異形の魔術師

東海林

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事の始まり編

第2話

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 気持ちを切り替えて、自分もパーティーを楽しむために壁の花は辞めて会場を回り、お世話になった人たちに挨拶して回った
    
 程なくして静かに音楽が終わり、第1王子エルントス=ラーゼン=ブレネスト殿下とその婚約者シュトラウト公爵家長女アンネローゼ様がホールの中央へ進み出る
 人々は中央から下がり、王子とその婚約者のファーストダンスを見守る
 反対側にはデライズ様とスーネリア様の姿が見える
 楽団の演奏が始まり優雅なダンス披露するお二人に周囲は引き込まれ、特に女性陣はうっとりとした表情で眺めている
 そんな中、自分の中には言いようのない何か嫌な感じがしてならなかった
 ダンスが終わると、周りからは溢れんばかりの拍手が送られ、お二人は手を上げて答えていた
    
 そう、そんな時に限って悪い予感は的中してしまう
    
 エルトランス殿下の真上に、何かが転移してくるのを感じ取る

 誰かを呼ぶには時間が無い

 反射的に自分は、身体強化を最大にして殿下に向かって駆ける
 ホールには魔法阻害の結界があるため、何時もの倍以上の魔力消費で無理矢理に発動させて走る
    
 どうやって殿下を守る?
    
 転移陣からは槍の先のようなモノが見える
 そして反対からはデライズ様が飛び出してくるのが見えた
 瞬間的に魔法を構築して殿下達に放つ
    
「エアクッション!」
    
 力ある言葉と共に殿下達に空気のクッションが纏わり付くのが感覚でわかる
 突然の事に驚く殿下達に速度を緩めず、そのまま体当たりを行いデライズ様の方に弾き飛ばす
 これならケガは無いはず
 弾き飛ばしたは良いが、転移陣から出現した物がすぐそこ来ているのが感覚でわかる
 右腕を振り返りざまに振り抜き、槍を振り払う事に成功した
    
 そう、成功した

 先頭の1本だけ
    
 続いて転送されていた4本の槍
    
 なすすべも無く体は貫かれた
    
 会場に一瞬の静寂が訪れ
    
 そして悲鳴が上がる
    
    
 槍に貫かた痛みからから、体は硬直し息が詰まる
    
 しかし痛みだけでは無かった
    
 刺された場所から、何かが蠢くように体に侵入してくる
    
 次に感じたのは熱さ
    
 体の内側を這いずり回り犯していく痛みと同時に体が発熱し
    
 焼けただれるような錯覚を覚える
    
 声にならない声を上げ、そこで意識を手放した
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