私が聖女でした。〜侍女扱いされた本物の聖女がハッピーエンドを迎える話〜

井上 佳

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第10話

 状況は、最悪だった。

 殿下は俺たちの報告を拒絶した。
 それどころか、リリアーナはさらに攻勢に出た。

「民よ!」

 リリアーナは王城の広場で、派手な演説を始めた。

「私に嘘の罪を着せようとする者がいます!」

 民衆がざわめく。

「それは誰あろう——私の侍女、セレスティア・リュミエール。彼女こそが全ての元凶です!」
「え……?」

 セレスティアの顔が青ざめた。

「彼女は魔女です!私の聖力を盗もうとしている、悪魔の手先!」

 民衆がざわめく。

「魔女だって?」
「そういえば、あの娘は不気味だった」
「聖女様を陥れようとしていたのか!」

 一瞬で、民衆の敵意がセレスティアに向けられた。

「違う!彼女は何も——」

 俺が前に出ようとした時——
 石が飛んできた。
 セレスティアの額に当たり、血が流れる。

「魔女!」
「出て行け!」

 罵声と石礫の雨。

「やめろ!」

 俺はセレスティアを庇った。
 石が俺の背中に当たる。
 痛みはどうでもいい。

「セレスティアは無実だ!真実は——」
「ルーカス騎士団長」

 アレクシス殿下の冷たい声。

「貴様もセレスティアを庇うのか。ならば、貴様も同罪だ」
「殿下、真実をご覧ください!本物の聖女は——」
「黙れ!」

 殿下の目は、もう何も見ていなかった。
 真実よりも、自分の判断を正当化することしか考えていない。

 セレスティアは俺の背中で震えていた。

「ルーカス様……私のせいで……」
「違う。君のせいじゃない」

 俺は彼女を抱きしめた。

「俺が君を守る。何があっても」

 騎士として。

 いや——一人の男として。
 俺はセレスティアを守ると誓った。

 たとえ王命に背くことになっても。
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