悪役令嬢は双子だった

小鳥遊郁

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悪役令嬢とわたし

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    悪役令嬢とわたし

  わたしは悪役令嬢にいじめられるかわいそうな男爵令嬢。そのことに気づいたのは半年前のことだった。悪役令嬢である第一王子の婚約者の縦ロールを見て思い出したのだ。
   ここは『ユーディット学院~アリスの君へ~』というゲームの中の世界だということに。わたしには前世の記憶があった。でもだからと言って発明品をバンバン作るようなこともこの世界とは違う料理を作ってみんなを驚かせることもできなかった。わたしが作れるような簡単な料理はこの世界でも普通に食卓に並ぶようなものだけだったし、日本という世界で当たり前のようにスマホや電卓、懐中電灯といった発明品は使ってるだけだったわたしが作れるようなものではなかった。
   だから前世の記憶持ちというだけで使えない自分のことが好きではなかった。せめて公爵令嬢に生まれていればとか無い物ねだりばかりしていた。
   でもわたしは主役だった。わたしを中心にこの世界は回っている。逆ハーだって思いのままなのだ。そしてわたしはあの乙女ゲームを全てクリアしてる。どんなパターンがきても乗り切ってみせるわ。まずは誰から落としてみせようかしら。第一王子の攻略は最後の最後ね。あのキンキラキンの縦ロールの公爵令嬢の跪く姿は最後に見るのが一番楽しいわ。それにしてもあの公爵令嬢にだけは生まれなくて良かったわ。どのパターンでも破滅しか待ってないなんてありえないほどの不幸体質。わたしとかかわっていなくても何故か公爵家はいつも取り潰されたり、令嬢だけが処刑されたりしてた。
   ああ、早く入学式にならないかしら。まずは第二王子のエリオット様よ。ハンカチを拾ってもらうイベントなんだけどどのハンカチが良いか迷ってしまうわ。ふふふ、今はあなたの方が幸せいっぱいだろうけど直ぐにわたしの天下になるのよ。


   そしてユーディット学院入学の日。
   男爵令嬢のわたしは第一王子や公爵令嬢のそばに行けるはずもなく、今日は一番後ろから眺めているだけだ。わたしのターゲットであるエリオット様も話すこともできないほど遠い。でもこの学院は建前では身分の差は関係ないとされている。平民も獣人も通っている。でもこの様子だと全く関係ないわけではなさそう。だって入学式だというのに身分の高い人はやっぱり前の方に集まって身分の低い人は後ろの方に自然と別れている。これを無視して前に行けるわけがない。
   まあいいわ。この後にイベントがあるのだから。朝から散歩して場所も把握している。何度もゲームで通った場所だから大丈夫。これで明日からわたしも別人になれる。主人公なのだから少しくらいいじめられても直ぐに助けてもらえる。
  ああ、なんて素晴らしいのかしら。最後はわたしもあの舞台の上に立てるのだわ。今は第一王子と第二王子、そして悪役令嬢のリリアーナだけしか立つことを許されていない舞台の上にわたしが立つ日が……。

「クララ様はリリアーナ様に似てるわね」

  誰かがリリアーナ様の名前を出したのでみんなが振り向いた。クララというのは子爵家の娘だ。男爵家であるわたしより身分は上になるが貧乏だとみんなが知ってるので後ろの方に控えているのだろう。かわいそうに、リリアーナ様に似ていると言われて戸惑っているようだ。子爵家の娘が公爵令嬢と似ていると言われて素直に喜べるはずがない。恐れ多い、そう思うのが普通だ。わたしみたいに主人公な訳ではないクララは赤くなって俯いている。
   でも言われてみれば少し似ているかしら。縦ロールじゃないからあれだけど、よく見ようとしたが逃げられてしまった。まあリリアーナ様と子爵家の令嬢が似てるはずがない。
   こんなことしてるよりわたしも次の準備に急がなくては。わたしも知り合いに気づかれないようにそっと席を外した。
   第二王子とのイベントのために……。




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