RE:狂奔転生ブラッドヴラド

四五茶

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絶対強者を前にして

苦悩と苦悶―①

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 ボルに敗れてから俺は更に自分を高めるべく。
 より自分に厳しく、より自分を律し、より自分を痛めつけていた。
 それは必然的に肉体にも影響し、華奢だった体が剛健なる体へと変化し。
 昔の自分を払拭するかのように、一流の戦士に相応しい肉体となった。
 この肉体になるまで約1年かかり、この城に来てから5年の月日が流れていた。

 つまり俺は未だに籠の中の鳥であり、羽ばたくことは許されていない。
 既に肉体は青年を迎えたというのに、未だにこの場所から抜け出せない。
 このままここで朽ちていくのかという焦りが俺にはあった。
 それ故に更に自分に厳しくなり、最早心の余裕さえなく。
 昔はあれほど笑っていたというのに、今では笑みすらない状態。
 一人になると涙を流し、自分は何故こんなに弱く脆い存在なのかを恨めしく思う。

 そんな自分を払拭したくて、今日も飽きもせず素振りを続けるのだ。
 過去の弱い自分の幻影に向かって、何度も何度も自分を叩き斬るように。
 筋肉が悲鳴を上げ、血管から血が破裂しても構わず俺は素振りをする。
 それを何回、何十回、何百回――自分の気が紛れるまで。
 
「はぁ……! はぁ……!」

 その場でゆったりと倒れる時には血の水溜まりが出来上がり。
 決まってニーアが俺の近くに寄り、優しく俺を持ち上げる。
 一切何も声をかけずに、ただいつもの治療室まで運び。
 そこで俺は意識を失い、気づけば治療された状態で目が覚める。
 
 自室で栄養補給のために肉をひたすら食べ。
 失った活力を取り戻し、再び俺は自分を痛めつける日々を過ごす。
 そんな俺にニーア達は黙って付き従い、俺は城内を歩く。
 
「貴方様、本日のご予定は?」
「決まっている。いつも通り血と汗と涙を流すだけだ」
「畏まりました。私達、機械人形オートマタの姉妹達一同、貴方様に付き従わさせて頂きます」

 あぁ、そうさ。
 俺は血と汗と涙を流すしか出来ない。
 それがいつか大空に羽ばたける糧と信じて。
 俺はただひたすら前へ進むだけだ。
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