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20話 リオルside
しおりを挟むミアの母親に言われて、俺はとぼとぼと実家に戻った。
俺の帰るところは、もうそこしかないからな。
兄様は俺の姿を見るとすぐに駆け寄ってきて
「お前!今までどこに.........まさか!」
兄様はすぐにミアのところに行っていたことを察したみたいだか
「関係ないだろ!」
と遮った。
俺がこんな辛い思いをしている最中も兄様は呑気に家族で仲良くすごしていたんだ。
そんな奴に俺の何がわかるっていうんだ。
そう考えると
「良いよな、兄さんは。当主にもなって、家族みんな仲が良くて」
こんなこと言うつもりはなかったのに、思わず言ってしまった。
ヤバい、と思って兄様を見るとすごく悲しそうな顔をしながら
「リオルだってこんなことをする前は仲良かったじゃないか」
「.........は?」
俺がこんなことをする前......?
リリーとの付き合いはもう5年にもなる。
そんな前のことなんて覚えているわけが.........
「カノンちゃんは子供に対しても優しいし、お前のことを大事にしてくれていたし......でも、それを捨てたのは自分だろ」
兄様はそれだけ言うと、執務室に戻って行った。
俺はカノン達のことを捨ててなんかいないっ!
家族のことを大切に............いや、大切にしていたのか?
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
実家に戻ってきて4日が経った。
急に執務室に呼び出されたから向かうと兄様はとても険しい顔をして
「慰謝料の請求がきた」
と俺に言ってきた。
「......いくら?」
「200万だ」
「そんなに.........」
200万なんて、1年分の給料を全て出しても足りない......。
そんなの払えるわけがないだろ。
そう思っていると
「当たり前だ。子供が2人もいて、しかもお前は仕事をサボっていた挙句、取り引き相手の娘と浮気、だからな」
兄様は溜息をつきながら書類を眺めている。
多分、あれが請求の紙なんだろう。
「支払いが出来ないなら裁判を起こしても構わない、とのことだ。言っておくが、うちからの支援はない」
「........は?俺にそんな金がある訳...」
支援をしないだと?
兄様は俺に死ね、とでも言っているのか?
思わずそう言いそうになったのをグッと堪えて金がないことだけを兄様に伝えた。
すると、
「なぜだ?カノンちゃんから給料を貰って、ご飯も毎日作ってもらっていて、プレゼントもまともにしたことがないくせに」
それは......全てミアに使っていた、なんて言えたらどれだけ楽だろうか。
勿論、そんなことを言ったら兄様は俺を家から追い出すだろうから言えないが。
「自分で働いて返せ。それから、カノンちゃんのも、ご両親にも、子供達にも誠心誠意、謝れ」
「どこで働けって言うんだ!」
「さぁ?自分で蒔いた種だろ?自分でどうにかしたらどうだ?」
働く?
仕事をクビになったのにどこで?
あんなに大きな商会をクビになったんだ。
しかも商会長の夫が.........。
そんな俺をどこが受け入れてくれるって言うんだ!
兄様に部屋に戻るように言われたが、俺の体は、まるで大きな石のように固まって動けなくなってしまった。
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