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1 魔女マチルダ
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『魔女マチルダの店』
この店は私の曾祖母の時代からあった。曾祖母の名前もマチルダと言い、祖母の名前もマチルダで、私の名前もマチルダという。私の母は魔力に乏しく魔女マチルダの名は継ぐことがなかった。
正直私も母みたいに魔力がなければ魔女を継がなくて良かったのにと思わずにはいられない。
だって今の時代、魔女なんて時代遅れの職業につきたい人なんていないもの。
曾祖母の時代は魔女の全盛期。魔女の作るポーションを誰もが求め、売りに売れていたと聞く。 祖母の時代には陰りが見えてきたとはいえ、それでも魔女は町の人々に尊敬されていた。医療技術の低いこの世界では怪我を治し、病を治すポーションはとても貴重なものだったからだ。 現在も医療技術は昔とそれほど変わっていない。それなのに何故棚にあるポーションが全く売れないのか。理由は簡単。
廉価版のポーションが冒険者ギルドや薬師ギルドで売られているから。効果は魔女の作るポーションとは比べ物にならないほど落ちるが、初心者である冒険者や庶民が手に入れやすい価格になっている。ただ廉価版のポーションは病気には効かない。それでも病気は薬師が作る魔女のポーションより安い薬を買えば良い。
廉価版のポーションが売られるようになると、たちまち魔女のポーションは衰退の一途をたどる。そして曾祖母の時代には従業員を数十人雇えるほど栄えていた『魔女マチルダの店』もその波に逆らえるわけもなく、私一人がやっと暮らしていけるだけの収入しか得られない。
「現実って、厳しい…」
私は魔女マチルダの血を引く正当なる後継者だが、転生者でもある。
この世界に生まれてくる前は「日本」という国で「大学生」をしていた。その頃の私の口癖は「めんどくさい」で、世の中のことに興味もなく淡々と毎日を過ごしていた。
料理を作ることがめんどくさくて、インスタント食品やコンビニの食事ですませていた私がレンジのない世界でさらにめんどくさい生活を送ることになるなんて誰が想像したことだろう。
私は五歳の時には転生したことを自覚していた。五歳になった時、祖母であるマチルダのもとに引き取られることになったからだ。
祖母に引き取られる前の私は多くの侍女に傅かれる生活を送っていた。伯爵家の令嬢として何不自由のない暮らしから一転、なにもかも自分でしなければならない生活をおくることになったショックで前世を思い出したのだった。
前世を思い出した私は泣くのをやめた。泣いていても何も変わらないことを知っていたから。そんな無意味なことにエネルギーを使うより、今の生活を楽にするために魔法の一つでも覚えた方が良い。
祖母は死ぬまでの間に多くのことを教えてくれた。でもたったひとつ教えてくれなかったことがある。それは『呪い』の魔法。
何故だかわからないけど祖母は『呪い』を嫌っていた。だから私にも一切『呪い』については教えてくれなかった。まあ、『呪い』なんて不気味なもの習いたくなかったから良かったんだけどね。
一年前に祖母が亡くなって、今は私がこの『魔女マチルダの店』の経営者だ。
祖母が亡くなった途端に商業ギルドを通して騎士団に納入されていたポーションの取り引きが打ち切られた。
あの時は本当にお先真っ暗で、この店を畳んで実家に帰ろうかと思ったほどだ。
なんとか店を畳まずにすんだのは前世の記憶のおかげだ。と言うより食い意地が張ってたおかげかな。
この店は私の曾祖母の時代からあった。曾祖母の名前もマチルダと言い、祖母の名前もマチルダで、私の名前もマチルダという。私の母は魔力に乏しく魔女マチルダの名は継ぐことがなかった。
正直私も母みたいに魔力がなければ魔女を継がなくて良かったのにと思わずにはいられない。
だって今の時代、魔女なんて時代遅れの職業につきたい人なんていないもの。
曾祖母の時代は魔女の全盛期。魔女の作るポーションを誰もが求め、売りに売れていたと聞く。 祖母の時代には陰りが見えてきたとはいえ、それでも魔女は町の人々に尊敬されていた。医療技術の低いこの世界では怪我を治し、病を治すポーションはとても貴重なものだったからだ。 現在も医療技術は昔とそれほど変わっていない。それなのに何故棚にあるポーションが全く売れないのか。理由は簡単。
廉価版のポーションが冒険者ギルドや薬師ギルドで売られているから。効果は魔女の作るポーションとは比べ物にならないほど落ちるが、初心者である冒険者や庶民が手に入れやすい価格になっている。ただ廉価版のポーションは病気には効かない。それでも病気は薬師が作る魔女のポーションより安い薬を買えば良い。
廉価版のポーションが売られるようになると、たちまち魔女のポーションは衰退の一途をたどる。そして曾祖母の時代には従業員を数十人雇えるほど栄えていた『魔女マチルダの店』もその波に逆らえるわけもなく、私一人がやっと暮らしていけるだけの収入しか得られない。
「現実って、厳しい…」
私は魔女マチルダの血を引く正当なる後継者だが、転生者でもある。
この世界に生まれてくる前は「日本」という国で「大学生」をしていた。その頃の私の口癖は「めんどくさい」で、世の中のことに興味もなく淡々と毎日を過ごしていた。
料理を作ることがめんどくさくて、インスタント食品やコンビニの食事ですませていた私がレンジのない世界でさらにめんどくさい生活を送ることになるなんて誰が想像したことだろう。
私は五歳の時には転生したことを自覚していた。五歳になった時、祖母であるマチルダのもとに引き取られることになったからだ。
祖母に引き取られる前の私は多くの侍女に傅かれる生活を送っていた。伯爵家の令嬢として何不自由のない暮らしから一転、なにもかも自分でしなければならない生活をおくることになったショックで前世を思い出したのだった。
前世を思い出した私は泣くのをやめた。泣いていても何も変わらないことを知っていたから。そんな無意味なことにエネルギーを使うより、今の生活を楽にするために魔法の一つでも覚えた方が良い。
祖母は死ぬまでの間に多くのことを教えてくれた。でもたったひとつ教えてくれなかったことがある。それは『呪い』の魔法。
何故だかわからないけど祖母は『呪い』を嫌っていた。だから私にも一切『呪い』については教えてくれなかった。まあ、『呪い』なんて不気味なもの習いたくなかったから良かったんだけどね。
一年前に祖母が亡くなって、今は私がこの『魔女マチルダの店』の経営者だ。
祖母が亡くなった途端に商業ギルドを通して騎士団に納入されていたポーションの取り引きが打ち切られた。
あの時は本当にお先真っ暗で、この店を畳んで実家に帰ろうかと思ったほどだ。
なんとか店を畳まずにすんだのは前世の記憶のおかげだ。と言うより食い意地が張ってたおかげかな。
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