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11-2 俺に嘘をついている?
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「ここなら周りに人もいないので……」
そう言って佐々山さんが案内したのは、図書館の2階にある広いフリースペースだった。
いろんな種類の机や椅子が点在しており、利用する人が好きなように活用できそうな空間だった。
俺は荷物を机に置いて、佐々山さんの斜め前にある椅子に座った。
彼女は、スマホを確認してからゆっくりと俺に声をかけた。
「あの……お忙しいのに時間をいただいちゃって、すみません。
単刀直入に言うと……立花さんに高藤さんのことを教えてもらいたくて」
──来た!
予想はしていたけど、いざ聞かれるとなんて答えていいかわからないな。
「ど、どういったことを聞きたいんですか?
俺が言える範疇なら教えますが」
俺の言葉に佐々山さんは頬を赤らめて、ソワソワと指先をいじり始めた。
「その、私がお聞きしたいのは…………高藤さんに立花さん以外に幼馴染はいらっしゃるのかなってことで……」
「あ、え?」
予想外の質問に俺の口から間抜けな声が出た。
──優成の幼馴染?
幼馴染はたくさんいるだろうけど、今も連絡を取り合っている人はそう多くはないと思う。
「俺も詳しくはわからないですけど……。
あの、なぜそんな質問を?」
「そ、そうですよね。突然こんなこと言われても、立花さんだって困りますよね。
なぜかって言うと…………えーっと……」
彼女は困ったように笑いながら、言葉を探しているようだった。
何か言いにくいことでもあるのだろうか。
それから彼女は、意を決したように一度小さく頷いて、俺と視線を合わせてきた。
「実は、私、その……高藤さんが気になってまして」
はっきりと彼女の思いを告げられ、わかっていたのに俺の心臓はドクンと震えた。
「それで、昨日二人で残業をしているときに、高藤さんに恋人はいるのか聞いてみたんです」
佐々山さん、かなりグイグイ行くタイプなんだな……。
見た目からは想像できない積極性に、俺は女性の怖さを感じた。
「そしたら高藤さんが、恋人はいないって言ったんです」
「……そ、そうなんですね」
彼女の話に、俺は動揺を隠しきれなかった。
優成は俺に告白してきたはずなのに、佐々山さんに期待させるみたいなこと言うなんて……。
──不誠実
一瞬、その言葉が脳裏をよぎった。
しかし、佐々山さんの話はそこで終わらなかった。
「でも、好きな人はいるって言われて。
それが、幼馴染なんだそうで……」
彼女の顔色と声がだんだんと暗くなっていった。
「私も高藤さんの言うことを疑ってるわけじゃないんです。
でも、本当にそんな幼馴染がいるのか知りたくて。
じゃないと私、諦められなくて……」
最後には、彼女の声は震えていた。
俯いて顔はよく見えないけど、もしかしたら泣くのを我慢しているのかもしれない。
そんな彼女に、俺は何て声をかけたらいいかわからなかった。
優成の言った“幼馴染”とは、俺のことだろう。
でも彼女は、まさかそれが俺だとは微塵も思っていないようだ。
なんて伝えればいいんだろう。
佐々山さんを傷つけたくないけど、応援はできないし……。
「俺が知ってる限りでは、仲のいい幼馴染は俺くらいだと思うんですけどね……」
噓はつけなかった。
でも、それが俺のことだとは伝える勇気が出なかった。
「立花さんも知らない人なんですかね。
それか、そんな人本当はいないのかもしれませんね……」
彼女は苦しそうな笑顔を向けてきた。
俺も一緒になって、胸が締め付けられそうだった。
「高藤さん、ずっと恋人を作らないのって、なんででしょう……」
「……え?」
彼女の何気ない言葉に俺は耳を疑った。
「ゆ、優成は恋人作ってましたよ?」
俺は顔も見たことがある。
優成の家から出てきたのを男女問わず目撃している。
「そうなんですか?……私には、もうずっと恋人はいないと言ってましたけど……。
それも嘘なんですかね、もうわかりません」
彼女は小さく笑った。
けれどその笑みは、もうほとんど自嘲に近い。
──嘘?
俺の頭の中でぐるぐると疑問が渦を巻く。
だって、俺は知っている。
優成には確かに恋人がいた。
過去に俺が聞いたときにも、「あれは恋人」と言っていたはずだ。
佐々山さんに『ずっと恋人はいない』と嘘をつく理由がわからない。
それなら……俺に嘘をついている?
それこそ理由がわからない。
俺は自分の頭の中がぐちゃぐちゃになり、これ以上彼女の話を聞く余裕がなくなっていた。
「佐々山さん、すみません。
俺……そろそろ行かないと……」
その声は思った以上に小さく、彼女に届いたかわからなかった。
俺は席を立ち、佐々山さんに頭を下げた。
「お力になれずにすみません。
また仕事ではよろしくお願いします」
投げやりのような冷たい言葉だった。
「立花さん……。
いえ、こちらこそ、突然こんな話をしてしまって……。
ご不快にさせていたらすみません」
彼女も席を立ち頭を下げた。
彼女がどんな顔をしていたのか、確認するそんな余裕もなかった。
俺はもう一度頭を下げてその場をあとにした。
外に出ると相変わらず雨が降り続いていた。
昨日からのついていない俺の状況と、空模様がリンクしてるみたいだった。
「頼むから早く晴れてくれよ」
俺は折りたたみ傘を広げ、何かから逃げるように小走りで会社に向かった。
そう言って佐々山さんが案内したのは、図書館の2階にある広いフリースペースだった。
いろんな種類の机や椅子が点在しており、利用する人が好きなように活用できそうな空間だった。
俺は荷物を机に置いて、佐々山さんの斜め前にある椅子に座った。
彼女は、スマホを確認してからゆっくりと俺に声をかけた。
「あの……お忙しいのに時間をいただいちゃって、すみません。
単刀直入に言うと……立花さんに高藤さんのことを教えてもらいたくて」
──来た!
予想はしていたけど、いざ聞かれるとなんて答えていいかわからないな。
「ど、どういったことを聞きたいんですか?
俺が言える範疇なら教えますが」
俺の言葉に佐々山さんは頬を赤らめて、ソワソワと指先をいじり始めた。
「その、私がお聞きしたいのは…………高藤さんに立花さん以外に幼馴染はいらっしゃるのかなってことで……」
「あ、え?」
予想外の質問に俺の口から間抜けな声が出た。
──優成の幼馴染?
幼馴染はたくさんいるだろうけど、今も連絡を取り合っている人はそう多くはないと思う。
「俺も詳しくはわからないですけど……。
あの、なぜそんな質問を?」
「そ、そうですよね。突然こんなこと言われても、立花さんだって困りますよね。
なぜかって言うと…………えーっと……」
彼女は困ったように笑いながら、言葉を探しているようだった。
何か言いにくいことでもあるのだろうか。
それから彼女は、意を決したように一度小さく頷いて、俺と視線を合わせてきた。
「実は、私、その……高藤さんが気になってまして」
はっきりと彼女の思いを告げられ、わかっていたのに俺の心臓はドクンと震えた。
「それで、昨日二人で残業をしているときに、高藤さんに恋人はいるのか聞いてみたんです」
佐々山さん、かなりグイグイ行くタイプなんだな……。
見た目からは想像できない積極性に、俺は女性の怖さを感じた。
「そしたら高藤さんが、恋人はいないって言ったんです」
「……そ、そうなんですね」
彼女の話に、俺は動揺を隠しきれなかった。
優成は俺に告白してきたはずなのに、佐々山さんに期待させるみたいなこと言うなんて……。
──不誠実
一瞬、その言葉が脳裏をよぎった。
しかし、佐々山さんの話はそこで終わらなかった。
「でも、好きな人はいるって言われて。
それが、幼馴染なんだそうで……」
彼女の顔色と声がだんだんと暗くなっていった。
「私も高藤さんの言うことを疑ってるわけじゃないんです。
でも、本当にそんな幼馴染がいるのか知りたくて。
じゃないと私、諦められなくて……」
最後には、彼女の声は震えていた。
俯いて顔はよく見えないけど、もしかしたら泣くのを我慢しているのかもしれない。
そんな彼女に、俺は何て声をかけたらいいかわからなかった。
優成の言った“幼馴染”とは、俺のことだろう。
でも彼女は、まさかそれが俺だとは微塵も思っていないようだ。
なんて伝えればいいんだろう。
佐々山さんを傷つけたくないけど、応援はできないし……。
「俺が知ってる限りでは、仲のいい幼馴染は俺くらいだと思うんですけどね……」
噓はつけなかった。
でも、それが俺のことだとは伝える勇気が出なかった。
「立花さんも知らない人なんですかね。
それか、そんな人本当はいないのかもしれませんね……」
彼女は苦しそうな笑顔を向けてきた。
俺も一緒になって、胸が締め付けられそうだった。
「高藤さん、ずっと恋人を作らないのって、なんででしょう……」
「……え?」
彼女の何気ない言葉に俺は耳を疑った。
「ゆ、優成は恋人作ってましたよ?」
俺は顔も見たことがある。
優成の家から出てきたのを男女問わず目撃している。
「そうなんですか?……私には、もうずっと恋人はいないと言ってましたけど……。
それも嘘なんですかね、もうわかりません」
彼女は小さく笑った。
けれどその笑みは、もうほとんど自嘲に近い。
──嘘?
俺の頭の中でぐるぐると疑問が渦を巻く。
だって、俺は知っている。
優成には確かに恋人がいた。
過去に俺が聞いたときにも、「あれは恋人」と言っていたはずだ。
佐々山さんに『ずっと恋人はいない』と嘘をつく理由がわからない。
それなら……俺に嘘をついている?
それこそ理由がわからない。
俺は自分の頭の中がぐちゃぐちゃになり、これ以上彼女の話を聞く余裕がなくなっていた。
「佐々山さん、すみません。
俺……そろそろ行かないと……」
その声は思った以上に小さく、彼女に届いたかわからなかった。
俺は席を立ち、佐々山さんに頭を下げた。
「お力になれずにすみません。
また仕事ではよろしくお願いします」
投げやりのような冷たい言葉だった。
「立花さん……。
いえ、こちらこそ、突然こんな話をしてしまって……。
ご不快にさせていたらすみません」
彼女も席を立ち頭を下げた。
彼女がどんな顔をしていたのか、確認するそんな余裕もなかった。
俺はもう一度頭を下げてその場をあとにした。
外に出ると相変わらず雨が降り続いていた。
昨日からのついていない俺の状況と、空模様がリンクしてるみたいだった。
「頼むから早く晴れてくれよ」
俺は折りたたみ傘を広げ、何かから逃げるように小走りで会社に向かった。
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