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本格的に

この人は

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 「傘澄 蓮槇かさすみ れまきは女優だ。今の日本を代表すると言っても過言じゃないな。」
 「そんなすごい人だったんですね。」
 「・・・蓮槇はお前達と同世代だ。しかも同じ出身地だ。知り合いかもな。」
 「・・・傘澄 蓮槇は芸名かもしれませんね。名前が少し変ですし・・・かさすみれまき。」
 スマホのメモ帳に平仮名で名前を打つ。
 『さかすみれまき』
 「・・・すか・・・・かれ・・・かまさき すみれ・・・・!え、」
 自分で言った言葉に驚いた。ぽつりと呟いた言葉はだんだんと確信していく。
 「違うはずですよね・・?」
 信じたくない志綾しあを横に荼泉といはタブレット見て「本人かもな」と呟いた。
 「ん?やっぱり知り合いだった?」
 志綾は荼泉からタブレットを貸してもらいながられいの質問に答える。
 「分かりませんが、知り合いに名前が似ていて」
 「似ているんじゃない知り合い本人だ。」
 あまり喋っていない荼泉が言う。
 「・・・・」
 「志綾・・。」
 タブレットを見る志綾は黙ってしまう。
 「志綾、会うことはないから・・大丈夫だ。」
 「分かっていますし。もう覚えていないでしょう。」
 「傘澄 蓮槇と何があったんだ?」
 「・・・・いい思い出あまりないだけですよ。」
 志綾は少し笑みを溢して呟いた。黧はこれ以上追及しないことにし「電話してくる」と言って部屋を出た。
 
 黧は外に出て電話をする。
 「・・・どうして・・・ここに連れて来た?」
 『・・・・・黧兄から見て志綾はどうだった?」
 「世間知らず。だが、薫と茅鶴の子らしい態度と言葉使いだったよ。そいえば何か追い詰めてるみたいだったけど・・傘澄 蓮槇となにかあたったみたい。」
 『志綾は・・色々あるからな。俺達、親じゃ力になれないのもまた、事実で・・寂しくなっちゃう。』
 電話越しの薫からは寂しそうな声が聞こえる。黧は薫に「また、電話する。今日、ここに泊まらせるよ。」と言って電話を切った。
 タバコを吸い始める。
 「薫も酷いことするねぇ~」
 はぁ~あと息を吐いて煙を出す。
 「まぁ、可愛い弟の頼みだし、いっちょやりますか。」

 そう言って家の中に戻った。
 「あ、」
 「早かったですね。」
 家に戻ると知らない人が家の中にいた。
 「あ、お久しぶりです。黧様。」
 「使いの人ッ。」
 後退りをする。家にいた使いはお構いなしに黧に近づく。
 「ご当主様がお呼びですよ。」
 「俺は家とは縁を切ったんだから関係ないだろう!」
 「ですがお呼びなのは変わりありませんので・・明日、帰って来ませんか?」
 「近い!近い!」
 「近いですか?」
 「離れろ。」
 「・・・・・」
 「・・お、おい。」
 「・・・・・」
 「ねぇ、黧。私の言うこと聞けないの?」
 「ヒッ」
 二人の雰囲気が変わる。
 「黧。私の言うこと、聞けないの?聞けないの!?」
 使いが声を上げる。何か違和感を感じて志綾は二人の間に入った。
 「あの!あなたは使いの人ではないのですか?」
 「使いのものですよ。」
 「なら、言葉遣いや、態度。縁を切ったとはいえ元要家の者にその態度いいんでしょうか?」
 「・・・・・うるさぁ。ねぇ、今から黧を躾けないといけないから出ていってくれないかな?」
 「出ていきません!黧様は嫌がっています。手を離しなさい!」
 すると使いは志綾を突き飛ばす。茶泉はすぐさま志綾の前に立って使いを睨む。
 「黧様。この人は誰ですか?」
 起き上がりながら怯えている黧に聞く。
 「この人は」
 叫ぶように話し始めた。
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