嵐の館にて ~幾夜ともに~

KOU/Vami

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第2夜「広くて大きな嵐の館」

7.疑似餌

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 さて、それでは次のお話に移りましょうか。
 7つ目のお話は『疑似餌』というお話です。
 それでは、始めましょう……。
 

 これはとある大学生の男女グループ7人が、夏休みを利用して海に遊びに言った時のお話です。
 女子たちはお目当ての男子とお近づきになりたい、男子たちは女子の水着姿を拝みたい、といったそれぞれ下心が満載のグループ旅行だったようです。
 出発から浮かれ気分の7人は、誰1人として天気の急変など予想していませんでした。

 突如として降り始めた大粒の雨は、容赦なく7人を襲いました……。
 最初は一時的なものだろうと思っていた彼らですが、やがてそれは止むどころかどんどん勢いを増していくばかり。
 しかも辺りは一瞬にしてバケツをひっくり返したような土砂降りになり、さらに雷まで鳴り始めてしまいました。
 海には到着したものの車から降りられる気配がなく、7人は雨が通り過ぎるのを待つことにしました。
 しばらくしてようやく雨が上がると一気に空が晴れ渡りましたが、先ほどまでの雨の影響で波は荒れに荒れていたのです。
 がっかりした彼らは、仕方なく予約していた旅館に向かおうと考えました。


 すると、トイレに行った3人の学生たちが嬉しそうな顔で戻って来ました。
「あっちの方の海、めっちゃ波穏やかだぞ!」
「うん! 何人か泳いでる人もいたよ!」
 彼らは少し離れた場所にある仮設トイレの方を指差します。
 全員でそちらに行ってみると、たしかにその海水浴場の波は穏やかで、気持ちよさそうに海に浮かぶ人たち姿がありました。

「へぇ、こんなに近くなのに波の荒れ方が違うことってあるんだな」
「ああ、知らなかったな……」
 そんなことを言い合いながら7人は、さっそく水着に着替えて泳ぐことにしました。
「うひょー、女子の水着姿!」
「ちょっと男子! そんなに見ないでよ!」
 男子たちは女子の水着姿に歓声を上げ、女子たちはそんな男子たちの様子に呆れて苦笑していました。

 1人の男子が両手を揉むように動かしながら女子たちに近付きます。
「うへへ、つかまえちゃうぞぉ~」
 冗談だとわかっている女子たちは、きゃあきゃあとはしゃいで走って逃げます。
 2人の女子が海の方へ逃げ、その男子は2人を追いかけます。
 すると黙って見ていたもう1人の男子も、3人に続きます。
「こらぁ! 俺も混ぜろ~!」
 こうして楽しい海での遊びが始まった……と思ったのですが……。


「な、なぁ……なんか……あの泳いでる人たち変じゃないか……?」
 砂浜に残った男子の1人が他のお客さんを指差して言います。
「う、うん……。なんかずっと浮いてるだけって言うか……。全然動いてないし……」
 女子の1人も不安そうな表情で同意します。
 もう1人の男子は2人がそう言うので、ジッと他の海水浴客たちを見てみます。
 すると、たしかに数人いるうちの全員が、頭だけを海面から出してただ浮いているように見えました。
 不自然なくらいに穏やかな波の中で、ただプカリプカリと頭だけが浮いているのです。
 おかしい……と3人が思った時でした。

 海に入っていった4人の学生を除いた、他の海水浴客たちの首が一斉に海に沈んだのです。
「え?」
 と、次の瞬間。
 ゴゴゴ、と地鳴りがして砂浜に残っていた3人の学生は倒れます。
 そして……。
 ザッパ~ン、と海面から何かが飛び出します。

 それは10メートル近くはあろうかという巨大な魚でした。
 しかもただ大きいだけではありません。
 頭と背中の辺りにたくさんの触手を生やしており、その先端にはそれぞれ人間の生首が付いているのです。
「きゃああああ! みんな逃げてぇ!!」
 砂浜に残っていた女子が海に入っている4人に叫びます。
「大きい波が来る! 逃げるぞ!」
 男子の1人が、彼女ともう1人の男子の手を引っ張り、海水浴場の階段を急いで登ります。

 なんとか高い位置まで逃げた3人が振り返ると……。
 巨大な魚が大きな口を開けて、4人を飲み込みました。
 そして巨大な魚が再び海に入ると、大きな波が砂浜に押し寄せます。
「あ……ああ……」
「なんだよ、あれ……」
「み、みんな……食べられたのか……?」
 残された3人は、先ほどまで楽しく遊んでいた他の4人が食べられてしまったことに呆然とします。


 すると……。
 プカリ、プカリ、と人の顔が再び海面に浮かび上がって来ます。
 先ほどまで海水浴客だと思っていた頭です。
 しかし、その中に……。
 4人の顔が海面に浮かび上がったのです。

「な、なんだ……生きてたのかよ! お~い!」
 1人の男子が安堵したように近づこうとしますが、それを他の2人が止めました。
「あいつらは……死んだ……近づくと俺らも食われる……」
 3人は絶望したようにその場にへたり込みました。
 プカリ、プカリと人の顔が浮かんでいます。
 気持ちよさそうに。


 はい、これで7つ目のお話はおしまいです。
 あなたは海は好きですか?
 海の底には、まだまだわかっていないことが多いと聞きます。
 このお話に出て来た怪魚のような存在ももしかすると……。
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