宵闇王と精霊の竜刀

火の無い灰

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2章【逃避行(と言えるのか…?)】

唯1人の為に、又は、崇めるものに

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「白亜の街」セントラルシティに不吉な通知が張り出されてから数日が経った。
城壁上、見張り役の兵士たちがいる場所。その南東方面、丁度砦がある方角である。
――――――――「…なあ、なんか聞こえてこないか?」
「ん?………………………あっ!?」
魔法アイテムの双眼鏡を通して、砦の方を見ていた兵士が目を見開いた。
「どうした?なんかあったか?」
「…………………おい、これ使って砦の方見てみろ」
双眼鏡を渡された兵士が、同僚に言われたとおりに砦の方を見る。
「はあ!?やっぱこれ緊急事態じゃんか!!総指揮官に知らせにいくぞ!」
彼らが慌てている原因は、砦の変化にあった。
――――――――――ついに、陰謀と欲望渦巻く戦闘の火蓋が切られた。

セントラルシティ、守備隊の兵舎の、軍議室。
「そうか、ついに来たか」
「はい。見張り役の兵士が、間違いないと言っています」
「とにかく、間に合わないかもしれないが、王都に通達しろ。あと、街内にいる冒険者に緊急要請。住民たちを、避難させろ」
「はっ。了解いたしました!」

ドドドド…という地響きと、大気を震わせる鬨の声。
既に防御陣を布いている守備隊の面々には、緊張がみなぎっている。無理もない、他国が盟約を破りにきたこんなことは、初めてだから。
その隣に集まるのは、幸か不幸か、街に居合わせた冒険者たち。彼らも、対人戦、それも軍隊相手の戦闘は経験がない。

――――そして、青い軍勢と白い軍勢が衝突する。
一瞬一瞬ごとに、叫び声が交わり、金属同士が打ち鳴らされ、魔法の着弾する爆発音が響き、その度に、死者、半死者が地に叩きつけられる。
白い軍勢―守備隊は、なかなか奮闘しているが、いかんせん兵力差が開きすぎている。
数は力に勝るともいう。気づけば、生き残っている人数は、戦闘前の何割になっただろう?

――…………数千の守備隊&冒険者と1万余りはいそうな青い軍の前に躍り出る人影。
纏う服の端が、千切れて黒い花びらの様に空に舞い、抜き放った刀は、陽の光を反射して芸術品のような輝きを放つ。なによりも、まだ10代ぐらいの青みがかった銀髪の少年だった。
「あの少年、冒険者、なのか……?」
「おい、あぶな……          
                 ザシュッ!!!
言い切られる前に、凄まじい斬撃音が鳴り響く。それは、少年が持つ刀が、無造作に振るわれた音。
たった一太刀、一太刀振るわれただけで、まるで数百人の魔導士が同時に上位魔法を行使した時のように、絶大な威力を発揮した。全体の2割近い敵兵士が、丸ごと吹き飛ぶ。
その強烈な結果に、味方も敵も、呆然としている。
するとその少年が振り向き、芯の通ったよく響く声で叫んだ。
「なにぼーっとしてるんですか!今がチャンスですよ!!」
その声で我に返った守備軍が、慌てて敵へと攻めかかり、一瞬遅れて同じく我に返った敵が、半ば反射的に応戦にかかった。

そこからは、凄まじい逆転劇である。
押されに押され、壊滅寸前だったはずの守備連合が、見事に戦況をひっくり返していく。
何よりも際立っていたのが、青がかった銀髪の少年―レイの戦いぶりである。
「だーかーら、お前たちの思い通りになんぞさせてたまるかってな!!」
竜刀が、縦横無尽に高速で大気を切り裂き、変幻自在の銀の軌跡を描き出す。
その度に銀の残像が、多量の赤い血で彩られていく。
戦う者たちの聴覚が、魔法の着弾音や金属音で飽和し、いつしか、天からは雨が降り注ぐ。
そのささやかに降り注ぐ霧雨が、戦いの狂熱を冷ましていくかの様に、戦いはだんだんと終わりへ向かって収束していく。

数十分後、その戦場に立っていたのは、生き残った守備隊連合だけだった。
残った僅かな敵は、全て逃げ去り、緊急事態は、ようやく終わった。
「勝った…のか…?」
さて誰が呟いたのだろうか。その呟きがまるできっかけだったかのように。
 歓声が、爆発した。
肩を組み、はしゃぐ者、興奮して言動がおかしくなっている者、皆、生き残ったことを喜び、そして死んでいった者を安心させるために、全員が、しばし喜び合った。

しかし、その明るい喧騒から離れたところで、昏い何かが蠢いていた。
その「何か」は、喧騒の中でひっぱりだこになっているレイの方へ暫く視線を向けた後、大気に溶けるようにして消えた。
その時、その「何か」に気づいた者はいない。但し、「何か」が、いつかどこかで重要な位置にいるのかもしれない、ということだけはいえよう…
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