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【裏口】
しおりを挟む「あーっはははっ!面白かったねぇ」
目の前で大爆笑しているのは、パン屋の常連さんのマティルデおばさん。
つい先程店先と言うか、横と言うか、寮の目の前と言うか。騎士団の詰め所の前で大騒ぎしていた外野面子を纏め、あっという間に賭け事の対象にしていた。
こういう所が前世と違って異なる世界だよなって思う。
前世なら警官の詰め所の前で賭け事等あってはならない出来事だし、速攻でお手々にお縄。
それなのにも関わらず、この世界では下手すると詰め所の騎士達まで賭け事の一端に触れております。って良いのか、大丈夫なのか。
え?高額賭け事は取締の対象だけど、多少の学ならば庶民のストレス発散になるから『見て見ぬ振り』だそうで。
…ううん、良いのか、そうか。
そうしてマティルデおばさんは、堂々と詰め所の前で賭け事の予想屋…前世で言う所の競輪競馬で高らかに声を上げ、『ニキ様6:オルフリオ様4』とその時点での掛けの数を伝えていた。
勿論数を伝えるのは有料で。
ちゃっかりしている人である。
そのちゃっかりしているマティルデおばさんが先程から、
「いや~儲けた、儲けた♪」
と、笑うにはワケがある。
体感としては長くは感じなかったのだけど、ニキ様とオルフリオ様の勝負は一時間以上も勝負が拮抗してつかず、これ以上続けるのは不可能、及び近所迷惑と判断したケイン様によって中止された。
勿論賭け事をしていた野次馬達は、次々と文句や抗議等をして大声を出したりして騒ぎを起こしたが、それぞれの伴侶…主にご近所のオバサマ達、それに敷地内と言うことで筋肉隆々のパン屋の主人に怒鳴られ、皆口を閉じた。
開いたのは唯一賭け事を仕切っていたマティルデおばさんだけである。
「という事は、この勝負は『引き分け』だね」
そして落ち込む面々。
この賭け事は何方かが勝敗を決めると…
例えばニキ様が勝った場合、負けたオルフリオ様側に掛けられた金額により割り振りられる。勿論自身が掛けた金額も帰って来ると言ったシステム。
この場合、『引き分け』だから掛けられた金額は全額仕切ったマティルデおばさんが全額受け取るということらしい。
「とは言え、コレじゃあねぇ…一部だけ貰うとするかね」
と言い、一人頭5百ゴル(日本円にして500円位)だけ貰い、後は全額返金していた。ちゃっかりと、「貸しだからね?」と言葉を残して。
とは言え高額掛けをした者には確りと2千ゴル程差っ引いていたから、ちゃっかりしていると思います。
「はぁ、賭け事の対象になっていたとは…」
ガックリと肩を落とすニキ様にオルフリオ様。
それとは対象に、ニヤリと笑うマティルデおばさん。
「ふっふっふっ。十分に稼がせて貰ったよ~」
このお金で産まれたばかりの孫に新しいおべべ(※服のこと)を買ってあげられると言われれば、掛け金を没収された人々まで「おめでとう」と祝いの言葉を述べる。
その光景を「長閑でいいねぇ」と、まったりと見詰めているケイン様。
「全くだ」と言って居る他の騎士団の皆様方。
「さぁさぁ散った、散った!」
と言うマティルデおばさんとパン屋の主人の声に、集まっていた街の皆は各自バラバラと散っていった。
が。
「おっとー忘れていた。ニキ様に副団長の騎士様達、私のパン屋や寮に飛び散った魔法の被害。キッチリ弁償して頂きますからね?」
何時の間に居たのか。
にっこり微笑んだまま、パン屋の女将さんは笑顔ではあるが多分頭部に角が生えたのでは!?と言う程の怒気を背景に、ニキ様とオルフリオ様の両名の肩をガシリッと掴み、「逃さん!己等!」と言わんばかりに青筋を立てていた。
ふと、パン屋の方に視線をやると、パン屋の裏口の扉だけが狙ったように破壊されていた……。
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