二周目だけどディストピアはやっぱり予測不能…って怪物ルート!?マジですか…。

ヤマタカコク

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第五層 魂の修福 編

潜入!ダンジョン統合体。

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 キヌさん達と別れた後、ヌエをお供にダンジョンに早速侵入した。

「『フィールドタイプ』のダンジョンか…面倒だな…」

 洞窟や回廊じゃなく、通路や部屋なんてない。

 そこには『外の様子とはまるで違っているのに、まるで外にいるかのような景色』が広がっていた。

 背高い樹木やデカあ岩がポツポツと生えている。割合的には岩の方が多い。他は平地で苔がびっしり生えていた。

「足元に注意、だな」

 四季があるタイプなのだろうか。気候と景色が何となくちぐはぐに感じる。

 今のところ暑くも寒くもないが、苔が生えてるから湿度は高いのだろう。

 見通しが良いのも考えものだ、大した目印もなくだだっ広いのは嫌気を誘う。

 感覚を狂わす歪な荒野。

 と、色々言ったが一番に特徴的なのは空に近い高さにあって肉眼で見えにくい天井部分だな。

 何せ、比喩でなく暗雲が立ち込めていて、なのに雨を降らさず、雷だけをひっきりなしに降らしてくる。

 それを見たヌエは、

「おお♪良い天気ではにゃいかっ♪」

 とか言ってるけど。どこがだよ?

「…いや、お前はそうか」

 そういやコイツって霊体になる前は雷獣だったわ。好物の雷で溢れたこの景色が好ましいのは当然か。

 そんなやり取りをする俺達の背後には、まだこのダンジョンの入り口がある。このダンジョンの外観に相応しく結構巨大な入り口だ。その向こう側には外の景色もまだ見えている。

 俺は、そこらにある何の変哲もない石ころを拾ってぎゅぅぅっ。魔力を込めたそれを入り口脇に埋めておく。

 これは、マーカー代わりだ。

 他にも複数拾って魔力を込めたそれらを【内界】の中へ収納していく。

 後でまた使うためだな。ちなみにこのマーカーを一つ作るのに大体300ぐらいのMPが必要となる。

(我ながら贅沢な事だな…)

 MP一万越えだから出来る事だ。つか便利だな、【内界】。

 こうしたマーカーを設置するのは、さっきも言ったがフィールド型ダンジョンが面倒だからだ。だだっ広い上、目に写る景色が当てに出来ないからすぐに迷う。

 このマーカーは俺という存在感を発する、ただそれだけのものでしかないが俺の魔力が残留している間は、落とし物や死体のようにダンジョンによって吸収される事はない。

 つまりこのマーカーがあれば、後で迷っても【大解析】を発動し、『俺の魔力』を辿って帰還できるという寸法だ。

 『何かに俺という存在』を魔力で籠める』この技は【魔力分身】の応用だな。

 武器に属性魔力やスキルを付与する【エンチャント】や【刻印】のような汎用性はないが、前世では何かと役立っていた。

(これのお陰で命を拾った事も何度かあったな…)なんて事を思いだしてると、

『おい!まだか!?』

 最初は俺のマーカー作りを興味深く見ていたヌエが、痺れを切らして急かしてきた。雷獣のくせに…。

「ちょっと待ってろ、このせっかちめ…」

『ぬう、早くしろ早くっ、身体が疼く!早く暴れたい!』

「(なにワクワクしてんだこの雷獣?鬱陶しいったら…)…よし準備オッケー。行くか」

『ふん、我に指図するにゃよ人間っ!』

「いやどっちだよ?いちいち反目してくるなこの雷獣!ホント鬱陶しいったら!」

 この素人め。ダンジョンは魔境なんだぞ?それを探索するなら準備を怠ることなかれってんだ。

(…なんて、)

 このダンジョンにしろ、無双ムカデダンジョンにしろ、餓鬼ダンジョンにしろ…結構な見切り発車で探索を決行してる俺が言っていい事じゃ、ないな。

 という反省も交えつつ、この後も急かしてくるヌエをスルーしながら、一定間隔で【大解析】を発動しながら、その範囲内の地形とその特徴を記憶しながら、マーカーもその都度埋めながら。俺達は進んでいった。

 『知』魔力は餓鬼の食材だけではあまり上げられなかったが、それでも俺の成長補正は『S』ランク。現在では200近くある。それに伴い記憶力も上がっている。帰還した後にこの記憶を元に地図を作成する事だって可能だ。ちなみに、

「おいヌエ。面倒な事してるように見えてんだろうが、これって鬼怒恵村の人達のためにやってる事なんだからなっ?」

 と言うと、

『む、そうにゃのか?』

 と、ヌエからは意外なくらい素直な返事。そこから文句を言わなくなった。

(やっぱりな…コイツは…)

 乱暴者に見えるし、実際に俺を襲ったけど、というか殺してくれやがった訳だし、それをしたのは勿論、無垢朗太への復讐目的もあっただろうが多分、怨敵である以上に厄介な悪霊に憑り付かれたかもしれない俺が、この村に害をなす危険を心配したってのが大きかったのだろう。

(だから、その危険を聞かされた義介さんも俺に剣を向けてしまった…ってとこか)

 そういやその義介さんの方は普通に接してくれるようになってたな。何があったんだろ。

(まぁ多分、才子あたりが何か言ったか?…あいつコミュ力高いし)

 大家さんは説得する前に実力を行使するタイプだし、才蔵はあの通り自由人だし。

『親友氏が不憫な件…あんなに頑張ったというに…』

「なんか言ったか無垢朗太?」

『なにも。…それより、色々とやる事があるのは分かるが、あの猿猫にそう油断を見せるな。あれは簡単に獰猛を引っ込められる性ではないのだから。

 というか、地形を記憶出来るなら何故、目印をいちいち埋める面倒を省かないのだ?猿猫に隙を見せる行為に見えて気が気でならんのだが』

(いや、このダンジョンが地形を変える意地の悪いタイプである事を想定してだな…それに、フィールドタイプってのは厄介な性質があって──)

『ふむ…ダンジョンにも色んな種類があるのだな…だがくれぐれも油断だけはするな?』

(分かってるってば)

 今も【大解析】を発動する度に俺の記憶にある地形とマーカーの位置にズレがないか確認してるところなんだが、どうやら地形を変えるタイプではなさそうだ。

 その代わり、モンスターの配置とそれらが繁殖しやすい生態系に力を注いでいるようだった。

 まだ敵と遭遇していないのにそれと分かるのは、漠とした荒野に見えて、よく見ればモンスターの餌とするためであろうモンスター未満の魔性植物や虫、危険性のない小動物までも設定されていたからだ。

 回廊型の方が当然として狭いので、モンスターが氾濫しやすく、スタンピードも起こりやすそうに見えるが、実はこうした…繁殖環境が整ったダンジョンの方がモンスターの生息数が多くなりやすく、スタンピードが発生しやすい。
 
 こういった事を事前に調査して知っておくか否かでその地域の命運は大きく変わる。つまり、

「やはり潜ってみて良かったな…って、噂をすれば──」

 飛来してきたのは『雷鳥』というモンスターだった。コイツには黄色く硬い鳥冠があって──

「──のわぁ!」
『!、だから油断するなと言うに…ッ』

 今驚いたのは、その鳥冠から雷撃を放射してきたからだ。
 
「飛行型、しかも魔法まで使うのか。うーん、どう見ても一層にいていいモンスターじゃないぞ。さすがはダンジョン統合体、と言ったところか…」

『何を暢気な…油断するなと言ってるであろうにっ!』

「う…すまん」

 『精』魔力が低い俺の【MPシールド】は魔法攻撃に弱いからな。回避に慌ててしまったのはそのせいもある。

 でも俺は器礎魔力の中で『速』魔力が一番高いからな。どんな攻撃がくるか分かってその速度が手におえる範囲なら回避は容易い。

 なので焦ったのは初撃だけだ。その後は最小限の動きで難なく回避。その様子を見て『どうやら遠距離攻撃では埒があかない』と思ったのだろう。

 雷鳥が急降下してきた。嘴と脚先の爪に雷を纏わせている。つっつくか引っ掻くと同時に雷撃を直接叩き込むつもりなんだろうが、

「それは悪手だぞ」

 だって俺の木刀も届く範囲に自ら飛び込んでる訳だから。

 俺は【重撃魔攻】だけを纏った一撃で雷鳥を倒した。なるべく傷を付けないようにそうした。死骸は【内界】に収納する。

「よし。まずは一つ、素材ゲットだな」

『むう…我の棲み家が生臭くなる件…』

 その後はもう無垢朗太の愚痴も無視して、襲い来るモンスターはヌエに任せて、俺は採取に専念する事にした。

 ヌエは雷獣だから殆んどの雷攻撃が効かない。それにここはどうやら雷属性のモンスターで統一されているらしく、同じ雷属性であるヌエにとってここのモンスターは全て下位的存在となる。

 つまり、敵が放つ雷はコイツに効かないが、コイツが放つ雷撃は敵に効くという…

「まさに無双状態ってやつだな…」

『ふん、こやつが強化されるのは気に食わんがな』

 そんな訳でヌエは結局、レベルアップを果たしてしまった。そのせいで余裕があり余ってる…はずなのに。

 何故か俺を襲ってくるモンスターに関してはわざと遅れて倒しにくる。かといって俺に任せる訳でもない。

 モンスターを倒せばレベルアップする事を知ってからは『全てを倒したい!』ってくらいに張り切ってるからな。なのに遅れてくるのは…

 ──ドン
 「くっ!」
  『おっと危にゃい』

 と、まるで不可抗力であるかのように俺に体当たりをぶちかましたり、

 ──ファス…
 「ぶぁっ、」
  『おうすまんにゃ』

 と、体当たりが届かない位置にズレててやれば鼻先や首筋を尻尾でかすめてきたり。なのでもっと遠くに避ければ

 ──バリバリ
 「っぶねぇっ!」
  『ああすまんにゃ、ついっ!』

 雷撃を誤射した振りをしてきたり。さすがに雷撃はマズいと思って自分からはもう動かないようにしていたら。

 ──ドン!ファス
 「くっ、ぬふぁっ、」
  『すまぬにゃ~♪』

 と体当たりすると同時に鼻先や首筋に尻尾をかすめてきやがった。

 つまりはモンスター退治を嫌がらせの口実にしてやがる。もしくは挑発してんのか?正当防衛的の口実でも欲しいのだろうか。俺に勝てるってまだ錯覚してるのか。どっちにしろ鬱陶しい事この上ない。でも、

『なぁ均次。もう狩ってしまおうこの猿猫。』

 と無垢朗太は物騒な事を言ってくるけど、俺は我慢した。

(何故って…コイツの戦闘力には見るべきもんがあるからかな、やっぱり)

『むう…それは買い被りというものだ。こんな猿猫など…っ、……ふんっ、』

 と、無垢朗太は不満そうだが。今後を考えると俺が不在となるタイミングは多くなる。そんな時にこの鬼怒恵村を守ってくれと頼めば?コイツは喜んで引き受けてくれるだろう。

 だって、封印されてる間も雷をたまに降らす事をやめなかったんだから。そのお陰で鬼怒恵村は豊穣の地であり続けた。

 さっきも『村人のため』と説けば文句を引っ込めたし。つまりコイツにとって鬼怒恵村が愛着ある場所なのは間違いない。

 なので今後はスーパーサブとして…いや、この村の守り神として生きてもらうつもりだ。

 という訳で今の俺は、ここまででゲットした素材の数々を確認しているところ──ドン「くっ!」『すまんにゃー♪』てな感じで体当たりされまくりだけどな。もう放置してる。

(数百年も封印されてたんだ。鬱憤だって溜まってるだろ。…まったく、こんなやつでも狂わずに済んだのは、キヌさんの存在があったからだろうな…)

 と何気ない感想を心中で呟いてると、

『む。そうだぞ?コイツらは封印されている間、離ればなれになったらなったで言の葉のみで乳繰りあっておった。つまり孤独ではなかったのだ……別に、、我の精神が特別弱い訳では…ないのだからな?』

 と、無垢朗太がまた面倒なこだわりと負け惜しみを言ってきた。

(誰もそんな事言ってなぃ──ってゆーかお前…数百年もの間バカップルの乳繰りあいを聞かされてたのか?)

 いやそれはさすがにダルいしイタいっ。

『うむ…想像してみよ。相手は怨敵。なのに手は出せず。さらに乳繰りあいをただただ聞かされる日々。それが数百年も続いたのだ…。なかなかの、地獄であったぞ…』

(お、おお…もはや理解の及ばない領域だけども…なんとなく分かるぞ…)

 お前か今、遠くを見つめる目をしてる事が。うんうん凄く辛かったんだな。確かに狂ってもおかしかないよな…て、また話が逸れたな。

 このダンジョンの規模だが、まだ出来たてだからかフィールド型でもそれほど広くはなかった。一辺が約2㎞ぐらいか。それより先には『進めるけど進めない仕様』のようで…つまりはこういう事だ。

 進みながら【大解析】を発動すると、まだ通ってないはずの地点に俺が埋めたマーカーを感知した。それで記憶の中にある地形と照合してみれば…そのエリアは反対側にあるはずの場所でつまり。

 
 ループしたのだろう。


 これがさっき言ったフィールドタイプの厄介なところだ。大抵がこのようにループ構造となっており、初心者だと必ず迷うようになっている。

(勿論俺は迷わないけどなっ…て言うより『二周目知識チート』様々ってとこか)

 その後どれくらいの感覚でループしてるのか確認するためにもう一周してみたら大体2㎞感覚って事が分かった次第。

 そうこうしらみ潰しに回ったので次層へのワープポイントも確認済みだ。

 という訳で、

「まずは一層だけだが…攻略完了、かな」

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