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15話
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「そ、それは……」
「…………」
恐い…… まるで汚い物を見るような目で俺を見つめる絵美。
大学生の男の子を誘い筆下ろしをしたというのに、怒りと共に絵美の中で固く勃起してしまっている俺に失望しているのかもしれない。
正直にいって、俺の心は折れてしまいそうだった。
あの内気で恥ずかしがり屋な、それでいて真面目で何事にも一生懸命な絵美が騙されたにしろ俺を裏切り、開発されてしまった事もショックだったが、まさか自分から初心な男の子を誘い、身体を許してしまったという事実に……
「許せないよね? 他人に淫らにされただけじゃなくて、私自身が1人の男の子にセックスの快感を教えちゃったんだもん……」
「……絵美!」
「んっ! まだするの? 話はまだあるけど……」
「…………」
「それからね、たまに家に遊びに来ては私とセックスしたがって、相手してあげてたんだよ? 私を気持ち良くさせたいって、どこで覚えてきたのか私に色々試してきて、一生懸命に私を想って抱いてくれるから……ドキッとしちゃった」
「……クソッ! 絵美は俺の妻なんだ! 俺が初めてをもらって……」
「そうだね、私の初めては夏輝…… でもあの男の子は私が初めてを……」
やめてくれ! もう…… 心が壊れてしまう!
なのに何で! 何でこんなに興奮するんだ!
「……ふ~ん、夏輝だけの私だと思った? あの後、その男の子にいっぱい抱かれて……ついにイかされちゃったんだ……それからは毎回……」
「あ、あぁっ!!」
「……私がイかされたって聞いて、夏輝もイッちゃったんだ…… 夏輝って情けないね……」
絵美!? そんな目で俺を見ないでくれ! 絵美の心は俺だけの物だったはずなのに離れていってしまってるような…… 行かないでくれ!
「ふぅ…… 疲れたしシャワーを浴びてもう寝るから」
「あっ、あっ……」
今までされた事のない絵美の態度に、俺は声も出ずに、寝室から出ていく絵美の後ろ姿を見ている事しか出来なかった。
もしかして……心までその男の子に?
いや、違う! 昨日までは仲良くやって……
仲良く? 絵美の浮気話に興奮して何も咎めず、更に聞き出そうとしている旦那なんて……
身体を取り返す? 俺が1番と言わせて満足? ……そんなの普通じゃないだろ!
絵美が大切なら、そんな話をさせてはいけないのに、俺は快楽を優先して……
どうしていいか分からないが、とにかく絵美の側にいないといけない気がしたので慌てて風呂場へと向かう。
そして風呂場を開け、シャワーしている絵美を後ろから抱き締める。
「絵美……」
「夏輝……?」
シャワーのせいかもしれないが、絵美の目が潤んでいるように見えた。
「ゴメン! もう聞かないから! 絵美と一緒に居たいんだ!」
「……夏輝? 私ね、その男の子に「好きです」って言われながら真っ直ぐ私を見て抱かれた時…… 凄く気持ち良かった……可愛いだけだと思ってたけど、あの頃の私には頼もしく感じて…… 心を奪われそうになった…… 今の夏輝には私はどう思われてるのかな?」
「…………」
心を奪われかけた? 薄々感じていたが言葉にされると…… でも、心がほぼ壊れている俺は、愛の告白をされ感じている絵美を想像して勃起してしまう。
「……夏輝、私が他の男の子に告白されて感じている私で興奮してるの? …………夏輝、もう出てって!! 早く!!」
風呂場から追い出された俺は、放心状態のまま座り込み、ガラス越しにシャワーを浴びる絵美のシルエットを呆然と見つめている事しか出来なかった。
そして、その日から俺達夫婦はほとんど会話がなくなってしまった。
顔を見ても笑顔はなく、ご飯などの用意はしてくれているが食事も別々、話しかけようとしても絵美はその場から逃げるように離れていってしまう。
絵美の浮気を黙認し、更に内容を聞き欲望を満たしている俺に呆れてしまったのか、それとも俺とあの大学生を比較して大学生の方が魅力的に感じてしまったのか…… 欲望を優先した結果、夫婦の仲は最悪と言っていいほどになってしまった。
……でも俺だけが悪いのか? 元はと言えば浮気した絵美の方が悪いんじゃないのか?
そう思うとなかなか会話のきっかけが掴めず、1週間が過ぎて……
明日は休み…… ここ最近は絵美の浮気話に嫉妬しながらも絵美を抱き、絵美を満足させて優越感に浸っていたが、今週はそれどころではない。
そもそもそんな事を続けていれば、いずれ俺達の夫婦関係は破綻していたのに、満足に解決方法を話し合う事もせず、ズルズルと曖昧にしてきたツケが回ってきたんだ。
俺の気持ちとしては絵美を失いたくない……
浮気はされたが、1年も絵美を放っておいた俺がいけないっていうのも分かっている。
今までの事を謝って水に流し、そして新たな夫婦生活を……
「ただいま……」
本当にどこまでも俺は考えが甘く、どこか楽観的だった。
謝れば絵美は許してくれるだろう、そしてまた2人で歩んでいけるだろうと思っていた俺を殴り飛ばしてやりたい。
「ただいま……絵美?」
出掛けてる……のか?
「絵美、ただいま! ……絵美?」
そしてテーブルを見ると、書き置きがあった。
可愛らしい丸みのある絵美の字、大学時代によくノートを見せてもらっていたからよく見慣れていた字で書いてあったのは……
『ごめんなさい夏輝、出て行きます』
「…………」
恐い…… まるで汚い物を見るような目で俺を見つめる絵美。
大学生の男の子を誘い筆下ろしをしたというのに、怒りと共に絵美の中で固く勃起してしまっている俺に失望しているのかもしれない。
正直にいって、俺の心は折れてしまいそうだった。
あの内気で恥ずかしがり屋な、それでいて真面目で何事にも一生懸命な絵美が騙されたにしろ俺を裏切り、開発されてしまった事もショックだったが、まさか自分から初心な男の子を誘い、身体を許してしまったという事実に……
「許せないよね? 他人に淫らにされただけじゃなくて、私自身が1人の男の子にセックスの快感を教えちゃったんだもん……」
「……絵美!」
「んっ! まだするの? 話はまだあるけど……」
「…………」
「それからね、たまに家に遊びに来ては私とセックスしたがって、相手してあげてたんだよ? 私を気持ち良くさせたいって、どこで覚えてきたのか私に色々試してきて、一生懸命に私を想って抱いてくれるから……ドキッとしちゃった」
「……クソッ! 絵美は俺の妻なんだ! 俺が初めてをもらって……」
「そうだね、私の初めては夏輝…… でもあの男の子は私が初めてを……」
やめてくれ! もう…… 心が壊れてしまう!
なのに何で! 何でこんなに興奮するんだ!
「……ふ~ん、夏輝だけの私だと思った? あの後、その男の子にいっぱい抱かれて……ついにイかされちゃったんだ……それからは毎回……」
「あ、あぁっ!!」
「……私がイかされたって聞いて、夏輝もイッちゃったんだ…… 夏輝って情けないね……」
絵美!? そんな目で俺を見ないでくれ! 絵美の心は俺だけの物だったはずなのに離れていってしまってるような…… 行かないでくれ!
「ふぅ…… 疲れたしシャワーを浴びてもう寝るから」
「あっ、あっ……」
今までされた事のない絵美の態度に、俺は声も出ずに、寝室から出ていく絵美の後ろ姿を見ている事しか出来なかった。
もしかして……心までその男の子に?
いや、違う! 昨日までは仲良くやって……
仲良く? 絵美の浮気話に興奮して何も咎めず、更に聞き出そうとしている旦那なんて……
身体を取り返す? 俺が1番と言わせて満足? ……そんなの普通じゃないだろ!
絵美が大切なら、そんな話をさせてはいけないのに、俺は快楽を優先して……
どうしていいか分からないが、とにかく絵美の側にいないといけない気がしたので慌てて風呂場へと向かう。
そして風呂場を開け、シャワーしている絵美を後ろから抱き締める。
「絵美……」
「夏輝……?」
シャワーのせいかもしれないが、絵美の目が潤んでいるように見えた。
「ゴメン! もう聞かないから! 絵美と一緒に居たいんだ!」
「……夏輝? 私ね、その男の子に「好きです」って言われながら真っ直ぐ私を見て抱かれた時…… 凄く気持ち良かった……可愛いだけだと思ってたけど、あの頃の私には頼もしく感じて…… 心を奪われそうになった…… 今の夏輝には私はどう思われてるのかな?」
「…………」
心を奪われかけた? 薄々感じていたが言葉にされると…… でも、心がほぼ壊れている俺は、愛の告白をされ感じている絵美を想像して勃起してしまう。
「……夏輝、私が他の男の子に告白されて感じている私で興奮してるの? …………夏輝、もう出てって!! 早く!!」
風呂場から追い出された俺は、放心状態のまま座り込み、ガラス越しにシャワーを浴びる絵美のシルエットを呆然と見つめている事しか出来なかった。
そして、その日から俺達夫婦はほとんど会話がなくなってしまった。
顔を見ても笑顔はなく、ご飯などの用意はしてくれているが食事も別々、話しかけようとしても絵美はその場から逃げるように離れていってしまう。
絵美の浮気を黙認し、更に内容を聞き欲望を満たしている俺に呆れてしまったのか、それとも俺とあの大学生を比較して大学生の方が魅力的に感じてしまったのか…… 欲望を優先した結果、夫婦の仲は最悪と言っていいほどになってしまった。
……でも俺だけが悪いのか? 元はと言えば浮気した絵美の方が悪いんじゃないのか?
そう思うとなかなか会話のきっかけが掴めず、1週間が過ぎて……
明日は休み…… ここ最近は絵美の浮気話に嫉妬しながらも絵美を抱き、絵美を満足させて優越感に浸っていたが、今週はそれどころではない。
そもそもそんな事を続けていれば、いずれ俺達の夫婦関係は破綻していたのに、満足に解決方法を話し合う事もせず、ズルズルと曖昧にしてきたツケが回ってきたんだ。
俺の気持ちとしては絵美を失いたくない……
浮気はされたが、1年も絵美を放っておいた俺がいけないっていうのも分かっている。
今までの事を謝って水に流し、そして新たな夫婦生活を……
「ただいま……」
本当にどこまでも俺は考えが甘く、どこか楽観的だった。
謝れば絵美は許してくれるだろう、そしてまた2人で歩んでいけるだろうと思っていた俺を殴り飛ばしてやりたい。
「ただいま……絵美?」
出掛けてる……のか?
「絵美、ただいま! ……絵美?」
そしてテーブルを見ると、書き置きがあった。
可愛らしい丸みのある絵美の字、大学時代によくノートを見せてもらっていたからよく見慣れていた字で書いてあったのは……
『ごめんなさい夏輝、出て行きます』
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