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ガーランタン侯爵夫人の話(1話完結)
しおりを挟むガーランタン侯爵夫人、シュリ・ガーランタンは、夫に先立たれて以来、侯爵家の広大な屋敷に一人で暮らしていた。二人の間に子供はなく、侯爵家の財産は全てシュリ夫人のものとなった。莫大な財産と暇を持て余した彼女は、次第に奇怪な趣味に手を染めるようになる。貴族社会では表向きは優雅で善良な未亡人として振る舞っていたが、彼女の裏の顔は冷酷で恐ろしいものだった。
それは、格下の貴族の子供を屋敷に連れ去り、贅沢な暮らしを与えながら、その子供たちを一方的に支配し、気に触ることがあれば命を奪うという行為だった。夫人にとって、子供たちは玩具に過ぎず、愛情も慈悲も一切なかった。子供たちがわずかな失言や態度の違いで命を落とす様子は、彼女にとって日常の退屈を紛らわせる娯楽に変わっていった。
シュリ夫人による死刑宣告、それは「あなたも、もういらないわ」という冷たく尖った言葉だった。
屋敷の庭師であるジョズは、夫人の命じるまま、裏庭に何人もの子供を埋めてきた。その行為に対して彼は特に疑問も抱かなかった。長年、シュリ夫人のもとで働いてきた彼にとって、主の命令は絶対であり、その残虐さに気づきながらも、反抗する術を持たなかった。
ジョズは無表情で「この子は2週間しかもたなかったか……」と言った。
王国警察のゴリアス警部は、行方不明になった子供たちの事件に疑念を抱いていた。特に、最後に行方をくらませた子供は、夫人の屋敷周辺で目撃されており、これが決定的な手がかりとなる。ゴリアス警部は正式な許可を待つことなく、違法な手段に踏み切ることを決意する。ある夜、彼は密かにシュリ夫人の屋敷に潜入した。
ゴリアス警部が屋敷の奥深くに進むと、閉ざされた部屋の中からかすかな笑い声が聞こえた。その声は、まだ恐怖を知らない子供のものだった。彼が扉を開けると、そこには豪奢な服を身に纏い、豪勢な菓子を口に運んでいる一人の少年がいた。
「君、大丈夫か?」とゴリアス警部は声をかけた。
少年は首をかしげながら答える。「うん、大丈夫だよ。このお菓子、とってもおいしいんだ!」と、続けて「おじさん誰?」と言う。
ゴリアス警部は、嬉しそうな少年の様子を観察する。怪我があるわけでもなく、健康そうだ。
じろじろ見られて不快だったのか、顔を歪める少年。ゴリアスが、「他にも誰かいるのか?」と聞くと、少年は「え、ジンクスのこと?」と首を傾げる。
「ジンクス?」と、ゴリアス警部が尋ねると、寂しそうに答える少年。「うん。ここのところ見かけないんだ。おかしいなあ、ずっと一緒だったのに。」
ゴリアス警部はその言葉に一瞬言葉を失ったが、少年の無知がこの場での判断力を曇らせていることを理解した。彼は少年を無理やり引き寄せ、抱き上げて部屋を出た。
「君はここにいてはダメだ、早く逃げないと…」警部は短く呟きながら、素早く屋敷を後にした。
王国警察の取り調べにより、少年から得られたわずかな証言を基に、ゴリアス警部はさらに調査を進めた。そして彼は直感的に、屋敷の裏庭に何かが隠されていると確信した。だが、再び正当な捜査許可を得るには時間がかかる。時間が無駄に過ぎることを恐れたゴリアスは、再び密かに屋敷に潜入することを決意する。
深夜、月明かりに照らされた屋敷の裏庭は、不気味な静けさに包まれていた。ゴリアス警部は、ジョズが定期的に手入れしている庭の一角に足を踏み入れた。そこには新しい土が盛られており、直感的に彼はそこに何かが埋まっていると感じた。
彼が土を掘り返し始めると、すぐに冷たく硬い感触が指先に伝わった。さらに掘り進めると、それが一人の子供の手であることが分かった。だが、その手は生きているような動きを見せていた。必死にもがきながら地表に出ようとした形跡が残っている。
ゴリアス警部の心は凍りついた。彼はその子供がまだ生きていたと信じたかったが、手に触れた瞬間、その冷たさから生命の存在を否定せざるを得なかった。
「これが……あの夫人のやったことか……」彼の声は震えていた。
その後の調査により、シュリ・ガーランタン侯爵夫人は複数の子供たちを誘拐し、殺害した罪で逮捕された。彼女の所業は王国中に知れ渡り、侯爵家の名誉は地に落ちた。彼女が埋めた子供たちの数は、正確には明らかにならなかったが、ゴリアス警部の手で明るみに出た事件は、彼女の長年の罪を暴くことになった。
庭師のジョズもまた、その共犯として捕らえられ、屋敷の裏庭に埋められた犠牲者たちの記憶は、いつまでも王国の民の心に残ることとなった。
シュリ夫人は何故、子供たちを玩具のように扱い、命を奪ったのか。その理由は最後まで明かされることはなかった。
彼女は、自身が犯したことに罪の意識を持たないまま、冷たい牢獄の中で静かに終焉を迎えた。
「ああ、あなた……」
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感想ありがとうございます。
そうですね……その方向にも広がりますね?!