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第七章:恋を知る夜、愛に包まれる朝
第127話・甘やかに包む、仲間たちの想い
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次にルナフィエラの目を奪ったのは、屋台の前に並んだ果実だった。
飴をまとったそれらは朝の光を反射し、きらきらと宝石のように輝いている。
「……あれ、なに……? きらきらしてる……」
ルナフィエラの小さな呟きに、シグがすぐ反応した。
彼女を抱えたまま歩みを進め、屋台の前へと向かう。
「見たいんだろ」
低い声に、彼女は恥ずかしそうに頷く。
屋台の男が器用に串を並べている様子を間近で見ると、飴の膜がとろりと果実を包み、冷めるそばから艶めきを増していく。
「……きれい……」
感嘆の声が零れた瞬間、シグはためらうことなくひとつを指さし、代金を払った。
受け取った串をそのままルナフィエラに差し出す。
「ほら。……食え」
渡された串をそっと口に運ぶと、ぱりりと飴が割れ、甘酸っぱい果汁が弾ける。
「……っ! あまい……おいしい……!」
瞳を輝かせるその顔を、シグはじっと見つめる。
「……やっぱり、ルナには甘いもんが似合うな」
唐突な言葉に、ルナフィエラは耳まで赤く染めて俯く。
けれどシグの胸に抱かれているため逃げ場はなく、そのまま彼の腕に小さく身を縮めた。
市場の賑わいの中、ルナフィエラの視線は次から次へと屋台に引き寄せられていく。
少しずつ口に運び幸せそうに笑う彼女の横で、食べきれなかった分は当然のように4人が分け合って平らげていた。
「ルナ様は小食ですから」
「俺たちが食べればいいだけだ」
シグとヴィクトルが当然のように言い、フィンは「もっと食べたいなら遠慮しないで!」と笑う。
そんなやり取りの中、彼女の頬はほんのり赤く、お腹いっぱいの満足げな表情になっていた。
そのとき、ルナフィエラの視線がふと一点に止まった。
屋台の棚に並ぶ、小さな焼き菓子。
黄金色に焼き上げられたクッキーの中には、砕いたナッツや色とりどりのドライフルーツが散りばめられ、甘い蜜の香りが漂っている。
「……あれも……美味しそう……」
無意識に漏らした小さな呟きに、ユリウスが静かに向かった。
そして戻ってきたとき、手には小袋が二つ。
「……ゆ、ユリウス? そんなに食べられないよ……?」
困ったように眉を下げるルナフィエラに、彼は穏やかに微笑んだ。
「これは日持ちする。道中のおやつにすればいい。……ルナは甘いものが好きだからね」
ルナフィエラの瞳が大きく揺れる。
ただ目の前の欲だけではなく、この先の旅路まで思って選んでくれた――そのことが胸に染みた。
「……ありがとう、ユリウス。すごく嬉しい」
頬を染め、素直に感謝を伝えるルナフィエラに、ユリウスはさらりと答える。
「当然だ。君の笑顔が見られるのなら、それだけで十分」
その声音は焚き火のように温かく、街のざわめきの中でも不思議と心に届いていた。
宿に戻った一行は、昨夜と同様に広めの部屋を取り、腰を落ち着けた。
市場の喧騒から離れ、窓の外に差し込む昼の光が心地よい。
ルナフィエラはベッドに座ったまま、胸の奥で小さく息を吐いた。
(……少し、動ける……?)
午前の休養と食事のおかげか、体に重くのしかかっていた倦怠感が、ほんの少し和らいでいる気がした。
「ルナ、無理はしないでね」
隣にいたフィンが、心配そうに小さな手を重ねてくる。
温かな光が滲み、柔らかな治癒魔法がルナフィエラの体を優しく包んだ。
「……ありがとう、フィン。すごく楽になった」
そう微笑む彼女に、フィンは「よかった!」と満面の笑みを見せる。
けれどその目は、まだ無理をさせまいとする強い気遣いに満ちていた。
一方、ユリウスとヴィクトルは出発の支度を整えるべく立ち上がる。
「日用品と保存食を補充しておこう。……クルミアの谷まであと少しだが、何があるかわからないからね」
「そうですね。道中で必要になるものも多いでしょう」
落ち着いた声を交わし合い、2人は外套を羽織ると市場へと向かっていった。
その背を見送りながら、ルナフィエラは胸の奥がじんわり温かくなるのを覚える。
(……こうしてみんなが支えてくれるから、私……安心していられるんだね)
彼女の傍らにはシグも控えていた。
腕を組み、窓の外を無言で眺めているが、その存在がそこにあるだけで不思議と心が落ち着いた。
飴をまとったそれらは朝の光を反射し、きらきらと宝石のように輝いている。
「……あれ、なに……? きらきらしてる……」
ルナフィエラの小さな呟きに、シグがすぐ反応した。
彼女を抱えたまま歩みを進め、屋台の前へと向かう。
「見たいんだろ」
低い声に、彼女は恥ずかしそうに頷く。
屋台の男が器用に串を並べている様子を間近で見ると、飴の膜がとろりと果実を包み、冷めるそばから艶めきを増していく。
「……きれい……」
感嘆の声が零れた瞬間、シグはためらうことなくひとつを指さし、代金を払った。
受け取った串をそのままルナフィエラに差し出す。
「ほら。……食え」
渡された串をそっと口に運ぶと、ぱりりと飴が割れ、甘酸っぱい果汁が弾ける。
「……っ! あまい……おいしい……!」
瞳を輝かせるその顔を、シグはじっと見つめる。
「……やっぱり、ルナには甘いもんが似合うな」
唐突な言葉に、ルナフィエラは耳まで赤く染めて俯く。
けれどシグの胸に抱かれているため逃げ場はなく、そのまま彼の腕に小さく身を縮めた。
市場の賑わいの中、ルナフィエラの視線は次から次へと屋台に引き寄せられていく。
少しずつ口に運び幸せそうに笑う彼女の横で、食べきれなかった分は当然のように4人が分け合って平らげていた。
「ルナ様は小食ですから」
「俺たちが食べればいいだけだ」
シグとヴィクトルが当然のように言い、フィンは「もっと食べたいなら遠慮しないで!」と笑う。
そんなやり取りの中、彼女の頬はほんのり赤く、お腹いっぱいの満足げな表情になっていた。
そのとき、ルナフィエラの視線がふと一点に止まった。
屋台の棚に並ぶ、小さな焼き菓子。
黄金色に焼き上げられたクッキーの中には、砕いたナッツや色とりどりのドライフルーツが散りばめられ、甘い蜜の香りが漂っている。
「……あれも……美味しそう……」
無意識に漏らした小さな呟きに、ユリウスが静かに向かった。
そして戻ってきたとき、手には小袋が二つ。
「……ゆ、ユリウス? そんなに食べられないよ……?」
困ったように眉を下げるルナフィエラに、彼は穏やかに微笑んだ。
「これは日持ちする。道中のおやつにすればいい。……ルナは甘いものが好きだからね」
ルナフィエラの瞳が大きく揺れる。
ただ目の前の欲だけではなく、この先の旅路まで思って選んでくれた――そのことが胸に染みた。
「……ありがとう、ユリウス。すごく嬉しい」
頬を染め、素直に感謝を伝えるルナフィエラに、ユリウスはさらりと答える。
「当然だ。君の笑顔が見られるのなら、それだけで十分」
その声音は焚き火のように温かく、街のざわめきの中でも不思議と心に届いていた。
宿に戻った一行は、昨夜と同様に広めの部屋を取り、腰を落ち着けた。
市場の喧騒から離れ、窓の外に差し込む昼の光が心地よい。
ルナフィエラはベッドに座ったまま、胸の奥で小さく息を吐いた。
(……少し、動ける……?)
午前の休養と食事のおかげか、体に重くのしかかっていた倦怠感が、ほんの少し和らいでいる気がした。
「ルナ、無理はしないでね」
隣にいたフィンが、心配そうに小さな手を重ねてくる。
温かな光が滲み、柔らかな治癒魔法がルナフィエラの体を優しく包んだ。
「……ありがとう、フィン。すごく楽になった」
そう微笑む彼女に、フィンは「よかった!」と満面の笑みを見せる。
けれどその目は、まだ無理をさせまいとする強い気遣いに満ちていた。
一方、ユリウスとヴィクトルは出発の支度を整えるべく立ち上がる。
「日用品と保存食を補充しておこう。……クルミアの谷まであと少しだが、何があるかわからないからね」
「そうですね。道中で必要になるものも多いでしょう」
落ち着いた声を交わし合い、2人は外套を羽織ると市場へと向かっていった。
その背を見送りながら、ルナフィエラは胸の奥がじんわり温かくなるのを覚える。
(……こうしてみんなが支えてくれるから、私……安心していられるんだね)
彼女の傍らにはシグも控えていた。
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