乙女ゲームの期限は過ぎ、気が付いたら三年後になっていました。

柚ノ木 碧/柚木 彗

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【林檎】

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 ケイン様が考え込むように視線を上に向けている。

 それにしても、こうして乙女ゲームの攻略対象者であるケイン様をこんな近くで見られるとはなんて眼福。
 以前なら幼い時にこの街に住んで居たかも!とか、通行したかも!とか思ってウキウキしていた。
 そう、ウキウキしていただけ。

 モイスト領に来てから、もしかしたら此処の道を通行したかも!とか、其処の露店で購入したことあるかも!?いやいや仮にも貴族、もっと高級な店に出入りするよね!?
 とか、諸々妄想して楽しんでいた。
 領民の噂話で、とある店に出入りしていたと言う話を聞いた時は急いで駆け付け、その店をガン見。
 ひたすらガン見。
 はい、タダの迷惑客です。すいません。
 高級そうなら外見を隈なく見続けて脳裏に焼き付け、庶民でも入れそうな時はお給料が出てから心臓がバクバクしながら入店。
 良い商品があった時は金額を何度も確かめてから思い切って購入。
 金額的に無理な時は、素直に諦め。

 ちょっと考えるともしかして私結構痛い子!?と、頭痛を覚える様な事柄をしてしまっていたけれど、それもこれも今となっては抹消したい過去の黒歴史。
 十分痛い子ですね…とほほ。

 そんな今、私の周囲には憧れの攻略対象様が!


 …
 ……
 ………


 乙女ゲームのシーズンはもう終わっていますけどね~。
 モブなので全く関係ないのですが。
 はい、色々お疲れさまです、自分。

 そうして開き直って鑑賞に勤しむワケですよ。

 年月が経過するときっとこう思うのだろうな、あの当時の私、黒歴史……。

 ま、まぁ見られるなら今のうちにという事で!
 こんな幸運、今後も続くワケではないでしょうし、きっと今だけの期間限定!
 前世で言う所のレストランやピザ屋の期間限定メニューみたいなものですよ。
 いや、それって季節限定だった?言葉が違うだけ?

 …って、私前世滅茶苦茶ド田舎に住んでいたから、全国チェーンのピザ屋さんとか行ったことは無い。
 観光地に向かう途中にある離れのピザ屋はあったけど、彼処は年中同じメニューだった。とっても美味しかったけれど。田舎ならではの山菜を使ったピザとか、目の前に流れる川魚等を使ったピザとか、家庭栽培で取れる野菜等を使ったメニューとかもあって美味しかった。
 ただし山の中にあるピザ屋だから、一年の半数は雪に閉ざされてお店は閉まっていた。

 レストランは…。
 ド田舎の居酒屋に両親に連れて行かれ、「レストラン」と両親に誤魔化された。
 考えてみれば猪とかが出る田舎だし、学校から帰って来ると年に数回は家の玄関を隣人が飼育している鶏が脱走。何故か家の玄関前に群れていた様な状態な村で、お洒落なレストランなんてあるワケが無い。
 それでも居酒屋のおばちゃんが村民達の為にメニューを頑張っていて、冬場とか夏場限定の鍋物とか、かき氷とかが非常に美味だった。
 初めて食べた、林檎を丸々一個凍らせて削ったかき氷。
 夏の熱い気候の中、食べることによって林檎の甘い蜜が一匙口の中に入れた瞬間に感じられ、更に林檎を冷やした事により感じる清涼感。
 居酒屋のおばちゃんが、「炭酸水を入れてみるとシュワシュワして美味しいわよ」と言っていたので量を加減して入れてみたら。

 あの味は転生しても忘れられないわ…!

 この世界で炭酸水は未だみたことが無かったので恐らく無いのだろうと思っているけど、林檎のかき氷だけは再現してみたい。前世での林檎程この世界の果物は甘みが強くは無いけど、工夫次第では美味しくなれる筈だ。
 蜂蜜は原価が高くなってしまうし、砂糖も同じ。うーん…煮詰めれば行けるかも?前世でのアップルパイ等はかなり煮詰めていたし、此方でも煮詰めれば出来るかも知れない。


「仕事に行く時、一人で行くの?」


 おっと、林檎のかき氷に夢中でケイン様の事を忘れていた。
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