旦那様、離婚しましょう

榎夜

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マノンside 10


俺が我に返ったときには実家に到着していた。

「おかえり」

そう言って出迎えてくれたのは俺の兄、ネロだ。

父上と母上はいつの間にかどこかに行ってしまっていた。

なんとなく、ただいまって言いづらくて黙っているとネロはにっこり笑って俺に近づいてきた。

そして、

「ねぇ、お前は何やってたの?」

と笑顔を崩さずに、ネロは俺に聞いてきた。 


...何をやってた?

......俺は何をしていたんだ...?

リリーと浮気をして、仕事もろくに手伝わないで、金を貯める訳でもなく全て使い切って.........

あぁ、なるほど......俺は何もしていないんじゃないか。

そりゃあシエラも俺の事を許すわけがないよな。



そう考え、顔を上げるとネロは、やっと理解したみたいだな、と笑顔を止めて真面目な顔をした。

「......兄貴、俺はどうなるんだ?」 

「はぁ...どうなるも何も、我が家にお前はいらないからね。平民にでも落とそうと思っているよ」

.........は?

俺が...平民だと......?

シエラと離婚しただけで、平民......?


「まっ、待ってく「当たり前だよね」」

待って、と言いたかったのに、ネロがそれを遮ってこう続けた。

「仕事もできない、女関係もちゃんと出来ない、お金管理もできない、1人の女性を愛することも出来ない......じゃあお前は何が出来るの?」

そう言われて俺は本当にただの出来損ないでしかない、と改めて思った。

「あは.........あははははは.........」

と力なく笑った俺の声が屋敷の中に響き渡った。






✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼


それから数年後


「もういい加減にしろ!明日から来なくていい!」

そう言われ、ドアを閉められた。

これで何回目のクビだろうか。

ネロと話をした後、俺は本当に平民に落とされ、僅かなお金を渡されて知らない土地に置いていかれた。

それから仕事を転々としてなんとか食い繋いでいる状態だ。

よく心を入れ替えて、とか言うが時間が経っても産まれながらの貴族思考が抜ける訳もなく、お金が入ったら使い切ってを繰り返している。


そういえば、シエラと隣国の王子が結婚したと新聞で見た。

新聞のシエラは今まで1度も見たことがないくらい幸せそうな顔をして微笑んでいた。

俺と違って幸せな日々を送っていて、安心したような悔しいような...なんだか複雑な心境になった。

それから、リリーのことは噂で聞いたが、母親と一緒に平民に落とされたとか。

それに関しては、ざまぁみろ!ってしか思わなかったけど。


「はぁー...また職探しかぁ......」

そう呟いてクビになった店を背に、とぼとぼ歩き始めた。

こんな俺でも、いつかは幸せになれることを信じて。

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