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16 課長視点
「今日は本当にありがとうございました。結局また付き合っていただいて……」
「いえ、そんな」
都内のカフェで二人、アイスコーヒーを飲む。
偶然にも先日、彼女と話すきっかけとなった店だ。
つまり二人にとって思い出の場所。結婚してからも記念日には毎年訪れたい。などと浮かれた妄想をしている場合ではなかった。
望月さんが俺の失態に気づいているか知りたい。
しかし「勃起に気づいてましたか?」なんて聞けるわけがない。
「あの……課長。さっきは……」
顔を赤らめ俯きながら言い辛そうにしている望月さんに、覚悟を決めて固唾を飲んだ。
……言い訳はしない。
俺は望月さんの魅力に抗えず欲情したんだ。
────「失礼します! こちら、サービスです!」
突然やってきた女性店員が、特盛りのパンケーキを俺達のテーブルの真ん中に置いた。
見上げると、ネームプレートには研修中のバッジがついている。
確か、この間望月さんにコーヒーをかけた……
「先日はほんっ……とうに申し訳ありませんでした! こちら、ささやかなお詫びです」
頭を下げる店員に、望月さんは慌てた様子で立ち上がる。
「あらやだっ! 覚えててくれたの!? ごめんなさい、気を遣わせちゃって」
「また来てくれて嬉しいですよぉー!」
手を合わせて微笑み合う二人に心が和む。
やっぱり望月さんは素敵だ。
他人とごく自然に心を通わせることができるし、彼女が居る空間は自ずと温かい空気が生まれる。
こんなこと、一朝一夕ではできない。
今までの生き様が滲み出ている気がして、憧憬と共に口元が緩んだ。
あまりにもだらしない顔をしていたのか、店員の女性が俺を一瞥する。
「……彼氏さん、見る目ありますね」
女性が意図していることがわかり、思わず「ありがとうございます」と答えた。
「……もうっ否定していいんですよっ」
店員が去ってからも真っ赤になりつつ戯ける望月さんに癒される。
真面目に彼氏気取りしてたって言ったら、どんな反応するんだろう。
「有難くいただきましょうか! ……ホントはダイエットしてるんですけど、今日だけです」
満面の笑みで笑ってフォークを手にする望月さん。
何もかもが愛らしくて、我慢できずに口から本音が零れていく。
「……ダイエットなんてしなくても、そのままで充分素敵ですよ」
「課長……!?」
ああもう、無理だ。
気持ちを抑える余裕がない。
「望月さんは美しいです。無理してジムに行かないでください」
そして男達を翻弄しないでください。
ライバル増やさないでください。
祈るように見つめると、望月さんは目に涙を浮かべ微笑んだ。
「ありがとうございます……」
やっぱり美しい。
清らかな微笑みに胸を鷲掴みにされて、誤魔化すようにコーヒーを飲んだ。
「……あの、課長。このあと飲みに行きませんか?」
「ぶっ……」
「課長!?」
危ない。コーヒーを噴いてまた望月さんの服を汚すところだった。
……二人で飲みに行くって?
そんな展開、上手くいきすぎじゃないか?
「あの、美味しい焼き鳥屋さん知ってるんです。よ、よかったら」
真っ赤になってしどろもどろになる望月さん。
これは……誘ってる?
またもや下半身が反応しそうになって、すぐに頭を冷やした。
落ち着け。今夜一緒に飲んだら、確実に理性がふっとぶぞ。
酔った勢いに任せて襲ってしまう恐れがある。
そんな不誠実なこと、初恋の相手にできるわけがない。
「……すみません。予定があるので今日は難しいです」
後ろ髪を引かれる思いで、泣く泣く彼女の誘いを断った。
「そうなんですね! オッケーです! また気が向いたら皆で行きましょう」
いつものように豪快に笑ってくれる彼女に切なさを覚え、テーブルの下で拳を握った。
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