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第129話 沙也加
しおりを挟む城東さんを席に座らせ、ビールをジョッキでもう一杯頼む。
「ふぅぅぅ、まずは、詳しい話を聞かせて貰っても良いですか?どんな理由でお金を借りたいのか分からないと、俺も判断が出来ないんで。」
「・・・そうだな。何処から話せば良いのか。」
ビールで軽く口を潤した後、今回の経緯を話してくれた。
まず、城東さんには、沙也加さんと言う妹が一人居るらしく、現在は会社近くの病院に入院中で、今日も会いに行っていたようだ。多分、ほぼ毎日出掛けているのは、妹さんに会いに行っていたのだろう。
「大腸癌・・・。進行状態は?」
「幸いなことに、レベル1。初期症状が現れ始めたくらいだ。」
どうやら、手遅れになるような事態にはならなそうだが、問題はここからだった。
数年前まで俺と同じようにアルバイトを転々としたり、個人勢Vtuberとして活動したり、色々な方法で生活費を得て生活していた城東さん。そのような不安定な仕事で稼げる額は、良くて一人分の生活費。それを、城東さんの場合、妹さんの分まで稼ぎ二人で生活していたらしい。普通に凄いと思う。
ただ、ここで疑問に思ったのは、城東さんの年齢は大体22か23、余程、歳が離れていないのなら、沙也加さんの年齢は16~21ぐらいだと考えられる。だとしたら、城東さん一人に家計を任せなければならない程の、問題を抱えていると考えて良いのだろうか?もし、何か問題を抱えているのなら、誰か家族に頼ることは出来ないのか?
などなど色々と考えてみたが、『既に親族が亡くなって頼る人が居ない』とか言われたら反応に困るし、他の家族の問題に首を突っ込んで良いのか分からない部分もある。
そんな風に、次の言葉を言い出せずにいた俺の気を使ったのか、俺が質問しづらかった話までしてくれた。
「ちなみに、親父は俺が3歳の頃、母さんは17歳の頃に死んだよ。親父はまだしも、母さんには迷惑ばかり掛けたなぁ。あの頃は他に頼れる親族も居なくて、沙也加を何とか支える為に仕事を探し回ってたよ!自業自得だよ本当。」
そう言いながら、日本酒を飲むその目には、悲しさと後悔が渦巻いているよな気がした。
しんみりとした空気のまま話が進まないのは、俺も困る為、本題に入ることにした。俺もそろそろ、酔いが回って来そうだ。
「それで、妹さんの入院費とか手術費用が足りなくて、俺に頼んで来た感じですか?」
「いや、手術費用等は何とか間に合ったんだが、生活費が足りなくなってしまってな?俺は別に残飯でも何でも食べて過ごせば良いんだが、妹の衣服や生活必需品は揃えてやりたいからよ。特に、最近は沙也加の方も上手くいってるらしいからな・・・。」
何故この人は、沙也加さんの名前を出す時に、後悔しているような顔をするのだろう。そう感じた俺は、心の疑問を思わず聞いてしまっていた。
「さっきから気になったんですけど、妹さんとの間で何か事件でもあったんですか?」
喧嘩 城東。
ブラックハッカーからの流出情報で、暴行、窃盗などの経歴が明らかになり、炎上したことは知っている。だからこそ、その事にも何か関連しているのではないかと、俺は無意識の中で、感じ取っていた。
一瞬、城東さんから、殺気のようなものを感じ鳥肌が立ったが、深呼吸の後、自分の過去について話し出した。
「・・・・・・・・沙也加は・・・・・・両足を失ってしまったんだ。・・・・・・・俺のせいでな・・・・。」
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