デジタル・ワルキューレ

夢月桜

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第一章

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 私は扉から現れた人に驚いた。
 黒い髪の毛はまるで絹糸のようにつややかに輝いており、光の反射で紫のようにも見える。
 肌は色白で透明感があり、陶器のようだ。
 瞳も髪の毛と同様に光の反射で時々紫色のようにも見える。
 一度テレビで見た希少な宝石…紫色スピネル、あんな感じだ。
 声は中性的で女性とも男性とも取れる声だけど、それさえもこの人の美しさを引き立てるものだと思った。
 すべてが現実離れしたような美しさだった。
 でもどこか、幽霊少女とも雰囲気が似ているような…気のせいだろうか?

「あれ?キミどうしたの、ぼーっとして…」
『この子はあなたに見惚れてたのよ』
「へっ?!」

 幽霊少女が突然とんでもないことをいうので私は声が裏返ってしまった。
 まあ、内心めちゃくちゃほめてたので図星っちゃ図星なんだけど…。

「へぇ…そうなんだ。ありがとね?」
「逆にずっと見ててすみません…」
「いいよ、別に。こういうことには慣れてるから」

 と紫黒髪の人は私に微笑みかける。

「お前…雅遼がりょう雅遼御来がりょうみくるだろ?生きていたのか!」

 と穂村さんは紫黒髪の人を見て驚く。
 そしてその顔からは安堵も読み取れた。
 しかし、雅遼と呼ばれた紫黒髪の人は一瞬考えた後「はて?」とでも言いたげな顔だ。

「俺だよ穂村炎真!小さいころ、学校を休みがちだったお前んちに友達と忍び込んでさ…!」

 どうやら二人は知り合いらしく、穂村さんは昔話をする。
 が、紫黒髪の人は戸惑いを見せる。

「穂村…?確かに学校は休みがちだったけど…えっと…どこかで会ったことがあるのかな?でもごめんね、人違いだと思うよ。ぼくは雅遼とかいう名前じゃない」

 と穂村さんに申し訳なさそうに言った。

「僕の名前は御神楽風雅みかぐらふうが。よろしく…っていえばいいのかな?」

 御神楽さんは穂村さんに握手を求めようとしたが、彼は御神楽さんの手を握ることはなかった。

「あらあら…。気難しい方ですわね…。えー…わたくし、桜宮アリスと申します。お隣にいるのは先ほどお友達になりました澄本奏波さんですわ。どうぞよしなに」

 桜宮さんが私のことを紹介してくれたので「どうも…」とあいさつをする。

『とりあえず、あなたたちお互いの名前を知ったことだし、私のことについても話させてもらうわ』

 そういえばずっと幽霊少女と心の中で言っていたけど…。
 目の前の少女は幽霊じゃなくてAIなんだよね。
 それにこの姿をした少女を助けてほしいって言ってたし、幽霊少女って言い方だとまるであの姿の彼女が死んでいるような言い方になってしまう。
 それはとても不適切だ。

『ワーツリ内で都市伝説となっている幽霊少女の正体は私』
「まあそれは見たらわかる…かな」

 御神楽さんは苦笑いをする。

『私のことはそうね…ホロウとでも呼んでちょうだい。意味は虚ろ。助けてほしい少女の姿を借りたAIよ』

 
 


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