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第2章「経矢の故郷」
第37話「涙の果てに、愛は再び」
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こうしてマギーの親戚の家に泊めてもらうことになった経矢たち。
2階建ての部屋の一室に入り、荷物を下ろすとほぼ同時に一息つく経矢とイリーナ。
それがおかしくて2人は顔を見合わせて小さく笑った。
ようやく本当に安全な寝床にたどり着くことができた、という安堵が2人に安らぎをもたらす。
マギーと彼女のおばさんが夕食を準備している間、2人はおばさんの提案を受けて交代でシャワーに入り、疲れを取ることにした。
順番にシャワーを浴びた2人。
「キョウヤ、お礼って言ってくれたけど全部任せっきりは申し訳ないし、手伝いに行こうか?」
イリーナが部屋のドアを開けながら経矢に問いかける。
彼女の言葉に、そうだな、と経矢も同意する。
2人は部屋を出て一階へと向かうと、ちょうどキッチンで調理をしていたマギーとおばさんに声を掛ける。
すでにほとんど作り終えており、テーブルには豪華な料理がたくさん並んでいた。
テーブルに並んだ料理を見て感嘆の声を上げる経矢とイリーナ。
2人にとってこれだけ豪華な食事は、イリーナの故郷でスミスと3人で生活していた時以来だった。
「おいしそう!!」
イリーナは目を輝かせ、マギーとおばさんの作った料理に目を輝かせる。
経矢も思わずゴクリ、と喉を鳴らした。
「私とおばさんでいろいろと作ってみました。お口に合うといいのですが……」
マギーは経矢たちに微笑みながら、ワインなどを準備していく。
(よかった……。元気が戻ってきたみたいだ)
マギーの笑顔を見てそう思う経矢。
夕食の準備も整い、全員でテーブルにつくと食事を始めるのだった。
夕食を食べ始めて少しした時だった。
何やら外が慌ただしい。
「おや、変だねぇ。この時間にはみんな家の中で静かにしてるってのに」
おばさんは、騒がしい外の様子を気にするように言う。
村の中央部に位置しているこの家は、窓を閉めていても外の様子がわかるのだ。
「何かあったのかしら?」
おばさんの話を聞いていたマギーも怪訝そうに窓の外を見る。
経矢は食事の手を停めて、席から立ち上がった。
何かの襲撃……オオカミやインプなどならいいが、それこそジャスティンの仲間などだった場合、村の衛兵では手に負えないだろう。
「俺、ちょっと見て来ますよ。イリーナは2人の護衛を」
「うん、気を付けてねキョウヤ」
イリーナは彼を信じて送り出した。
マギーとおばさんの顔には、次第に恐怖の色が浮かび始めていた。
経矢が家の入り口を開けて外に出ようとした時だった。
バタン、とドアが開き一人の青年が大きく肩で息をしながら、家に飛び込んできた。
その後ろには村の住人たちが数人の姿があった。
「はぁ……はぁ……マ、マギー! い、生きて……生きていてくれたのか!?」
青年は息を切らしながらも、マギーの姿を見て救われたかのように叫んだ。
「うそ……ダ、ダニー……?」
マギーの声が震える。
それは彼女が吸血鬼ジャスティンに従徒化され、彼の意のままに自らナイフを突き立ててしまった、最愛の夫ダニーだったのだ。
「……あぁ……ダニー、ごめんなさい! ごめんなさいっ!」
マギーは自分が彼に危害を加えてしまったこと、ジャスティンに蹂躙されてしまったこと、彼が生きてくれていたこと、今目の前にいることに様々な感情が入り混じり、大粒の涙を流しながらダニーに駆け寄って抱き着いた。
「マギー! ……よかった……本当に良かった!」
ダニーは妻を力強く抱きしめた後、彼女の肩を掴んで体を離し、その両肩に手を置きながらマギーの目をまっすぐ見て言う。
「……君が生きていてくれて……本当に良かった。何があったかは言わなくてもいい。……君が生きていてくれただけで、僕は……」
「でも私……私はあなたをっ! ……」
「いいんだ。全部ひどい悪夢だったんだ。君のせいじゃない。あの時、すぐに助けてあげられなくてすまない。マギー……生きていてくれてありがとう」
ダニーの生きていてくれてありがとう、の一言でマギーは再び彼の胸に顔を埋め、大きな声を上げて泣き始めた。
彼女の背中をトントン、と優しく叩きながら、ダニーは涙で滲んだ瞳を経矢とイリーナに向けた。
「ありがとう……。君たちが彼女を……僕の妻を……助けてくれたんだろう……本当に、ありがとう……」
ダニーの頬を大きな涙が伝う。
経矢とイリーナは、彼の言葉にゆっくりとうなずくのだった。
「……さ、新婚夫婦が無事に再会できたわけだし、あらためてディナーを再開といきましょうよ」
おばさんの一言に、感動的な雰囲気から一転して空気が明るくなる。
2人の再会を喜んだのは経矢たちやおばさんたちだけじゃなく、ダニーと一緒にやって来たデブロンの商人たち、そしてこの村の人たちもだった。
最初は経矢とイリーナに対するマギーとおばさんの感謝の夕食会だったはずが、村をあげての盛大なお祝いに変わった。
各家の料理やお酒を持ち寄って、夜通し宴会が続けられる。
笑い声と歌声が夜風に乗って山へとこだました。
その光は、昨日まで血に染まっていた夜を、静かに塗り替えていった。
2階建ての部屋の一室に入り、荷物を下ろすとほぼ同時に一息つく経矢とイリーナ。
それがおかしくて2人は顔を見合わせて小さく笑った。
ようやく本当に安全な寝床にたどり着くことができた、という安堵が2人に安らぎをもたらす。
マギーと彼女のおばさんが夕食を準備している間、2人はおばさんの提案を受けて交代でシャワーに入り、疲れを取ることにした。
順番にシャワーを浴びた2人。
「キョウヤ、お礼って言ってくれたけど全部任せっきりは申し訳ないし、手伝いに行こうか?」
イリーナが部屋のドアを開けながら経矢に問いかける。
彼女の言葉に、そうだな、と経矢も同意する。
2人は部屋を出て一階へと向かうと、ちょうどキッチンで調理をしていたマギーとおばさんに声を掛ける。
すでにほとんど作り終えており、テーブルには豪華な料理がたくさん並んでいた。
テーブルに並んだ料理を見て感嘆の声を上げる経矢とイリーナ。
2人にとってこれだけ豪華な食事は、イリーナの故郷でスミスと3人で生活していた時以来だった。
「おいしそう!!」
イリーナは目を輝かせ、マギーとおばさんの作った料理に目を輝かせる。
経矢も思わずゴクリ、と喉を鳴らした。
「私とおばさんでいろいろと作ってみました。お口に合うといいのですが……」
マギーは経矢たちに微笑みながら、ワインなどを準備していく。
(よかった……。元気が戻ってきたみたいだ)
マギーの笑顔を見てそう思う経矢。
夕食の準備も整い、全員でテーブルにつくと食事を始めるのだった。
夕食を食べ始めて少しした時だった。
何やら外が慌ただしい。
「おや、変だねぇ。この時間にはみんな家の中で静かにしてるってのに」
おばさんは、騒がしい外の様子を気にするように言う。
村の中央部に位置しているこの家は、窓を閉めていても外の様子がわかるのだ。
「何かあったのかしら?」
おばさんの話を聞いていたマギーも怪訝そうに窓の外を見る。
経矢は食事の手を停めて、席から立ち上がった。
何かの襲撃……オオカミやインプなどならいいが、それこそジャスティンの仲間などだった場合、村の衛兵では手に負えないだろう。
「俺、ちょっと見て来ますよ。イリーナは2人の護衛を」
「うん、気を付けてねキョウヤ」
イリーナは彼を信じて送り出した。
マギーとおばさんの顔には、次第に恐怖の色が浮かび始めていた。
経矢が家の入り口を開けて外に出ようとした時だった。
バタン、とドアが開き一人の青年が大きく肩で息をしながら、家に飛び込んできた。
その後ろには村の住人たちが数人の姿があった。
「はぁ……はぁ……マ、マギー! い、生きて……生きていてくれたのか!?」
青年は息を切らしながらも、マギーの姿を見て救われたかのように叫んだ。
「うそ……ダ、ダニー……?」
マギーの声が震える。
それは彼女が吸血鬼ジャスティンに従徒化され、彼の意のままに自らナイフを突き立ててしまった、最愛の夫ダニーだったのだ。
「……あぁ……ダニー、ごめんなさい! ごめんなさいっ!」
マギーは自分が彼に危害を加えてしまったこと、ジャスティンに蹂躙されてしまったこと、彼が生きてくれていたこと、今目の前にいることに様々な感情が入り混じり、大粒の涙を流しながらダニーに駆け寄って抱き着いた。
「マギー! ……よかった……本当に良かった!」
ダニーは妻を力強く抱きしめた後、彼女の肩を掴んで体を離し、その両肩に手を置きながらマギーの目をまっすぐ見て言う。
「……君が生きていてくれて……本当に良かった。何があったかは言わなくてもいい。……君が生きていてくれただけで、僕は……」
「でも私……私はあなたをっ! ……」
「いいんだ。全部ひどい悪夢だったんだ。君のせいじゃない。あの時、すぐに助けてあげられなくてすまない。マギー……生きていてくれてありがとう」
ダニーの生きていてくれてありがとう、の一言でマギーは再び彼の胸に顔を埋め、大きな声を上げて泣き始めた。
彼女の背中をトントン、と優しく叩きながら、ダニーは涙で滲んだ瞳を経矢とイリーナに向けた。
「ありがとう……。君たちが彼女を……僕の妻を……助けてくれたんだろう……本当に、ありがとう……」
ダニーの頬を大きな涙が伝う。
経矢とイリーナは、彼の言葉にゆっくりとうなずくのだった。
「……さ、新婚夫婦が無事に再会できたわけだし、あらためてディナーを再開といきましょうよ」
おばさんの一言に、感動的な雰囲気から一転して空気が明るくなる。
2人の再会を喜んだのは経矢たちやおばさんたちだけじゃなく、ダニーと一緒にやって来たデブロンの商人たち、そしてこの村の人たちもだった。
最初は経矢とイリーナに対するマギーとおばさんの感謝の夕食会だったはずが、村をあげての盛大なお祝いに変わった。
各家の料理やお酒を持ち寄って、夜通し宴会が続けられる。
笑い声と歌声が夜風に乗って山へとこだました。
その光は、昨日まで血に染まっていた夜を、静かに塗り替えていった。
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