43 / 58
43
忙しなく仕事をこなして迎えた金曜の夕方。
大嗣さんは外勤からの直帰なので、今朝挨拶したきりだ。
そのままハジメさんとの飲み会に向かうのかな、と思いを馳せながら早々と帰り支度を始める。
私は明日のデートに備えて、家で大人しく筋トレでもしよう。
プランは二人で話し合った結果、都内の大型スパで癒されて、併設されているホテルに宿泊しのんびり過ごすことに決定した。
……今日運動したとて、悪足掻きだとわかってはいるけれども。
「せんぱーい……今日空いてますぅ……?」
今にも泣きそうな山ちゃんに声をかけられギョッとする。
「どうしたの山ちゃん!」
山ちゃんは悲壮感を漂わせて、小動物のように潤んだ瞳で私を見上げた。
「彼氏と喧嘩しましたー。ヤケ酒付き合ってくださいっ」
そんな愛らしい懇願をはねのけられるわけもなく、「オッケー! 行こう!」と即答する。
大嗣さんとのことも親身になって応援してくれる山ちゃん。こんな時こそ気晴らしにお供したい。
本当は禁酒中だけど、今日は特別だ。
なんて自分を正当化するも、本当はアルコールを欲して喉がごくりと鳴るのだった。
「でね、拓真ってば、SNSの女ばっか褒めて! メイクとか真似したらー? なんて、うるせえ、これがあたしのやり方なんだって感じで!」
まだ居酒屋に着く前に、歩いている段階で喧嘩内容のほとんどを教えてくれる山ちゃん。
どうやら山ちゃんの彼は、SNSで人気のインフルエンサーを気に入ってしまったらしい。
「見てくださいよ! この人です! 確かに綺麗だけど……私という彼女がいながらぁ!」
差し出されたスマホを見つめ固まる。
あと一歩で変な声が出そうだった。
「……先輩?」
きっと目が点になっていたのか、不思議そうに首を傾げる山ちゃんにハッとして我に返る。
「な、なんでもない。ホントだ。綺麗な人」
「せんぱいぃー……」
「ご、ごめん! 彼にとっては山ちゃんが唯一無二だと思うよ! この人はなんて言うか別世界の人っていうか……」
言っていて自分が胸を痛めている。
実際は別世界の人なんかじゃなくて……大嗣さんの元彼女だ。
この間ハジメさんが見せてくれた写真と同じ女性なので、間違いない。
圧倒的な美女なので目に焼きついていた。
HANAと記載されたプロフィールには、数十万人のフォロワー数が記載されていて、影響力のある人だと一目瞭然だ。
「そうですよね! 別世界の人! なのにバカみたい。慌てて謝ってきたけど、しばらく許してやんないです!」
山ちゃんの怒りはまだおさまっていないみたい。
私も内心驚きと戸惑いでいっぱいだけど、とりあえず今日は飲むしかない。
「とにかく飲もう!」
「はい!」
ヤケ酒が他人事でなくなってしまった。
苦笑しつつ、駅前のイタリアンバルに入店すると、今度こそ驚愕に立ち尽くす。
案内された二人用のテーブル席から更に奥の、ボックス席に大嗣さんの姿があったのだ。
あなたにおすすめの小説
俺様上司に今宵も激しく求められる。
美凪ましろ
恋愛
鉄面皮。無表情。一ミリも笑わない男。
蒔田一臣、あたしのひとつうえの上司。
ことあるごとに厳しくあたしを指導する、目の上のたんこぶみたいな男――だったはずが。
「おまえの顔、えっろい」
神様仏様どうしてあたしはこの男に今宵も激しく愛しこまれているのでしょう。
――2000年代初頭、IT系企業で懸命に働く新卒女子×厳しめの俺様男子との恋物語。
**2026.01.02start~2026.01.17end**
◆エブリスタ様にも掲載。人気沸騰中です!
https://estar.jp/novels/26513389
【R18】幼馴染がイケメン過ぎる
ケセラセラ
恋愛
双子の兄弟、陽介と宗介は一卵性の双子でイケメンのお隣さん一つ上。真斗もお隣さんの同級生でイケメン。
幼稚園の頃からずっと仲良しで4人で遊んでいたけど、大学生にもなり他にもお友達や彼氏が欲しいと思うようになった主人公の吉本 華。
幼馴染の関係は壊したくないのに、3人はそうは思ってないようで。
関係が変わる時、歯車が大きく動き出す。