【完結】純血の姫と誓約の騎士たち〜紅き契約と滅びの呪い〜

来栖れいな

文字の大きさ
129 / 184
第七章:恋を知る夜、愛に包まれる朝

第127話・甘やかに包む、仲間たちの想い

しおりを挟む
次にルナフィエラの目を奪ったのは、屋台の前に並んだ果実だった。
飴をまとったそれらは朝の光を反射し、きらきらと宝石のように輝いている。

「……あれ、なに……? きらきらしてる……」

ルナフィエラの小さな呟きに、シグがすぐ反応した。
彼女を抱えたまま歩みを進め、屋台の前へと向かう。

「見たいんだろ」

低い声に、彼女は恥ずかしそうに頷く。
屋台の男が器用に串を並べている様子を間近で見ると、飴の膜がとろりと果実を包み、冷めるそばから艶めきを増していく。

「……きれい……」

感嘆の声が零れた瞬間、シグはためらうことなくひとつを指さし、代金を払った。
受け取った串をそのままルナフィエラに差し出す。

「ほら。……食え」

渡された串をそっと口に運ぶと、ぱりりと飴が割れ、甘酸っぱい果汁が弾ける。

「……っ! あまい……おいしい……!」

瞳を輝かせるその顔を、シグはじっと見つめる。

「……やっぱり、ルナには甘いもんが似合うな」

唐突な言葉に、ルナフィエラは耳まで赤く染めて俯く。
けれどシグの胸に抱かれているため逃げ場はなく、そのまま彼の腕に小さく身を縮めた。


市場の賑わいの中、ルナフィエラの視線は次から次へと屋台に引き寄せられていく。
少しずつ口に運び幸せそうに笑う彼女の横で、食べきれなかった分は当然のように4人が分け合って平らげていた。

「ルナ様は小食ですから」
「俺たちが食べればいいだけだ」

シグとヴィクトルが当然のように言い、フィンは「もっと食べたいなら遠慮しないで!」と笑う。
そんなやり取りの中、彼女の頬はほんのり赤く、お腹いっぱいの満足げな表情になっていた。

そのとき、ルナフィエラの視線がふと一点に止まった。
屋台の棚に並ぶ、小さな焼き菓子。
黄金色に焼き上げられたクッキーの中には、砕いたナッツや色とりどりのドライフルーツが散りばめられ、甘い蜜の香りが漂っている。

「……あれも……美味しそう……」

無意識に漏らした小さな呟きに、ユリウスが静かに向かった。
そして戻ってきたとき、手には小袋が二つ。

「……ゆ、ユリウス? そんなに食べられないよ……?」

困ったように眉を下げるルナフィエラに、彼は穏やかに微笑んだ。

「これは日持ちする。道中のおやつにすればいい。……ルナは甘いものが好きだからね」

ルナフィエラの瞳が大きく揺れる。
ただ目の前の欲だけではなく、この先の旅路まで思って選んでくれた――そのことが胸に染みた。

「……ありがとう、ユリウス。すごく嬉しい」

頬を染め、素直に感謝を伝えるルナフィエラに、ユリウスはさらりと答える。

「当然だ。君の笑顔が見られるのなら、それだけで十分」

その声音は焚き火のように温かく、街のざわめきの中でも不思議と心に届いていた。


宿に戻った一行は、昨夜と同様に広めの部屋を取り、腰を落ち着けた。
市場の喧騒から離れ、窓の外に差し込む昼の光が心地よい。

ルナフィエラはベッドに座ったまま、胸の奥で小さく息を吐いた。

(……少し、動ける……?)

午前の休養と食事のおかげか、体に重くのしかかっていた倦怠感が、ほんの少し和らいでいる気がした。

「ルナ、無理はしないでね」

隣にいたフィンが、心配そうに小さな手を重ねてくる。
温かな光が滲み、柔らかな治癒魔法がルナフィエラの体を優しく包んだ。

「……ありがとう、フィン。すごく楽になった」

そう微笑む彼女に、フィンは「よかった!」と満面の笑みを見せる。
けれどその目は、まだ無理をさせまいとする強い気遣いに満ちていた。

一方、ユリウスとヴィクトルは出発の支度を整えるべく立ち上がる。

「日用品と保存食を補充しておこう。……クルミアの谷まであと少しだが、何があるかわからないからね」

「そうですね。道中で必要になるものも多いでしょう」

落ち着いた声を交わし合い、2人は外套を羽織ると市場へと向かっていった。
その背を見送りながら、ルナフィエラは胸の奥がじんわり温かくなるのを覚える。

(……こうしてみんなが支えてくれるから、私……安心していられるんだね)

彼女の傍らにはシグも控えていた。
腕を組み、窓の外を無言で眺めているが、その存在がそこにあるだけで不思議と心が落ち着いた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

喪女なのに狼さんたちに溺愛されています

和泉
恋愛
もふもふの狼がイケメンなんて反則です! 聖女召喚の儀で異世界に呼ばれたのはOL・大学生・高校生の3人。 ズボンを履いていた大学生のヒナは男だと勘違いされ、説明もないまま城を追い出された。 森で怪我をした子供の狼と出会ったヒナは狼族の国へ。私は喪女なのに狼族の王太子、No.1ホストのような武官、真面目な文官が近づいてくるのはなぜ? ヒナとつがいになりたい狼達の恋愛の行方は?聖女の力で国同士の争いは無くすことができるのか。

【完結】番である私の旦那様

桜もふ
恋愛
異世界であるミーストの世界最強なのが黒竜族! 黒竜族の第一皇子、オパール・ブラック・オニキス(愛称:オール)の番をミースト神が異世界転移させた、それが『私』だ。 バールナ公爵の元へ養女として出向く事になるのだが、1人娘であった義妹が最後まで『自分』が黒竜族の番だと思い込み、魅了の力を使って男性を味方に付け、なにかと嫌味や嫌がらせをして来る。 オールは政務が忙しい身ではあるが、溺愛している私の送り迎えだけは必須事項みたい。 気が抜けるほど甘々なのに、義妹に邪魔されっぱなし。 でも神様からは特別なチートを貰い、世界最強の黒竜族の番に相応しい子になろうと頑張るのだが、なぜかディロ-ルの侯爵子息に学園主催の舞踏会で「お前との婚約を破棄する!」なんて訳の分からない事を言われるし、義妹は最後の最後まで頭お花畑状態で、オールを手に入れようと男の元を転々としながら、絡んで来ます!(鬱陶しいくらい来ます!) 大好きな乙女ゲームや異世界の漫画に出てくる「私がヒロインよ!」な頭の変な……じゃなかった、変わった義妹もいるし、何と言っても、この世界の料理はマズイ、不味すぎるのです! 神様から貰った、特別なスキルを使って異世界の皆と地球へ行き来したり、地球での家族と異世界へ行き来しながら、日本で得た知識や得意な家事(食事)などを、この世界でオールと一緒に自由にのんびりと生きて行こうと思います。 前半は転移する前の私生活から始まります。

召喚先は、誰も居ない森でした

みん
恋愛
事故に巻き込まれて行方不明になった母を探す茉白。そんな茉白を側で支えてくれていた留学生のフィンもまた、居なくなってしまい、寂しいながらも毎日を過ごしていた。そんなある日、バイト帰りに名前を呼ばれたかと思った次の瞬間、眩しい程の光に包まれて── 次に目を開けた時、茉白は森の中に居た。そして、そこには誰も居らず── その先で、茉白が見たモノは── 最初はシリアス展開が続きます。 ❋他視点のお話もあります ❋独自設定有り ❋気を付けてはいますが、誤字脱字があると思います。気付いた時に訂正していきます。

有能女官の赴任先は辺境伯領

たぬきち25番
恋愛
お気に入り1000ありがとうございます!! お礼SS追加決定のため終了取下げいたします。 皆様、お気に入り登録ありがとうございました。 現在、お礼SSの準備中です。少々お待ちください。 辺境伯領の当主が他界。代わりに領主になったのは元騎士団の隊長ギルベルト(26) ずっと騎士団に在籍して領のことなど右も左もわからない。 そのため新しい辺境伯様は帳簿も書類も不備ばかり。しかも辺境伯領は王国の端なので修正も大変。 そこで仕事を終わらせるために、腕っぷしに定評のあるギリギリ貴族の男爵出身の女官ライラ(18)が辺境伯領に出向くことになった。   だがそこでライラを待っていたのは、元騎士とは思えないほどつかみどころのない辺境伯様と、前辺境伯夫妻の忘れ形見の3人のこどもたち(14歳男子、9歳男子、6歳女子)だった。 仕事のわからない辺境伯を助けながら、こどもたちの生活を助けたり、魔物を倒したり!? そしていつしか、ライラと辺境伯やこどもたちとの関係が変わっていく…… ※お待たせしました。 ※他サイト様にも掲載中

夫に顧みられない王妃は、人間をやめることにしました~もふもふ自由なセカンドライフを謳歌するつもりだったのに、何故かペットにされています!~

狭山ひびき
恋愛
もう耐えられない! 隣国から嫁いで五年。一度も国王である夫から関心を示されず白い結婚を続けていた王妃フィリエルはついに決断した。 わたし、もう王妃やめる! 政略結婚だから、ある程度の覚悟はしていた。けれども幼い日に淡い恋心を抱いて以来、ずっと片思いをしていた相手から冷たくされる日々に、フィリエルの心はもう限界に達していた。政略結婚である以上、王妃の意思で離婚はできない。しかしもうこれ以上、好きな人に無視される日々は送りたくないのだ。 離婚できないなら人間をやめるわ! 王妃で、そして隣国の王女であるフィリエルは、この先生きていてもきっと幸せにはなれないだろう。生まれた時から政治の駒。それがフィリエルの人生だ。ならばそんな「人生」を捨てて、人間以外として生きたほうがましだと、フィリエルは思った。 これからは自由気ままな「猫生」を送るのよ! フィリエルは少し前に知り合いになった、「廃墟の塔の魔女」に頼み込み、猫の姿に変えてもらう。 よし!楽しいセカンドラウフのはじまりよ!――のはずが、何故か夫(国王)に拾われ、ペットにされてしまって……。 「ふふ、君はふわふわで可愛いなぁ」 やめてえ!そんなところ撫でないで~! 夫(人間)妻(猫)の奇妙な共同生活がはじまる――

【完結】転生したらラスボスの毒継母でした!

白雨 音
恋愛
妹シャルリーヌに裕福な辺境伯から結婚の打診があったと知り、アマンディーヌはシャルリーヌと入れ替わろうと画策する。 辺境伯からは「息子の為の白い結婚、いずれ解消する」と宣言されるが、アマンディーヌにとっても都合が良かった。「辺境伯の財で派手に遊び暮らせるなんて最高!」義理の息子など放置して遊び歩く気満々だったが、義理の息子に会った瞬間、卒倒した。 夢の中、前世で読んだ小説を思い出し、義理の息子は将来世界を破滅させようとするラスボスで、自分はその一因を作った毒継母だと知った。破滅もだが、何より自分の死の回避の為に、義理の息子を真っ当な人間に育てようと誓ったアマンディーヌの奮闘☆  異世界転生、家族愛、恋愛☆ 短めの長編(全二十一話です) 《完結しました》 お読み下さり、お気に入り、エール、いいね、ありがとうございます☆ 

神様の手違いで、おまけの転生?!お詫びにチートと無口な騎士団長もらっちゃいました?!

カヨワイさつき
恋愛
最初は、日本人で受験の日に何かにぶつかり死亡。次は、何かの討伐中に、死亡。次に目覚めたら、見知らぬ聖女のそばに、ポツンとおまけの召喚?あまりにも、不細工な為にその場から追い出されてしまった。 前世の記憶はあるものの、どれをとっても短命、不幸な出来事ばかりだった。 全てはドジで少し変なナルシストの神様の手違いだっ。おまけの転生?お詫びにチートと無口で不器用な騎士団長もらっちゃいました。今度こそ、幸せになるかもしれません?!

混血の私が純血主義の竜人王子の番なわけない

三国つかさ
恋愛
竜人たちが通う学園で、竜人の王子であるレクスをひと目見た瞬間から恋に落ちてしまった混血の少女エステル。好き過ぎて狂ってしまいそうだけど、分不相応なので必死に隠すことにした。一方のレクスは涼しい顔をしているが、純血なので実は番に対する感情は混血のエステルより何倍も深いのだった。

処理中です...