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向き合う時

違和感

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 真泉まい兄さんと志飛しとの会話に違和感がある。少しだけだけど・・・どこかおかしい。

 「荼泉には無理だよ。荼泉には。」

 なんで、そんなキッパリ・・・

 「うん。荼泉はしなくていい。出来ないよ。」

 真泉兄さんまで・・・

 「「荼泉は、出来ない。荼泉には一生。僕達と同じ土俵には立てないよ。」」

 真泉兄さんと志飛が息を合わせて言う。

 そうだ。おかしいのはこの会話自体だ。

 志飛は真泉兄さんに志綾が志飛だって言ってない、真泉兄さんにとって志飛は死んだことになってるはず。志綾が『僕』と使うことに対して変と思わないと・・・どう言うことだ?

 「2人は・・・最初から知っていた?」
 「なにが?」
 志飛の方を見て話すと期待をした目で見てくる。
 「こうなること。」
 「・・・知らなかったよ。」
 志飛はわざとらしく視線を逸らす。
 「わざとらしいな。」
 「はぁ。わざとかもしれないが、お二人の会話に違和感を覚えた。」
 「違和感?」
 気づいているのに気づいていないふりをする。
 「真泉兄さんはなんで志飛の『僕』をおかしいって思わないの?」
 「・・・」
 真泉兄さんは黙る。真泉兄さんの視線の先には志飛がいる。
 「じゃあ、志飛は真泉兄さんの中では死んだことになってるのに、俺がさっきから志飛って言ってるの、気づいてるよね?気づいてないとは言わせないが」
 うぐっと真泉兄さんは顔を引き攣らせた。
 「飛綾とあ様・・・もういいんじゃ」
 「ちっ」
 志飛は舌打ちをした。
 「荼泉。僕は全部知ってた。」
 真泉兄さんが俺の目を見て言う。
 「いつ?いつから知ってた?」
 「・・・でも、知ったのは怪我する前、家を出たあとだけど」
 「どう言う・・・」
 「荼泉が当主から依頼を貰ったことを知った時。僕は荼泉が変わったんじゃないかなって思って、言い出さなかった。でも荼泉は何も変わってない。変わる努力をしてない。真泉が荼泉の尻拭いに行くのを見かけた。だから僕は正体をばらして、荼泉のことも言った。」
 「暗かったし、明かりのない場所で話してたからあの時は本当に志綾様なのか疑ってた。でも、僕を助けに来てくれた時、確信した。あれは志綾様なんだと。」
 「知らないふりを考えたのは志飛?」
 「それはどうかな。あとは2人で話して、僕は帰る。」
 志飛が言う。俺は引き止めたかったが無理だと分かった。



 志飛が帰った数分後、病室に当主様が来た。











 病室を後にした志飛はスマホを取り出した。
 一個未読メールがあった。
 『08月05日00時00
     〇〇県〇〇市〇〇町×××××に来るように
            かげ年髄ねずい
と来ていた。
 「・・・嫌だな・・・」
 
 一言そう呟いてから
 『少し遅れるかもしれないが分かった』
とうち、送信した。


 (そろそろ・・・色んな人と向き合って行かないと)
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