(完結)記憶喪失令嬢は幸せを掴む

あかる

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罪と罰

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    お祖父様が壇上から降りる頃にやっと事を理解したのか、お姉様の顔が青くなっていきます。
「ちょ…ちょっと!どういう事よ!次の領主は私でしょう!」

「お姉様、領民の事を考えて下さい。お姉様には民が豊かに暮らして行けるよう、領地経営する事は出来ません」

「な…何を言ってるのよ!私だって…!」
「現当主であるお祖父様が決断された事です。ご自分の事しか考えられないお姉様には無理だと」

「あんたこそ自分の事ばかりじゃない!隣国の王太子様といつのまにか婚約までして!私は全てを失ったのよ!…本当に、あの時死ねば良かったのに!」

「全てを失ったのは…私にそうなるよう手を下したのは、お姉様ではありませんか。因果応報というものです」

    カッとなって掴みかかろうとしたお姉様を、近衛の方が取り押さえて下さいました。

「お姉様…残念です」

    せめて一言、謝って頂きたかったです…無論、許せるとは限りませんが。

    近衛の方が調べた情報も、これで渡される事になるでしょう。…もう、会う事も叶わなくなるでしょう…


    エランド王国に戻り、王太子妃教育を受けながら殿下のお仕事を手伝い、そんな立場にも慣れてきた頃。
「エルシーナ嬢の事に、決着がついたようだ…聞くか?」
「…はい」
    グレン様に頼んで人払いをしてもらい、執務室にある簡単な応接机に行きます。

    ソファーに並んで座り、封筒から書類が出されたのを、じっと見ました。
「俺は先に目を通した」
    促されて書類を取り、目を通します。

「強制労働…ですか」
「死罪でなかった事にほっとしている?」
「いいえ。贖わなければならない罪は償うべきです…ただ、多方面に借金してまで、お姉様は美しくあろうとしたんですね」

「せめて心も美しくあろうとすれば、ここまでにはならなかったんだろうが」
「アレク様とは強制的に婚約解消された訳ですから、結婚に焦ったのでしょう」

    私達からの贖罪の要求は、殺人未遂の件のみですけれど、細かい余罪まで全て調べてあったようで、労働からは一生逃れられないかもしれませんね。

    しかも隷属の首輪をつけられているので、逃げ出す事も出来ません。元貴族にとっては、死罪の次に重い罰となります。

    労働者に支払われるべき給金は、借金返済に充てられるでしょうし、食事は最低限。そこが通常の労働者とは違う所です。

    それと元婚約者のアレク様ですが、罪が明るみになった事で家から廃嫡され、騎士団に捕えられたようです。もう貴族ではないので一般牢に入れられ、審議はまだですが、恐らく収容所内での労働という形になると思います。
    殺人幇助という形になると思うのですが、お姉様のように借金があった訳ではありません。
    刑がどの位の期間か分かりませんが、収容所から出た平民にはまともな働き口はありません。それでも、それだけの事をしてしまったのですから、きちんと償ってほしいと思います。
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