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第2章「経矢の故郷」
第27話「開かれた棺 ~吸血鬼たちの微笑~」
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「俺が……俺が500年前お前らを殺した時……。あの時からすでに吸血鬼だったのか?」
ジャスティンを睨みつけたまま、経矢は尋ねた。
その隣でイリーナは視線だけ動かして、経矢を見る。
「キョウヤ……」
経矢の瞳に激しい憎しみの炎が灯っているのが、イリーナにはハッキリとわかった。
彼にとってジャスティンは、ただの過去に殺した相手ではない。
自分と姉を奴隷として売り飛ばした男の部下。
かつてその命を奪うことで復讐はすでに終えていたはずだった。
しかし……。
再びこうして目の前に立ち塞がっている。
先ほどは守るために戦いたい、と話していた経矢だが、それでもやはり強い憎悪からは簡単には抜け出せない。
「ん~、半分正解で半分外れってとこだな」
ジャスティンは経矢の問いかけに答えた。
「……半分?」
「あぁ、お前に殺される時点で俺たちの体にゃあ、たしかにすでに吸血鬼の血が混ざっていたんだよ。ボスの命令で全員にな」
経矢の疑問に、彼は淡々と答える。
だからこそ彼らは、エルフや獣人種といった長命種でないにもかかわらず、500年という長い時を生きながらえていたのだろう。
「……てことは、ルーベンも吸血鬼ってことだな?」
「あぁ、そうだ。ボスもお前が知ってる他の2人も吸血鬼だ。……おっと、話し過ぎちまったみたいだなぁ。これ以上のおしゃべりはボスに怒られちまいそうだ」
ジャスティンはそこまで話すと話すべきことは話したと言わんばかりの態度で、手を掲げる。
すると地面がゴゴゴッと揺れ、隆起する。
そして土の中から、いくつもの棺桶が十字架のように突き出てくる。
「な、なんなの!?」
イリーナは、経矢と自分を取り囲むようにして現れた棺桶に身構える。
2人は背中合わせになり、ジャスティンと棺桶に視線を向ける。
ジャスティンは舌なめずりをしたあと、狂気的な笑みを浮かべる。
「さぁ、出て来な! 俺の可愛い子ちゃんたち。ウブなガキどもに吸血鬼の夜会の楽しみ方とマナーを教えてやりな!」
棺桶の蓋がゆっくりと軋みを上げて開く。
その瞬間、夜の冷気がさらに冷たくなったように経矢は錯覚した。
「……吸血鬼の宴の始まりだぜ」
ジャスティンの嗤い声と共に、地獄の門が開いたような錯覚が走った。
「っ……!?」
イリーナは、棺桶の蓋が開くのを見て息を飲む。
それは経矢もまた、同じだった。
かつてジャスティンと戦った時、彼はまだ吸血鬼ではなかった。
つまり経矢も初めて見る技であり、警戒を強める。
中から現れたのは、吸血鬼と化した複数の若い女性たちだった。
先ほどの従徒化されていた女性とは違い、すでに完全な吸血鬼と化しているようだった。
ジャスティンと同じ赤い瞳で経矢たちを品定めするように見つめる。
「御主人様、あの2人の血を吸ってもよろしいのですか?」
待ちきれない、といった様子で1人の吸血鬼がジャスティンに尋ねる。
他の吸血鬼たちも、本能に支配されたように今にも襲いかかろうとしている。
「あー、かまわねぇぞ。だが殺さない程度に全員で分けて吸うんだ。あいつらにはまだ死んでもらっちゃ困るからなぁ」
ジャスティンはそう言いながら、ニヤリと笑う。
全員で10人いる女性たちは、爛々と目を輝かせながら経矢たちに視線を戻す。
「あの男の瞳……怯えた顔が見たい。はぁ……たまらないわぁ。」
「私はあの娘。首筋の柔らかそうな血管に噛みつきたい……」
「あの2人、まだ純血みたいね。……ふふ、私好みに調教してあげるわ」
ひとりひとりの囁きが、獣のようでありながら妙に艶めいていた。
経矢とイリーナを獲物として見つめる吸血鬼たち。
彼女たちの瞳にはもはや人間らしさなど欠片も残っていなかった。
「……イリーナ。この数に加えて向こうにはあの男もいる。協力して戦おう」
「わかった! サポートは任せて!」
経矢とイリーナは、互いに背中合わせになったまま吸血鬼たちと対峙する。
相手は人間離れした身体能力を持った吸血鬼だ。
決して油断することはできない。
「イリーナ、背中は任せた」
「うん! キョウヤこそ、絶対に倒れないで!」
「へへっ、じゃあ始めようぜ! 刺激的なナイトパーティーをなぁ!」
ジャスティンはそう叫ぶと、両手を高く上げる。
一瞬、世界から音が消えたかのようだった。
その次の瞬間、10人の吸血鬼が同時に飛びかかるのだった。
ジャスティンを睨みつけたまま、経矢は尋ねた。
その隣でイリーナは視線だけ動かして、経矢を見る。
「キョウヤ……」
経矢の瞳に激しい憎しみの炎が灯っているのが、イリーナにはハッキリとわかった。
彼にとってジャスティンは、ただの過去に殺した相手ではない。
自分と姉を奴隷として売り飛ばした男の部下。
かつてその命を奪うことで復讐はすでに終えていたはずだった。
しかし……。
再びこうして目の前に立ち塞がっている。
先ほどは守るために戦いたい、と話していた経矢だが、それでもやはり強い憎悪からは簡単には抜け出せない。
「ん~、半分正解で半分外れってとこだな」
ジャスティンは経矢の問いかけに答えた。
「……半分?」
「あぁ、お前に殺される時点で俺たちの体にゃあ、たしかにすでに吸血鬼の血が混ざっていたんだよ。ボスの命令で全員にな」
経矢の疑問に、彼は淡々と答える。
だからこそ彼らは、エルフや獣人種といった長命種でないにもかかわらず、500年という長い時を生きながらえていたのだろう。
「……てことは、ルーベンも吸血鬼ってことだな?」
「あぁ、そうだ。ボスもお前が知ってる他の2人も吸血鬼だ。……おっと、話し過ぎちまったみたいだなぁ。これ以上のおしゃべりはボスに怒られちまいそうだ」
ジャスティンはそこまで話すと話すべきことは話したと言わんばかりの態度で、手を掲げる。
すると地面がゴゴゴッと揺れ、隆起する。
そして土の中から、いくつもの棺桶が十字架のように突き出てくる。
「な、なんなの!?」
イリーナは、経矢と自分を取り囲むようにして現れた棺桶に身構える。
2人は背中合わせになり、ジャスティンと棺桶に視線を向ける。
ジャスティンは舌なめずりをしたあと、狂気的な笑みを浮かべる。
「さぁ、出て来な! 俺の可愛い子ちゃんたち。ウブなガキどもに吸血鬼の夜会の楽しみ方とマナーを教えてやりな!」
棺桶の蓋がゆっくりと軋みを上げて開く。
その瞬間、夜の冷気がさらに冷たくなったように経矢は錯覚した。
「……吸血鬼の宴の始まりだぜ」
ジャスティンの嗤い声と共に、地獄の門が開いたような錯覚が走った。
「っ……!?」
イリーナは、棺桶の蓋が開くのを見て息を飲む。
それは経矢もまた、同じだった。
かつてジャスティンと戦った時、彼はまだ吸血鬼ではなかった。
つまり経矢も初めて見る技であり、警戒を強める。
中から現れたのは、吸血鬼と化した複数の若い女性たちだった。
先ほどの従徒化されていた女性とは違い、すでに完全な吸血鬼と化しているようだった。
ジャスティンと同じ赤い瞳で経矢たちを品定めするように見つめる。
「御主人様、あの2人の血を吸ってもよろしいのですか?」
待ちきれない、といった様子で1人の吸血鬼がジャスティンに尋ねる。
他の吸血鬼たちも、本能に支配されたように今にも襲いかかろうとしている。
「あー、かまわねぇぞ。だが殺さない程度に全員で分けて吸うんだ。あいつらにはまだ死んでもらっちゃ困るからなぁ」
ジャスティンはそう言いながら、ニヤリと笑う。
全員で10人いる女性たちは、爛々と目を輝かせながら経矢たちに視線を戻す。
「あの男の瞳……怯えた顔が見たい。はぁ……たまらないわぁ。」
「私はあの娘。首筋の柔らかそうな血管に噛みつきたい……」
「あの2人、まだ純血みたいね。……ふふ、私好みに調教してあげるわ」
ひとりひとりの囁きが、獣のようでありながら妙に艶めいていた。
経矢とイリーナを獲物として見つめる吸血鬼たち。
彼女たちの瞳にはもはや人間らしさなど欠片も残っていなかった。
「……イリーナ。この数に加えて向こうにはあの男もいる。協力して戦おう」
「わかった! サポートは任せて!」
経矢とイリーナは、互いに背中合わせになったまま吸血鬼たちと対峙する。
相手は人間離れした身体能力を持った吸血鬼だ。
決して油断することはできない。
「イリーナ、背中は任せた」
「うん! キョウヤこそ、絶対に倒れないで!」
「へへっ、じゃあ始めようぜ! 刺激的なナイトパーティーをなぁ!」
ジャスティンはそう叫ぶと、両手を高く上げる。
一瞬、世界から音が消えたかのようだった。
その次の瞬間、10人の吸血鬼が同時に飛びかかるのだった。
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