【完結】純血の姫と誓約の騎士たち〜紅き契約と滅びの呪い〜

来栖れいな

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第二章:4騎士との出会い

第6話・ユリウス・フォン・エルムとの出会い

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ヴィクトルがルナフィエラに仕えることを誓ってから、数日後。

紅き月の夜が近づくにつれ、ルナフィエラの周囲の魔力は少しずつ高まり、彼女の存在が世界に広がり始めていた。

そして——

新たな訪問者が現れる。

ルナフィエラは、その夜も古城の書庫で静かに本を読んでいた。

だが、ふと奇妙な感覚に襲われ、手が止まる。

(……何?)

本能的に、背筋がざわりとする。
まるで、見えない何かが 彼女の存在を確かめているかのような——そんな感覚だった。

(誰か、近づいている……?)

瞬間、書庫の外にいるヴィクトルの気配が動いた。
そして、次の瞬間——

コン、コン……

夜の静寂を破るように、古城の扉が控えめに叩かれた。

ルナは、はっと顔を上げる。

(……この城を訪れる者なんて、いるはずがないのに)

100年間、誰も訪れなかった古城。
ヴィクトルがここを見つけたのも偶然のはず。
それなのに、次々と新たな者が現れるのはなぜ——?

「ルナフィエラ様、こちらでお待ちを」

静かに言って、ヴィクトルが扉の前に立つ。
鋭い眼差しが、書庫の扉越しに玄関の方へ向けられた。

「……誰かが外にいるようです」

ヴィクトルの表情は変わらないが、その雰囲気からわずかな緊張が伝わってくる。

ルナフィエラは、胸の奥に広がる不安を押し殺しながら、そっと席を立つ。

「……私も行く」

「危険かもしれません」

「……それでも、ここにいるわけにはいかない」

ルナフィエラは静かにヴィクトルを見上げた。
彼女の決意を感じ取ったのか、ヴィクトルはわずかに逡巡した後、小さく頷く。

「……では、決して私のそばを離れぬよう」

ルナフィエラは頷き、ヴィクトルの後を追う。



書庫の扉を開けると、城内は静まり返っていた。
月明かりが窓から差し込み、長い廊下に影を落とす。

扉を叩いた者が、外でじっと待っているのがわかる。

(敵……? それとも……)

ルナフィエラは自然と呼吸を浅くする。

ヴィクトルは迷いなく歩を進め、玄関の前で立ち止まった。

「ルナフィエラ様、後ろに」

ヴィクトルの紅い瞳が鋭く細められる。
彼の気配が、一瞬で戦士のそれへと変わった。

ルナフィエラはそっと後ろに立ちながら、扉を見つめる。

(誰……?)

そして——

ヴィクトルが警戒しながら扉を開く。

そこに立っていたのは——。



銀髪に紫の瞳を持つエルフの騎士。
長身で整った顔立ち、どこか余裕を感じさせる微笑み。
漆黒のマントの下には、美しく装飾された細剣が揺れていた。

ルナフィエラは、一瞬言葉を失う。

(……この人……?)

彼はゆったりとした仕草で片手を胸に当て、軽く頭を下げる。

「——ようやく会えたね。君が“最後の純血種”か」

どこか軽やかで、感情を読み取りづらい声。
だが、その瞳は——
好奇心に満ちていた。



ルナフィエラは、ヴィクトルの後ろから一歩前へ出る。

(この人……私を知っている?)

「……あなたは?」

彼はまるで舞台の役者のように、優雅な仕草で名乗った。

「ユリウス・フォン・エルム。エルフの王族の血を引く者だよ」

微笑みながら、彼はルナフィエラを観察するように目を細める。

「さて、まずは確認しておこうか。君は本当に“ヴァンパイア王家の生き残り”なのか?」

ルナフィエラは、彼の言葉にわずかに身構えた。

「……それが何?」

「いやね、僕はただ確かめに来ただけさ」

ユリウスは、優雅に手を掲げ、指先で魔力を揺らす。

「——この紅き月が、君の存在を暴き始めている」

微かな魔力の波が震え、ルナフィエラの肌を撫でた。
まるで、彼が 「確かにここに純血種がいる」 と確信したかのように。

「ほう……やっぱり、君か」

彼の瞳が、より楽しげに輝く。

「これは、なかなか面白いことになりそうだ」



ルナフィエラの横で、それを静かに見ていたヴィクトルが、わずかに眉をひそめる。

「……目的を聞かせていただこうか」

ユリウスは、ふっと微笑んだ。

「ああ、怖いね。忠実な騎士殿が吠えたよ」

「……貴様」

「まぁまぁ、そんなに敵意を向けないでくれ」

ユリウスは軽く肩をすくめ、視線をルナへと戻す。

「僕はね、“世界の均衡”を見極めに来ただけなんだ」

「君が覚醒すれば、ヴァンパイアの世界はどう変わるのか?」

「そして……君は、自分の力がどれほどの意味を持つか、考えたことはあるかい?」

ルナフィエラは、その問いに一瞬言葉を詰まらせた。

(……私は、何を望んでいるの?)

彼女の迷いを見透かしたように、ユリウスはまた微笑む。

「ふむ……君はまだ“覚醒”を恐れているみたいだね」

「でもね——」

「僕は、興味を持ったものを簡単には手放せないんだ」

彼は静かにルナフィエラへと歩み寄る。

「君がこのまま覚醒したら、どんな未来が待っているのか……僕は、それが見たいんだ」

「だから、君を見守らせてもらうよ」

「……僕が興味を持った以上、逃がす気はないからね」

その言葉は、どこか楽しげで、それでいて 深い執着 を感じさせた——。
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