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第1章
第4話 赤ちゃん転生の顛末 ①
しおりを挟む天界でも、更に高貴な神々が住まう白亜の宮殿の最深部に、創造神ゼノバロが物憂げにたたずんでいた。
その手に持つのは現世の鏡で、地球の日本と言う小国へ自分の神託によって転生させた、心清らかで稀にみる信心深い信者が映っていた。
何度鏡を覗き込んでも状況が変わる訳ではないが、何故こんな手違いが起きてしまったのかと、ゼノバス神は鏡に映る赤子に、心の中で詫びていた。
「ゼノバス様、何を憂いていらっしゃいます」
創造神の名代を務めることも多い、大天使四人の内の一人神託の天使ガブリルがゼノバス神に声を掛ける。
〈ガブリルか、お前に頼んでおけばこのような手違いも起らなかったのだろう〉
ゼノバス神は、信心深い信者の功績を称える褒美の意味合いと、虐げられている神の子を救う目的で、年齢を多少若くして転移させる予定の人間を、手違いで前世の記憶を持たせたまま、赤子転生させてしまったことを告げていた。
「ゼノバス様のなさりようには思えませんが」
〈此度は、現地の女神に神託を授けたのだ。
これでは信者に、褒美どころか神罰でも与えているではないかと、
現世の鏡に映る信者を見ていたのだ〉
「現地の女神…… なんと愚かな。ゼノバス様、此度の件ガブリルにお任せ下さい」
〈ガブリル、そなたに任せる。あの者を助ける手配を頼む〉
大天使ガブリルは短い諾と共に消えていた。次に現れたのはシスター・セイントオレンこと、聖橙の故郷であるクロノワ聖神国を守護する女神の元だった。
「お前がこの世界の女神か、我は大天使ガブリル。
創造神様の命によりこの地に降り立ったものなり」
クロノワ聖神国を守護する女神アルルニルスは、突然の大天使降臨に、女神らしからぬ動揺を露わにしていた。
「大天使様、神託ではなくご降臨とは何事でございましょうか」
「過日お前は創造神様より神託を受け取り、人間一人を異世界へ転生させているな」
「はい、神託に従って私が自ら手配致しました」
女神は大天使が創造神の代理で、過日の転生の結果に満足なされ、お褒めの言葉を授けて下さるものだと思い込み、胸を張りつつ答えていた。
しかしそれが大きな勘違いであり、自身の失敗で創造神が胸を痛めており、大天使からは褒め言葉どころか、叱責を受けることになってしまった。
「ああ、いったいどうすれば、あの者は異世界へ転生させてしまいました。
転生前の肉体も既に無に帰りましたし、どうしたら…… 」
大天使の降臨目的を正しく理解した女神は、動揺し右往左往していたが、大天使の冷たい一言で今度こそ凍り付いたように動きを止めていた。
「女神よ、今更何を言ったところで栓無きこと、さりとて捨て置くことも出来ぬ。
女神よ、彼の者が異世界で十分な力を付けるまで直接的な守護を命じる。
方法は女神に任せるが、定期的に彼の者の様子は見ている、
それを忘れぬよう心に刻め」
一方的な言葉と共に消え去った大天使ガブリルの残像を、怯えるように見つめていた女神アルルニルスは、どうしたらいいのかしらと再び考え込んでしまった。
昔から女神だと云う割に勘違いやドジを繰返し、他の女神や下級神達に落ちこぼれ扱いされてきた過去は、やはり簡単には消えてなくなることはなかったようだ。
あれこれ苦悩していたアルルニルスの元へ、時空を司る神に仕えながら、隣国ヒロカエラ王国の守護女神でもあるレイラルが突然現れた。
「アルルニルス聞いたわよ、またドジってしまったようね」
「レイラル、どうしたらいいのか、もう泣きたくなってきたわ」
「女神ともあろうものがこの位で泣いていてどうするのです」
実はこの女神二人は、同じ神に創り出された双子女神だったのだが、姉になるレイラルは有能だと評判の女神だが、妹女神は可愛いだけのドジ女神と有名ながらも、何故か周りに常に助けられる得な存在でもあった。
「アルルニルス聞いて。ヒロカエラ王国には異世界から召喚されて、
今世紀の魔王を倒した勇者が引退して余生を過ごしているわ。
神の祝福を受けてエルフ以上の長寿を得た存在、彼に助けを求めましょう」
アルルニルスは姉女神レイラルの言葉に従い、隣国の英雄でもある元勇者へ助けを求めるために、二人で隣国へ転移していった。
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