6 / 9
悪役令嬢とわたし
しおりを挟む悪役令嬢とわたし
わたしは悪役令嬢にいじめられるかわいそうな男爵令嬢。そのことに気づいたのは半年前のことだった。悪役令嬢である第一王子の婚約者の縦ロールを見て思い出したのだ。
ここは『ユーディット学院~アリスの君へ~』というゲームの中の世界だということに。わたしには前世の記憶があった。でもだからと言って発明品をバンバン作るようなこともこの世界とは違う料理を作ってみんなを驚かせることもできなかった。わたしが作れるような簡単な料理はこの世界でも普通に食卓に並ぶようなものだけだったし、日本という世界で当たり前のようにスマホや電卓、懐中電灯といった発明品は使ってるだけだったわたしが作れるようなものではなかった。
だから前世の記憶持ちというだけで使えない自分のことが好きではなかった。せめて公爵令嬢に生まれていればとか無い物ねだりばかりしていた。
でもわたしは主役だった。わたしを中心にこの世界は回っている。逆ハーだって思いのままなのだ。そしてわたしはあの乙女ゲームを全てクリアしてる。どんなパターンがきても乗り切ってみせるわ。まずは誰から落としてみせようかしら。第一王子の攻略は最後の最後ね。あのキンキラキンの縦ロールの公爵令嬢の跪く姿は最後に見るのが一番楽しいわ。それにしてもあの公爵令嬢にだけは生まれなくて良かったわ。どのパターンでも破滅しか待ってないなんてありえないほどの不幸体質。わたしとかかわっていなくても何故か公爵家はいつも取り潰されたり、令嬢だけが処刑されたりしてた。
ああ、早く入学式にならないかしら。まずは第二王子のエリオット様よ。ハンカチを拾ってもらうイベントなんだけどどのハンカチが良いか迷ってしまうわ。ふふふ、今はあなたの方が幸せいっぱいだろうけど直ぐにわたしの天下になるのよ。
そしてユーディット学院入学の日。
男爵令嬢のわたしは第一王子や公爵令嬢のそばに行けるはずもなく、今日は一番後ろから眺めているだけだ。わたしのターゲットであるエリオット様も話すこともできないほど遠い。でもこの学院は建前では身分の差は関係ないとされている。平民も獣人も通っている。でもこの様子だと全く関係ないわけではなさそう。だって入学式だというのに身分の高い人はやっぱり前の方に集まって身分の低い人は後ろの方に自然と別れている。これを無視して前に行けるわけがない。
まあいいわ。この後にイベントがあるのだから。朝から散歩して場所も把握している。何度もゲームで通った場所だから大丈夫。これで明日からわたしも別人になれる。主人公なのだから少しくらいいじめられても直ぐに助けてもらえる。
ああ、なんて素晴らしいのかしら。最後はわたしもあの舞台の上に立てるのだわ。今は第一王子と第二王子、そして悪役令嬢のリリアーナだけしか立つことを許されていない舞台の上にわたしが立つ日が……。
「クララ様はリリアーナ様に似てるわね」
誰かがリリアーナ様の名前を出したのでみんなが振り向いた。クララというのは子爵家の娘だ。男爵家であるわたしより身分は上になるが貧乏だとみんなが知ってるので後ろの方に控えているのだろう。かわいそうに、リリアーナ様に似ていると言われて戸惑っているようだ。子爵家の娘が公爵令嬢と似ていると言われて素直に喜べるはずがない。恐れ多い、そう思うのが普通だ。わたしみたいに主人公な訳ではないクララは赤くなって俯いている。
でも言われてみれば少し似ているかしら。縦ロールじゃないからあれだけど、よく見ようとしたが逃げられてしまった。まあリリアーナ様と子爵家の令嬢が似てるはずがない。
こんなことしてるよりわたしも次の準備に急がなくては。わたしも知り合いに気づかれないようにそっと席を外した。
第二王子とのイベントのために……。
0
あなたにおすすめの小説
婚約者に毒を飲まされた私から【毒を分解しました】と聞こえてきました。え?
こん
恋愛
成人パーティーに参加した私は言われのない罪で婚約者に問い詰められ、遂には毒殺をしようとしたと疑われる。
「あくまでシラを切るつもりだな。だが、これもお前がこれを飲めばわかる話だ。これを飲め!」
そう言って婚約者は毒の入ったグラスを渡す。渡された私は躊躇なくグラスを一気に煽る。味は普通だ。しかし、飲んでから30秒経ったあたりで苦しくなり初め、もう無理かも知れないと思った時だった。
【毒を検知しました】
「え?」
私から感情のない声がし、しまいには毒を分解してしまった。私が驚いている所に友達の魔法使いが駆けつける。
※なろう様で掲載した作品を少し変えたものです
逆ハーレムエンド? 現実を見て下さいませ
朝霞 花純@電子書籍発売中
恋愛
エリザベート・ラガルド公爵令嬢は溜息を吐く。
理由はとある男爵令嬢による逆ハーレム。
逆ハーレムのメンバーは彼女の婚約者のアレックス王太子殿下とその側近一同だ。
エリザベートは男爵令嬢に注意する為に逆ハーレムの元へ向かう。
悪役令嬢の心変わり
ナナスケ
恋愛
不慮の事故によって20代で命を落としてしまった雨月 夕は乙女ゲーム[聖女の涙]の悪役令嬢に転生してしまっていた。
7歳の誕生日10日前に前世の記憶を取り戻した夕は悪役令嬢、ダリア・クロウリーとして最悪の結末 処刑エンドを回避すべく手始めに婚約者の第2王子との婚約を破棄。
そして、処刑エンドに繋がりそうなルートを回避すべく奮闘する勘違いラブロマンス!
カッコイイ系主人公が男社会と自分に仇なす者たちを斬るっ!
転生悪役令嬢は冒険者になればいいと気が付いた
よーこ
恋愛
物心ついた頃から前世の記憶持ちの悪役令嬢ベルティーア。
国の第一王子との婚約式の時、ここが乙女ゲームの世界だと気が付いた。
自分はメイン攻略対象にくっつく悪役令嬢キャラだった。
はい、詰んだ。
将来は貴族籍を剥奪されて国外追放決定です。
よし、だったら魔法があるこのファンタジーな世界を満喫しよう。
国外に追放されたら冒険者になって生きるぞヒャッホー!
兄様達の愛が止まりません!
桜
恋愛
五歳の時、私と兄は父の兄である叔父に助けられた。
そう、私達の両親がニ歳の時事故で亡くなった途端、親類に屋敷を乗っ取られて、離れに閉じ込められた。
屋敷に勤めてくれていた者達はほぼ全員解雇され、一部残された者が密かに私達を庇ってくれていたのだ。
やがて、領内や屋敷周辺に魔物や魔獣被害が出だし、私と兄、そして唯一の保護をしてくれた侍女のみとなり、死の危険性があると心配した者が叔父に助けを求めてくれた。
無事に保護された私達は、叔父が全力で守るからと連れ出し、養子にしてくれたのだ。
叔父の家には二人の兄がいた。
そこで、私は思い出したんだ。双子の兄が時折話していた不思議な話と、何故か自分に映像に流れて来た不思議な世界を、そして、私は…
逃げたい悪役令嬢と、逃がさない王子
ねむたん
恋愛
セレスティーナ・エヴァンジェリンは今日も王宮の廊下を静かに歩きながら、ちらりと視線を横に流した。白いドレスを揺らし、愛らしく微笑むアリシア・ローゼンベルクの姿を目にするたび、彼女の胸はわずかに弾む。
(その調子よ、アリシア。もっと頑張って! あなたがしっかり王子を誘惑してくれれば、私は自由になれるのだから!)
期待に満ちた瞳で、影からこっそり彼女の奮闘を見守る。今日こそレオナルトがアリシアの魅力に落ちるかもしれない——いや、落ちてほしい。
執着王子の唯一最愛~私を蹴落とそうとするヒロインは王子の異常性を知らない~
犬の下僕
恋愛
公爵令嬢であり第1王子の婚約者でもあるヒロインのジャンヌは学園主催の夜会で突如、婚約者の弟である第二王子に糾弾される。「兄上との婚約を破棄してもらおう」と言われたジャンヌはどうするのか…
ヒロインしか愛さないはずの公爵様が、なぜか悪女の私を手放さない
魚谷
恋愛
伯爵令嬢イザベラは多くの男性と浮名を流す悪女。
そんな彼女に公爵家当主のジークベルトとの縁談が持ち上がった。
ジークベルトと対面した瞬間、前世の記憶がよみがえり、この世界が乙女ゲームであることを自覚する。
イザベラは、主要攻略キャラのジークベルトの裏の顔を知ってしまったがために、冒頭で殺されてしまうモブキャラ。
ゲーム知識を頼りに、どうにか冒頭死を回避したイザベラは最弱魔法と言われる付与魔法と前世の知識を頼りに便利グッズを発明し、離婚にそなえて資金を確保する。
いよいよジークベルトが、乙女ゲームのヒロインと出会う。
離婚を切り出されることを待っていたイザベラだったが、ジークベルトは平然としていて。
「どうして俺がお前以外の女を愛さなければならないんだ?」
予想外の溺愛が始まってしまう!
(世界の平和のためにも)ヒロインに惚れてください、公爵様!!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる