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19話

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最近、殿下の様子がおかしい。

何がおかしいかって?

この今目の前で行われている光景を見てもらえばわかる。

「殿下ぁ~。お姉様が私に意地悪してくるんですぅ~」

そう言って殿下の腕にしがみついているスカーレット。

そして、

「なんだと!?性格が悪いのはスカーレットから聞いていたが、虐められているのか!?」

と言うのは、スカーレットから逃げ回っていたはずのハルト殿下だ。

今までの殿下なら、スカーレットの馬鹿みたいな言葉を信じないだろう。

いや、それどころか、近寄らせることもなかったのに......なに?この状況?

はぁ......ため息が出てしまうよ。

しかも、ここをどこだと思っているのやら......なんで生徒会のメンバーじゃないスカーレットが生徒会室に居るのよ。

大体、イチャつくのは良いんだけどさ、仕事しないなら邪魔でしかないからどっかに行ってくれないかな?

チラッと2人を見ると、スカーレットと目が合ってしまった。

うわぁ...絶対めんどくさいやつじゃん。

そう思っていると、案の定

「きゃっ!お姉様が睨みつけてきますぅ~」

と殿下に抱きついている。

この異様な光景に、生徒会のメンバーも唖然として見ている。


さて...この状況になったのは3日前。

いつも通り、生徒会の仕事をしていた時だった。

殿下は相変わらずスカーレットから逃げ回っていたし、特に変わったこともなかった。

でも、スカーレットが生徒会室に入ってから急に殿下の様子がおかしくなったんだよね。

「殿下ぁ~」

って感じでいつも通り生徒会室に突入してきたスカーレットに対して、殿下はあからさまに嫌そうな顔をした......と思ったら急にニッコリ笑って

「どうしたんだ?愛しい人」

なんて、くっっっさいセリフを言ったのよ。

でも、そうなる前の一瞬...ほんっと一瞬だったんだけど、殿下の目の色が急にピンクに変わったんだよねぇ......。

すぐに戻っちゃったから見間違えだったのかな?

まぁ、そんな感じで、そこからはずっとこの通り。

バカップルみたいにイチャついてんのよ。

あ、また寸劇みたいなのが始まるよ。

殿下はどこから取り出したのかわからないが、1本の赤い薔薇をスカーレットに差し出した。

「スカーレット、君にこれを」

と言って。

あー、キモいキモい!

2次元なら許せるけど、リアルで見たら普通にただのキザ野郎じゃない?

するとスカーレットはわざとらしく大きな反応を見せて

「わぁ!薔薇ですか?」

と言いながら薔薇を受け取った。

そのまま棘が刺さっちゃえばいいのにね。

まぁ、そんな上手くいかないか。

「あぁ、1本の薔薇は愛しい人に送るんだ」

「嬉しいですぅ~」

はい、茶番ーーー!

3流ドラマ以上に茶番感が凄い!

あ、ほら、見てた生徒会メンバーも笑いをこらえちゃってるし!

私だって腹抱えて笑いたいよ!

でも我慢するよ。危なかったけどね!

とりあえず...うん、追い出そう。

仕事しないなら生徒会室に入るな。

出禁だよ。こんな奴ら。

にっこり笑って

「殿下、スカーレット。イチャつくのは構いません。ですが、生徒会の仕事をする気ないなら出ていってもらえますか?邪魔ですので」

と言うと殿下とスカーレットはあからさまに顔を歪めた。

いやいや、そんな顔をしたいのはこっちね。

しかもスカーレットなんて

「お姉様!嫉妬してるからって追い出すのは酷いわ!」

ってまたお門違いな発言をしている。

はぁ?嫉妬も何もないんだが?

とりあえず、仕事しないなら生徒会室にいるなって話でしかないのよ。

こっちはお前らと違って暇じゃねぇし、イチャつきたいなら他所でやれよって。

わざわざ生徒会室を選ぶ理由は?

他にも沢山ある場所の中でなぜここを選んだ?

書類の山を見てわざとやってんのか?ん?

あ.........あらまぁ、頭の中だけど口調が乱れちゃったよ。

ごめんあそばせ。

頭の中で早口で罵倒していると、

「......ナナリー様」

と書記の子が声をかけてきた。

どうしたんだろう?

あれ?いつの間にか殿下もスカーレットもいなくなってるし。

「え?はい。どうしましたの?」

と首を傾げて聞くと

「全部口に出てますよ」

そう言って苦笑された。

周りを見ると、皆苦笑しながら頷いていた。

やっべぇ...やっちゃったよ。

まぁ、とりあえず

「.........内緒ですよ?」

と私が言うと、皆笑って頷いてくれた。

話によると、殿下とスカーレットは逃げるように生徒会室を出ていったらしい。

でも思っていたことを全部言ってくれたからありがたかった。と後からお礼を言われた。



んー......とりあえず殿下の件は陛下か王妃様に報告かな。

そう思いながら、まだ片付いていない書類に目を落とした。
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