相棒はかぶと虫

文月 青

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12月 3

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とりあえずイベントでは「祖父ちゃんの野菜を使って、お酒に合う何かしらを俺が作る」ということだけは決定した。もちろんメンバーは当日全員協力体制を組む。リーダーは当然酒屋のおじさん。商店街本部とのやり取りや会場設営等もお任せ。野菜の準備は全て祖父ちゃんで、他の食材やその都度出てくるであろう細かい問題は兄さんの担当。調理の手伝いはかぶととしおり祖母ちゃんがやってくれることになった。

「目出し帽も話題に上りそうだが、サンタクロースの格好の方がよくね?」

兄さんは当日の俺の出で立ちを口にする。

「確かに。お巡りさんを呼ばれたら大変だ」

酒屋のおじさんは以前の「祖父ちゃん誘拐事件」を思い出して笑っている。そういえば再会したときに、かぶとも「仏壇泥棒」とか言ってたな。

せっかくだから全員で変装するのも悪くないと纏まったところで、今日はお開きにすることになった。

「遠くから来てくれてありがとう、しおり祖母ちゃん」

まだ午後三時くらいだけれど、タクシーで駅まで行くというかぶととしおり祖母ちゃんに玄関先で頭を下げる。一緒に見送りに出た祖父ちゃんは、

「風邪ひくなよ。高齢なんだから」

憎まれ口をきいて「お互いさまなんださくそじじい」と逆襲されていた。

「葉ちゃんに会えてよかったんださ」

うちの祖母ちゃんのお葬式のときの俺と、法事の際に一切姿を現さなかったその後の俺を、ずっと気にかけていてくれたしおり祖母ちゃんは、夏休み中にかぶとがうちを訪ねるときも、こっそり協力していたのだとか。かぶとが俺のことを「蛹」と表現していたのも、うちの祖母ちゃんから話を聞いていたしおり祖母ちゃんが、孫に伝えていたからなのだそうだ。

「さおちゃんは心配こそしていたけれど、葉ちゃんは大丈夫だって言ってたんださ。その通りだったさ」

そう言って笑顔でタクシーに乗り込むしおり祖母ちゃん。幼馴染の孫の元気な姿を見るためだけに、本当にわざわざありがとう。俺はもう一度しっかり頭を下げた。 

「浮気しないでよ」

その俺の耳元にかぶとが小声で囁く。

「するか」

呆れて口を尖らせる。というか冬眠中にそんなもんできるか。いやそれ以前にかぶとと俺の関係は何なんだろう。浮気を心配するような間柄じゃない筈だけど。率直にその事実をぶつけたら、かぶとはきょとんとして答えた。

「私と葉は許嫁でしょ?」

「は?」

想像もしていなかった話に目が点になる。狐につままれたような状態で二人を見送り、俺は隣りで笑い始めている祖父ちゃんに訊ねる。

「どういうこと?」

「ばーさん同士の口約束だ」

いつから? 聞いてないよ? しかも最悪な形で振られたけど俺元カノいたよ? それでも既に浮気者?




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