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向き合う時

私は(3)

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 志飛しとこおを膝の上に乗せる。
 「志綾しあちゃん・・・この子って」
 物槨令ものかくれが近くに寄ってきて聞く。
 「水面みなも氷さんです。」 
 いつの間にか志綾に戻っていた。
 「水面・・・」
 「同じ修学旅行班の水面ついさんの双子のお兄さんです。同じA組ですが・・・知りませんか?」
 「うん。」
 「しょうがないですよ。氷さんは影を消してひっそりと学校生活を送っていましたから。」
 「・・・氷だよね?こおりじゃなくて」
 「そうです。こ・おです。」
 「水面家は難しいね。水みたいに、私最初すいって呼んじゃった。」 
 「そうですね・・・でも、私はしずくさんの苗字の方が珍しいと思いますよ。なかなら、物槨令っていう方はいないですし・・・」
 たわいの無い話をする。その瞬間が志綾にとって唯一ただの子供でいられる瞬間。
 (あぁ、今、私はと喋っているただの学生なんですね・・・)

 「そうかなぁ?」
 「そうですよ。」
 笑い合う。物槨令と。
 
 「志綾ちゃん・・・」
 
 「なんですか?」
 
 「うんん。なんでもない。呼んでみただけ。氷起きないね。」
 
 「・・・もう少しで起きると思いますよ。」


 「・・・志綾ちゃん。」
 
 「なんですか?」

 氷見ているから、物槨令の方に視線がいかない。

 「志綾ちゃん・・・」

 「どうしたんで・・・すか?雫さん!?」

 やっと顔を上げた志綾の目に映ったのは涙を流す物槨令。

 「

 そんな質問がまさか物槨令から来るとは思わなかった。

 「な、何をいっているんですか?」

 「・・・志綾ちゃん答えて、男になりたいの?女になりたいの?」

 「どうしたんですか?そんなこと、いま関係ないじゃないですか」

 「関係あるよ。これから私達が友達でいるために必要なこと。」
 
 「・・・雫さん・・・冗談ですよね?」

 「冗談で、志綾ちゃんの性別を明かそうとする?」

 「雫さんは知っていますよね?私が本当は・・・違うと」

 「知ってる。でも、志綾ちゃんの気持ちはわからない。志綾ちゃんはどうしたいの?」

 物槨令はどこか怯えているかのように聞く。

 「志綾ちゃん。答えて。」
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