ラスト・バスティオン伝説 ~最後の勇者と最後の砦~

Tea

文字の大きさ
8 / 35
第一章 初心者冒険者編

3話 スライムの森

しおりを挟む
 シルト、ロゼ、リヒトの三人は冒険者ギルドに正式加入するための試験として、スライム五体の討伐が課されることとなった。
 試験を受けるにあたり、受付のお姉さんからスライムが多く生息するというスライムの森の情報を教えてもらった三人は、さっそくその場所に向かうことにしたようだ。
 冒険者ギルドを出る際に、受付のお姉さんがアンファング周辺の地図をプレゼントしてくれた。
 その地図にはスライムの森の位置なども載っている。
 お姉さん曰く、

「こんなに親切なのは最初だけだからね! 試験頑張ってね!」

 とのことだった。

 スライムの森に主に生息する魔物は、森の名前通りスライムらしい。
 なんとも安易なネーミングだが、それくらい分かりやすい方が良いのだろう。
 しかしスライムの森とはいえ、魔物というのは特異な生体を持っているため、まだまだ情報が解明されておらず、例えばオークのような強い個体が目撃されることも稀にあるという。
 このことから言えるのは、冒険者とは常に命の危険と隣り合わせということだ。
 初心者向けの場所だからといって侮っていれば痛い目を見ることになるのである。

 シルト、ロゼ、リヒトはスライムの森の目の前に立って話しをしている。

「やっと森に着いた~。以外と遠かったな」
「本当だよね。流石にちょっと疲れたよ」
「ロゼは大丈夫か?」
「ええ大丈夫よ。少し疲れてるけどね」

 お互いの体調を確認し合っているようだ。
 冒険者ならばパーティーメンバーの体調管理は大事になってくる。
 一人の体調不良がパーティー全滅を招くかもしれないからだ。
 ただ、シルトたちはそれが自然とできているのでパーティーとしてとても良いことだろう。

 アンファングの街からスライムの森までは約半日といった距離にある。
 シルトたちが冒険者ギルドを出たのが昼過ぎだったため、すでに辺りは夕暮れに包まれており、そろそろ夜がやって来るころだ。

「夜に森をうろつくのは危険だよな」
「そうね。一旦ここで野営してスライムを倒すのは明日にしましょう」
「そのほうが確実だしそうしよう!」

 今夜は野営して明日の朝から行動を開始することで決定したようだ。
 妥当な判断だろう。

 三人が野営の準備を始めたところで、付近の草陰からガサガサと何かが動く音がした。

「何かいるぞ」

 三人は辺りに意識を集中させて警戒を強める。
 魔物だろうか。
 相変わらずガサガサと葉擦れの音が聞こえている。
 そして、

『ピキィ』

 と鳴き声を上げて森の入り口方向から一匹のスライムが飛び出してきた。
 プルプルとしたオーソドックスなタイプのスライムだ。

 スライムの姿を確認したシルトは、

「向こうからやってきたか! これは放っとくわけにもいかんよな!」

 そう言うや否や槍を手に掴み、スライムに向かって駆け出したのだ。
 槍を持った人間が近づいてくることに身の危険を感じたのか、スライムは森の奥へと飛び跳ねていく。
 スライムの逃げ足は意外に早く、すでに遠くの方にいる。

「待てー! 逃げんなー!」

 とシルトは叫びながら、そのスライムを追って森に入っていってしまったのだ。
 夜の森は危ないと先ほど話していたにも関わらずである。

「シルト兄! 一人で行ったら危ないよ!」
「さっき夜の森は危ないって話したばっかりでしょ! 怪我したらどうするのよ!」

 二人の呼びかけはシルトには届かなかったようだ。

「もう! 行くわよ、リヒト!」
「うん!」

 そんなシルトを放っておくわけにもいかず、ロゼとリヒトもシルトのことを追って森に入ることを決断したようである。

 三人が森に入ってからしばらくの時間が経過し、辺りはすっかり暗闇に包まれたいた。
 ただでさえ光が入りにくい森の中では夜になると真っ暗闇に近いものがある。
 視界はかなり悪く、ロゼとリヒトは完全にシルトを見失ってしまっていた。
 大声を出したり過度に灯りを照らしたりすると魔物や原生生物を呼び寄せてしまう可能性があり、さらに危険が増してしまう。
 そのためシルトの捜索は困難を極めているのだ。
 ただでさえ土地勘のない場所なので、このままだと無事に森から出られるのかさえも怪しい。
 三人揃って遭難という可能性も出てきた。

「シルト兄、どこ~」
「返事しなさいよ~」

 二人は小声で呼んでみるものの、シルトからの返答はもちろん無い。

「私たちはもともと二人旅だった。そういうことにして森を出る? ねえ、リヒト?」

 慣れない森、それも夜中に歩き回ったことと、なかなか見つからないシルトに不安とイライラが募ったのか、ロゼはとんでもないことを口走り始める。

「ダメだよロゼ姉! (うわ~、そうとう怒ってるなロゼ姉。ごめんねシルト兄、今回は守ってあげられないかも……)」

 リヒトはロゼのイライラした様子を見て、無事に見つかったとしてもボコボコにされるであろうシルトの姿を思い描いている。

 その時、

「助けてくれー!」

 と森の奥の方から聞こえてくる情けない声が二人の耳に届いた。
 シルトの声である。

「今のシルト兄の声だ! あっちの方。行こうロゼ姉!」
「ええ!」

 悲鳴が聞こえた方に向かってロゼとリヒトの二人は躊躇することなく駆け出した。
 再会できることに胸を撫でおろしながら。

 何本もの草木を掻き分けて進んで行ったロゼとリヒトは、遠くの方からこちらに向かって走ってくるシルトを確認した。
 かなり慌てている様子だ。

「やって見つけたわよ!」
「大丈夫!? シルト兄!」
「リヒト、ロゼ、助けてくれ! スライムに追われてるんだよ!」

 二人は、かなり焦った表情で猛ダッシュしているシルトと合流することに成功した。
 ただ、どうやらシルトはスライムに追われているらしい。

「スライムくらいならあんた一人でも倒せるでしょ!」

 ロゼは思った通りのことを口にする。 
 ロゼの言うように、シルトの実力はおそらくそこらへんの冒険者に引けをとることはないはずだ。
 いくら目が利かない夜の森だからといってスライム相手に手こずるとは考え難いことだった。

「違うんだって! スライムはスライムでも……」

 バキバキバキと大きな音が森に響き渡る。
 三人のかなり近くからだ。
 そして、大きな影が三人の目の前に姿を現した。

「うそでしょ……」

 木々をなぎ倒して登場したのは巨大なスライムだったのだ。
 ロゼとリヒトの顔はみるみる青ざめていき、

「「グランスライムー!!??」」

 絶叫して、走り出した。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

レベル1の地図士は、世界の裏側を知ってしまった

あめとおと
ファンタジー
異世界に転移した主人公が得たスキルは【地図作成】。 戦闘能力ゼロ、初期レベル1。 冒険者ギルドでは「外れスキル」と笑われ、 新人向けの雑用クエストしか回ってこない。 しかしそのスキルは、 ダンジョンの隠し通路、未踏破エリア、消えた古代文明の痕跡まで“地図に表示する” という、とんでもない能力だった。 生き残るために始めた地味な探索が、 やがて世界の秘密と、国家すら動かす大冒険へ――。 これは、 戦えない主人公が“冒険そのもの”で成り上がる物語。 同作品を「小説家になろう」で先行配信してます。

真祖竜に転生したけど、怠け者の世界最強種とか性に合わないんで、人間のふりして旅に出ます

難波一
ファンタジー
"『第18回ファンタジー小説大賞【奨励賞】受賞!』" ブラック企業勤めのサラリーマン、橘隆也(たちばな・りゅうや)、28歳。 社畜生活に疲れ果て、ある日ついに階段から足を滑らせてあっさりゲームオーバー…… ……と思いきや、目覚めたらなんと、伝説の存在・“真祖竜”として異世界に転生していた!? ところがその竜社会、価値観がヤバすぎた。 「努力は未熟の証、夢は竜の尊厳を損なう」 「強者たるもの怠惰であれ」がスローガンの“七大怠惰戒律”を掲げる、まさかのぐうたら最強種族! 「何それ意味わかんない。強く生まれたからこそ、努力してもっと強くなるのが楽しいんじゃん。」 かくして、生まれながらにして世界最強クラスのポテンシャルを持つ幼竜・アルドラクスは、 竜社会の常識をぶっちぎりで踏み倒し、独学で魔法と技術を学び、人間の姿へと変身。 「世界を見たい。自分の力がどこまで通じるか、試してみたい——」 人間のふりをして旅に出た彼は、貴族の令嬢や竜の少女、巨大な犬といった仲間たちと出会い、 やがて“魔王”と呼ばれる世界級の脅威や、世界の秘密に巻き込まれていくことになる。 ——これは、“怠惰が美徳”な最強種族に生まれてしまった元社畜が、 「自分らしく、全力で生きる」ことを選んだ物語。 世界を知り、仲間と出会い、規格外の強さで冒険と成長を繰り広げる、 最強幼竜の“成り上がり×異端×ほのぼの冒険ファンタジー”開幕! ※小説家になろう様にも掲載しています。

断罪後のモブ令息、誰にも気づかれずに出奔する

まる
ファンタジー
断罪後のモブ令息が誰にも気づかれないよう出奔して幸せを探す話

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

【完結】辺境に飛ばされた子爵令嬢、前世の経営知識で大商会を作ったら王都がひれ伏したし、隣国のハイスペ王子とも結婚できました

いっぺいちゃん
ファンタジー
婚約破棄、そして辺境送り――。 子爵令嬢マリエールの運命は、結婚式直前に無惨にも断ち切られた。 「辺境の館で余生を送れ。もうお前は必要ない」 冷酷に告げた婚約者により、社交界から追放された彼女。 しかし、マリエールには秘密があった。 ――前世の彼女は、一流企業で辣腕を振るった経営コンサルタント。 未開拓の農産物、眠る鉱山資源、誠実で働き者の人々。 「必要ない」と切り捨てられた辺境には、未来を切り拓く力があった。 物流網を整え、作物をブランド化し、やがて「大商会」を設立! 数年で辺境は“商業帝国”と呼ばれるまでに発展していく。 さらに隣国の完璧王子から熱烈な求婚を受け、愛も手に入れるマリエール。 一方で、税収激減に苦しむ王都は彼女に救いを求めて―― 「必要ないとおっしゃったのは、そちらでしょう?」 これは、追放令嬢が“経営知識”で国を動かし、 ざまぁと恋と繁栄を手に入れる逆転サクセスストーリー! ※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

魚夢ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

処理中です...