されたらしい。

 そう言えば今朝、オルブロンのオカズ一品勝手に食べていたものね。

 恐らくその報復だろう。

 オルブロンが仕掛けた罠に嵌って転び、顔面が泥だらけになったカイデンに父は驚いた顔をしたがそれだけだ。基本父は子にあまり感心が無い。

 ちらっとオルブロンが居た方角を目線だけで見ると、隠れた草むらからピースサインが現れた。


 …あれ、この現世でもピースサインって通じるの?

 ディラン兄さんとジーニアス兄さんの方を振り返ると、二人はカイデンを指さして爆笑していた。

 土を顔面に被って酷い顔になっていたからね、カイデンは。

 そしてオルブロン。

 もう姿が無い。

 さっさと逃げ切るあたり、幼いながらもアッパレ。


 どうでも良いけどカイデン。

 転んだのは自業自得なので、疑わしいと言う感じで此方を見ないでくれる?私とカイデンとでは数メートルの距離があるでしょう。どっちかと言うと距離的には父であるカルロスのが近いわよ。

 おまけに私は罠を仕掛けたりしないからね?

 ついでに言っとくと、オルブロンのことだからこのまま謝らないと報復としてソレだけでは終わらないって知っているよね?しつこく何度もやってくるわよ、あの子。

 執念強さでは尋常でないからね?


 顔面が青ざめているようだけど、どうやら過去にやられた数々を思い出したらしい。

 だったらさっさとオルブロンに謝ってくればいいのに。多分あの子もコレだけじゃ収まらないから。ほら、何処からか何かをやらかしている音が…

 さっさと謝ってこーい!



 案の定、兄の部屋にあった日記帳がボロボロになっていたようだ。

 つい先程家の中ですれ違った時にカイデンが嘆いていた。


 やるな、オルブロン。


 ちなみに、オルブロン曰く「変なポエムが書かれていて気持ち悪かった」そうだ。

 内容を一部聞いてみたら、辛うじて読めた一文がどうも…兄、どうやら最近失恋したそうである。

 南無阿弥陀仏。

 あ、これ此方の世界では無い宗教だった。




 そんなこんなで幼少期を過ごし。

 時折末っ子の5歳下のオルブロンの、父であるカルロスと長男カイデンにだけは年齢の割には辛辣な性格を曝け出す場面に驚かされつつ。

 気がついたら。

 クソ親父に拉致されていた。

 って、言い方が『変』だけど。

 問答無用で『ゲシュウ・ロドリゲス』に借金のカタに売られていた。


 油断していたわー!

 まさか・まさか!

 三男のジーニアス兄さんが独り立ちする際に付いて行こうと約束を取り付けたその日に!


 まさか連行されるとはーっ!


 ぐぅぅ…

 そう。

 私レッティーナ・アレイ男爵家三女。

 身長も力関係も何もかも、実父には敵わないのである。

 悔しい。

 幾ら大の大人だからって、力量が違いすぎる。


 くっそぉー何時か反撃してやるのだからね!



 はぁ、それにしても…

 惜しい。

 三男のジーニアス兄さんは、数日経ったらこのアレイ領を出て王都、ロメインへと向かう。

 実はまだ兄さんはこの国の成人、16歳前。

 更に言うと未だ学校へと通う身である。

 おっかしいなぁ…

 だって、ジーニアス兄さんは成人して学校を卒業してから王都へと、兄さんの夢である騎士になる為に向かう筈、なのだけど。

 と言うか残念ながらソレだけしか将来の道は残されて居ない。

 の、だけど。

 何で成人前に向かうことになったの?

 しかも王都の学園へ途中編入ってどうしてそうなった?

 ここ数ヶ月の間に急に父がそう決め付け、兄さんの返事も聞かずに決まってしまった。


 多分理由は『私』なんだろうなぁ。勿論自意識過剰と言うわけじゃないよ。

 ここ暫く以前よりも増して、頻繁にゲシュウが通い詰めて来やがったから。

 そう来やがった。無駄に会いに。

 来なくて良いのに。


 でもオカシイ。

 確か【公式】に……。

 あれ、【公式】って?

 え、ナニソレ?




 はい、そこで私気が付きました。




 ここってもしかして、いやもしかしなくても!

『乙女ゲーム』の世界じゃないのさーっ!

 ナンテコッタイ!


 でも悲しいかな。

 私レッティーナ・アレイはそのゲームの世界には名前さえ存在しておりません。

 だがしっかーし!

 三男であるジーニアス兄様はなんと、乙女ゲームの攻略対象者の一人だったりする!

 しかも出世しちゃうのだ!







 そこで語られるエピソードの一つで、


「妹達が妾に…」


 と、悲痛な面持ちでジーニアス兄さんの高感度がかなり上がって仲良くなったヒロインに、徐に語るイベントがあるのだ。


 私の名前は出て来ないけどね?

 設定程度だけどね?

 残念ながら役柄があるのだよ。

 最低だけどさ…あああ、成人前から人生最低モードってどうなのよ。

 乙女ゲームのシナリオライター誰だよ。前世の考案者出て来い!そして謝罪しろ!私とデュシー姉さんにぃ!ジャンピング土下座しろぉぉおっ!



 切実に泣きたい。




 ロリコンなゲシュウとその従者達に問答無用で馬車に乗せられて、気を失うように寝入ったのは多分現実逃避をしたかったからだと思う。更に言うとそれから一週間程高熱が出て、生死を彷徨ったらしいけど知らん。

 多分前世の事柄を思い出したからだろう。

 知恵熱ってことかな。膨大な記憶が脳内で暴走していたからね。


 そして当然のように、起きたら実家では無く見知らぬあばら家で。

 その小屋には、久しぶりに見た心配そうにしている次女のデュシーお姉ちゃん。

 そしてその腕には見知らぬ小さな顔。


 生まれたての赤ん坊の姿が………。

 あの野郎、何てことを。

 デュシー姉さんってば私より3つ年上。

 と、言うことは、だ。


「成人前のイタイケな少女である姉さんに手を出したな―ッ!」


 熱から冷めて。

 快方祝いを持って駆け付けて来たゲシュウ・ロドリゲスの下半身の某特定の場所に。

 渾身の蹴り技が炸裂したのは記しておく。


 勿論後悔はしていないし、蹴り潰す気でいった。

 残念ながら潰れなかったようだが。

 くそぅ。

 更に言うと周囲に居たゲシュウの従僕達が誰もゲシュウに手を貸さなかった辺り、つまりそう言うことだろう。

 人望無いな、ゲシュウ。
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