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神様からある程度の話が聞けた理玖は「それでは」と言って帰ろうとしたが、きた方法がわからないのに帰れるわけがない。それにあることを思い出して足を止めた。
「そうでした。ギフトの異世界言語はわかるのですが、食パン(異世界の食べ物)とは何のことですか?」
「ん? 日本の食べ物だが? 確か君が毎日食べていたものだったはずだ」
「それはわかります。ただ使い方がわからないですよ。食パンを何に使うのです?」
ギフトというのはすごいもののはずだ。二つあるうちの一つである異世界言語のおかげで、一から文字を習う必要がないのだから。だから食パンにもきっとすごいことが隠されているのでは、と思った理玖は次の神様の返答に頭を抱えたくなった。
「はっははは。食べること以外に使い道などあるわけがなかろう。異世界に来て一番困ったのは食べ物だったと言う統計がある。鬱になるものもいるほどだ。そこで私が考えたのが異世界の食べ物を一つだけギフトであげることだ。君の場合は食パン率が高かったので食パンが選ばれたようだ。この世界の主食もパンだが食パンはどこにも売っていないようだからそれにしておいたよ。願えばいつでも食パンがその手に現れるろう」
確かにこの一週間、食パン率が高かったかもしれない。だがそれは家に異常に食パンがあったから仕方なく食べていただけで、特別に好きなわけではない。何故食パンが異常にあったかは、理玖の母のにわか節約のせいだった。おそらくスーパーで大安売りをしていたのだろう。食べきれないほどの食パンが冷凍庫にも冷蔵庫にも突っ込まれていた。食パンがなくなるまでは米を炊かないと言うので、処理していただけの話だ。
「ちなみに須賀さんのギフトは?」
「米だ。この世界では珍しいので、ものすごく感謝されたよ」
そりゃそうだろうよと理玖は苦々しく思った。パンが主食のこの世界で小麦は比較的手に入れやすい。食パンだって作ろうと思えば作れるだろう。何が悲しくてギフトが食パンなのか…。
「なんか須賀さんに早く会いたくなってきました」
少なくとも彼女に会えば、白いご飯を手に入れる事ができるだろう。食パンと交換してくれるだろうか、少し不安になる理玖だった。
「ふむふむ。少しはやる気が出たようだな。それでは本神殿で待っておるから、頑張るんだぞ。多少の怪我はその時に治せるが、お主は女の身体だから十分に気を付けるように。無茶はするではないぞ」
神様の言葉が気になった。
「もし死んだりしたら、この身体はどうなるのですか?」
「お主が死ねば、身体も消滅する。須賀花奈は二度と自分の身体を取り戻すことはできなくなる」
「それって須賀さんが亡くなることがあれば、俺の身体もなくなるってことですか?」
「その通りだ。人の命は儚い。十分に気を付けることだ。特に甘言には注意が必要だ。優しい顔に騙されないことだ」
「甘言ですか?」
「お主は人が良さそうだからな。優しくされてついていったら、売春宿に売られていたということもよくある。日本とは違うことを肝に銘じておくことだ」
「ば、売春宿ですか?」
「まだ売春宿なら良い方だ。奴隷にされたり、そのまま殺されることだってある。そういう意味では男の身体の方が厳しいかもしれんな」
頭から水をかけられたような気分だ。どこかでゲームのように思っていたのかもしれない。一度死んで生き返ったからといって、何度でも生き返れるはずがない。
それに女の身体になったこともよくわかっていなかった。別の意味で危険にさらされていると言うことだ。この身体は自分だけの身体ではないということか。そして自分の身体を持っている彼女にも気をつけてもらわなければならないようだ。
理玖は自分の甘さに気づかされた。早めに気づくことができて良かった。こんな甘い考えのままでいれば、あっという間に死んでしまう。
「ご忠告肝に命じます」
「ふむ。お主は剣の腕はあるようだが、まだ生き物を殺したことはなかろうからな。甘い考えはさっさと捨てることだ」
理玖は冒険者になると簡単に思っていたが、本当に剣で生き物を倒せるのかはやってみないとわからない。悩んでいる間にやられてしまうと忠告されたわけだ。
理玖は神様に一礼した。
すると先ほどいた場所に立っていた。誰もいない。
理玖は誰もみていないのにもう一度一礼してから踵を返した。
「そうでした。ギフトの異世界言語はわかるのですが、食パン(異世界の食べ物)とは何のことですか?」
「ん? 日本の食べ物だが? 確か君が毎日食べていたものだったはずだ」
「それはわかります。ただ使い方がわからないですよ。食パンを何に使うのです?」
ギフトというのはすごいもののはずだ。二つあるうちの一つである異世界言語のおかげで、一から文字を習う必要がないのだから。だから食パンにもきっとすごいことが隠されているのでは、と思った理玖は次の神様の返答に頭を抱えたくなった。
「はっははは。食べること以外に使い道などあるわけがなかろう。異世界に来て一番困ったのは食べ物だったと言う統計がある。鬱になるものもいるほどだ。そこで私が考えたのが異世界の食べ物を一つだけギフトであげることだ。君の場合は食パン率が高かったので食パンが選ばれたようだ。この世界の主食もパンだが食パンはどこにも売っていないようだからそれにしておいたよ。願えばいつでも食パンがその手に現れるろう」
確かにこの一週間、食パン率が高かったかもしれない。だがそれは家に異常に食パンがあったから仕方なく食べていただけで、特別に好きなわけではない。何故食パンが異常にあったかは、理玖の母のにわか節約のせいだった。おそらくスーパーで大安売りをしていたのだろう。食べきれないほどの食パンが冷凍庫にも冷蔵庫にも突っ込まれていた。食パンがなくなるまでは米を炊かないと言うので、処理していただけの話だ。
「ちなみに須賀さんのギフトは?」
「米だ。この世界では珍しいので、ものすごく感謝されたよ」
そりゃそうだろうよと理玖は苦々しく思った。パンが主食のこの世界で小麦は比較的手に入れやすい。食パンだって作ろうと思えば作れるだろう。何が悲しくてギフトが食パンなのか…。
「なんか須賀さんに早く会いたくなってきました」
少なくとも彼女に会えば、白いご飯を手に入れる事ができるだろう。食パンと交換してくれるだろうか、少し不安になる理玖だった。
「ふむふむ。少しはやる気が出たようだな。それでは本神殿で待っておるから、頑張るんだぞ。多少の怪我はその時に治せるが、お主は女の身体だから十分に気を付けるように。無茶はするではないぞ」
神様の言葉が気になった。
「もし死んだりしたら、この身体はどうなるのですか?」
「お主が死ねば、身体も消滅する。須賀花奈は二度と自分の身体を取り戻すことはできなくなる」
「それって須賀さんが亡くなることがあれば、俺の身体もなくなるってことですか?」
「その通りだ。人の命は儚い。十分に気を付けることだ。特に甘言には注意が必要だ。優しい顔に騙されないことだ」
「甘言ですか?」
「お主は人が良さそうだからな。優しくされてついていったら、売春宿に売られていたということもよくある。日本とは違うことを肝に銘じておくことだ」
「ば、売春宿ですか?」
「まだ売春宿なら良い方だ。奴隷にされたり、そのまま殺されることだってある。そういう意味では男の身体の方が厳しいかもしれんな」
頭から水をかけられたような気分だ。どこかでゲームのように思っていたのかもしれない。一度死んで生き返ったからといって、何度でも生き返れるはずがない。
それに女の身体になったこともよくわかっていなかった。別の意味で危険にさらされていると言うことだ。この身体は自分だけの身体ではないということか。そして自分の身体を持っている彼女にも気をつけてもらわなければならないようだ。
理玖は自分の甘さに気づかされた。早めに気づくことができて良かった。こんな甘い考えのままでいれば、あっという間に死んでしまう。
「ご忠告肝に命じます」
「ふむ。お主は剣の腕はあるようだが、まだ生き物を殺したことはなかろうからな。甘い考えはさっさと捨てることだ」
理玖は冒険者になると簡単に思っていたが、本当に剣で生き物を倒せるのかはやってみないとわからない。悩んでいる間にやられてしまうと忠告されたわけだ。
理玖は神様に一礼した。
すると先ほどいた場所に立っていた。誰もいない。
理玖は誰もみていないのにもう一度一礼してから踵を返した。
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