異形の魔術師

東海林

文字の大きさ
8 / 24
事の始まり編

第8話

しおりを挟む
 裸族の事で悶々としていると、何人かが歩いてくる音が聞こえてくる
 ココに用事があるのか、それとも新入りの屈強な囚人が来るのか
 そう言えば殿下の聴取の後は食事を持ってくる看守しか見てないなぁ

 考えている内に、自分の牢屋の前に立ち止まる3人の人物
 2人は殿下の聴取の時に、殿下の傍に控えていた騎士様
 もう1人は看守かな?
 その看守っぽい人はおもむろに鍵束を取り出して扉を開ける

「貴殿の釈放が決まった、出てくるがいい」

 言葉はキツ目だけど威圧感の無い騎士の言葉、けれど緊張している雰囲気がする
 絶対殺す宣言の騎士団長を見てるだけに、及び腰になるのは仕方ないよね
 他にも理由はあるけど

「どうした?釈放だぞ」
「これがあって出られないんですよ」

 騎士様にしっかり見えるように腕を上げて鎖を見せる

「それはすまなかった」

 そう言って看守の方を見るが、看守壁まで後ずさって全力で首を振っている
 そんなに怖いのかよ
 もう1人の騎士様が鍵を持って入ってくると手足の鎖を外してくれた
 そして何日かぶりに牢屋から出られた

 通路で騎士様と相対すると騎士様が大きく見える
 具体的には目を見て離そうとすると、見上げないといけないのだ
 どうやら化け物になって背が縮んだようだ

「聞きたい事が多々あると思うが、今は黙って付いてきて欲しい」

 どうやらこの後色々教えてくれるようなので、頷いて肯定の意思を伝える
 騎士様の先導で監獄の区画を出て通路をどんどん進んでいく
 幸か不幸かすれ違う人は少ないが、自分を目にした人は皆一様に驚いていた
 見た事の無い2足歩行の珍獣が歩いていればそりゃ驚くだろうよ
 そんな人の様子を観察できる余裕は全くなかった
 今の自分は全裸なのだから
 全裸で連れ回される、こんな羞恥プレイ、頭がハッキョーしそうだよ

 速く目的地について欲しいと願うが中々到着しない
 外に出て初めて判ったけど、どうやら王城の中だったらしい
 庭を通り広大な城の中を歩かされて到着したのは豪華な部屋
 ただ豪華なだけではなく、自己主張は少ないが繊細な作りの調度品が品良く置かている応接間のような部屋
 子爵家程度ではとてもお目にかかれないものだ

「今日からはここに滞在して頂きます」
「はい?ここに…ですか?」

 見たことのない豪華な部屋に圧倒されていると、案内してくれた騎士様から爆弾発言が飛び出す
 え?マジで?いいの?

「主よりそう承っております、後の事はこの者から説明があります」
「はじめましてランディ様、身の回りのお世話をさせて頂くミシュリーと申します」
「はぁ、よろしくお願いします」

 色々と理解が追いつかない中、美しい礼をしながら挨拶してくれる40前後の女性
 後ほどお迎えに上がりますと騎士達は退室していき、二人っきりになってしまう

「これからの予定を伝えます、まずは身を清めてもらい、食事をお出しします。その後エルントス第1王子殿下との謁見がございます」
「殿下と謁見ですか?」
「はい、殿下よりその場で全てを説明すると伺っております」

 まだ混乱していた、この人は恐れたりしてない、慈愛の笑みを浮かべている
 貼り付けた全てを隠す為の貴族の笑みでも、業務上の笑みでもなく
 慈しむような本当の笑みを浮かべているとなんとなく判った

「湯浴みの用意は出来ております、こちらへ」

 お風呂まであると言う事はかなり高位の方用の客間ずあないのか?
 自分なんかが使って良いのか?

「どうされました?こちらへどうぞ」

 尻込みし止まっていると、促されてしまったのでついて行く事に
 白を基調とした十分に広いバスルームは、中央に猫足のバスタブが鎮座している
 そして大きな姿見があったので、初めて今の姿を見る事になった
 うん、でっかい2足歩行する青いトカゲだ
 トカゲと違うのは、頭部に黒髪が有る事
 そして髪の間から左右に1本ずつ角が見えているが、途中で二股に分かれている
 改めて、化け物の姿になったんだと認識して気分が重くなる
 そしてもう一つ気になる事がある

 メイドさんが一緒に居るのだ

 てっきりバスルームに放りこまれて、後はご自由にだと思ったのになぁ…
 ものすごくイイ笑顔で、どこから取り出したのかブラシまで持ってる

「あ、あの、あとは出来ますから」
「いえいえ、ご不便をかけるのはメイドの名折れ、ささどうぞお座りにになって身をゆだねて下さい」

 や、やべぇ目がマジだ、しかも何か興奮してる
 結局この後むちゃくちゃ磨かれた
 そりゃもう隅々まで

 もう、お婿に行けない…

 今はバスタブでお湯につかりながら髪を洗われてる

「ランディ様、これはメイドのただの独り言でございます」

 ただの独り言と言うのだから、ここは黙って聞いておく

「殿下を庇って頂きありがとうございます、殿下はあなた様が心まで魔物にならずにいてくれました事に安堵をしております。そして全力で元に戻る方法を探すとも申されていました。どうか周囲に屈せず希望も持って頂きたいと思います」

 この言葉に思わず涙が出そうになった
 脳内とは言え強がってふざけてものの、化け物の見た目は拒絶や嫌悪の対象だった
 誰も味方は居ないと思っていた、状況によっては全力で逃げ出す事を考えていた
 けれど、化け物の姿になっても受け入れてくれる人が居る事が判って嬉しかった
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します

白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。 あなたは【真実の愛】を信じますか? そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。 だって・・・そうでしょ? ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!? それだけではない。 何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!! 私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。 それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。 しかも! ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!! マジかーーーっ!!! 前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!! 思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。 世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。

転生後はゆっくりと

衣更月
ファンタジー
貧しい集落で生まれたリリは、生まれた瞬間から前世の記憶があった。 日本人特有の”配慮”に徹した赤ん坊を演じていたことで、両親から距離を置かれた挙句、村人からも「不気味な子」として敬遠されることに…。 そして、5才の誕生日に遠くの町に捨てられた。 でも、リリは悲観しない。 前世の知識チートは出来ないけど、大人メンタルで堅実に。 目指すは憧れのスローライフが出来るほど、ほどほどの守銭奴としてリリは異世界人として順応していく。 全25話(予定)

記憶を失くして転生しました…転生先は悪役令嬢?

ねこママ
恋愛
「いいかげんにしないかっ!」 バシッ!! わたくしは咄嗟に、フリード様の腕に抱き付くメリンダ様を引き離さなければと手を伸ばしてしまい…頬を叩かれてバランスを崩し倒れこみ、壁に頭を強く打ち付け意識を失いました。 目が覚めると知らない部屋、豪華な寝台に…近付いてくるのはメイド? 何故髪が緑なの? 最後の記憶は私に向かって来る車のライト…交通事故? ここは何処? 家族? 友人? 誰も思い出せない…… 前世を思い出したセレンディアだが、事故の衝撃で記憶を失くしていた…… 前世の自分を含む人物の記憶だけが消えているようです。 転生した先の記憶すら全く無く、頭に浮かぶものと違い過ぎる世界観に戸惑っていると……?

はじめまして、私の知らない婚約者様

有木珠乃@『ヒロ弟』コミカライズ配信中
ファンタジー
ミルドレッド・カーマイン公爵令嬢は突然、学園の食堂で話しかけられる。 見覚えのない男性。傍らには豊満な体型の女性がいる。 けれどその女性から発せられた男性の名前には、聞き覚えがあった。 ミルドレッドの婚約者であるブルーノ王子であることを。 けれどミルドレッドの反応は薄い。なぜなら彼女は……。 この世界を乙女ゲームだと知った人々による、悪役令嬢とヒロイン、魔女の入れ替え話です。 悪役令嬢を救いたかったはずなのに、どうしてこんなことに? ※他サイトにも掲載しています。

さようならの定型文~身勝手なあなたへ

宵森みなと
恋愛
「好きな女がいる。君とは“白い結婚”を——」 ――それは、夢にまで見た結婚式の初夜。 額に誓いのキスを受けた“その夜”、彼はそう言った。 涙すら出なかった。 なぜなら私は、その直前に“前世の記憶”を思い出したから。 ……よりによって、元・男の人生を。 夫には白い結婚宣言、恋も砕け、初夜で絶望と救済で、目覚めたのは皮肉にも、“現実”と“前世”の自分だった。 「さようなら」 だって、もう誰かに振り回されるなんて嫌。 慰謝料もらって悠々自適なシングルライフ。 別居、自立して、左団扇の人生送ってみせますわ。 だけど元・夫も、従兄も、世間も――私を放ってはくれないみたい? 「……何それ、私の人生、まだ波乱あるの?」 はい、あります。盛りだくさんで。 元・男、今・女。 “白い結婚からの離縁”から始まる、人生劇場ここに開幕。 -----『白い結婚の行方』シリーズ ----- 『白い結婚の行方』の物語が始まる、前のお話です。

そのご寵愛、理由が分かりません

秋月真鳥
恋愛
貧乏子爵家の長女、レイシーは刺繍で家計を支える庶民派令嬢。 幼いころから前世の夢を見ていて、その技術を活かして地道に慎ましく生きていくつもりだったのに—— 「君との婚約はなかったことに」 卒業パーティーで、婚約者が突然の裏切り! え? 政略結婚しなくていいの? ラッキー! 領地に帰ってスローライフしよう! そう思っていたのに、皇帝陛下が現れて—— 「婚約破棄されたのなら、わたしが求婚してもいいよね?」 ……は??? お金持ちどころか、国ごと背負ってる人が、なんでわたくしに!? 刺繍を褒められ、皇宮に連れて行かれ、気づけば妃教育まで始まり—— 気高く冷静な陛下が、なぜかわたくしにだけ甘い。 でもその瞳、どこか昔、夢で見た“あの少年”に似ていて……? 夢と現実が交差する、とんでもスピード婚約ラブストーリー! 理由は分からないけど——わたくし、寵愛されてます。 ※毎朝6時、夕方18時更新! ※他のサイトにも掲載しています。

失った真実の愛を息子にバカにされて口車に乗せられた

しゃーりん
恋愛
20数年前、婚約者ではない令嬢を愛し、結婚した現国王。 すぐに産まれた王太子は2年前に結婚したが、まだ子供がいなかった。 早く後継者を望まれる王族として、王太子に側妃を娶る案が出る。 この案に王太子の返事は?   王太子である息子が国王である父を口車に乗せて側妃を娶らせるお話です。

大根令嬢の雑学無双、王弟殿下を添えて。~ 前世を思い出したので、許婚をほったらかして人助けしまくります!!

古森真朝
恋愛
気弱な伯爵令嬢のカレンは、自分勝手な婚約者レナートに振り回されていた。耐え続けていたある日、舞踏会で何者かに突き飛ばされ、階段から落ちてしまう。 その傷が元で儚く……なるかと思いきや。衝撃で前世を思い出したカレンは一転、かの『ド根性大根』みたいな超・ポジティブ人間になっていた。 『モラハラ婚約者の思惑なんぞ知るか!! 今度こそ好きなことやって、目いっぱい幸せに長生きするんだから!!!』 昔ひたすら読書に耽って身に着けた『雑学』を武器に、うっかり採れ過ぎた作物や、開墾しようとすると不幸に見舞われる土地、不治の病にかかった王族、等々の問題をどんどん解決。 領地の内外で心強い友人が出来たり、いつの間にかものすごく有名になっていたり、何かと協力してくれる王弟ヴィクトルから好意を寄せられたり(注:気付いてない)する中、温かい家族と共に仕事に励んでいく。 一方、前世から因縁のある人々もまた、こちらに転生していて――

処理中です...