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第1章
第1話 コケて転んだだけなのに~
しおりを挟む『今日~も~1日~あり~がと~俺の~愛は~無限大~♪
ピュラピュラピュララー ハイッ ! ハイッ ! ハイッ !
明日も~オレは~ナイス~ガイ~♪
いつでもお~どこでもお~~♪バッチコイぃ~
ルラリロラリローハイッ !ハイッ !ハイッ !
ルラリロラリローハイッ !ハイッ !ハイッ !』
意味があるようで全くない歌を、身振り手振り腰をふりふり前後左右に揺らし、歌いながら歩く小柄で華奢な容姿の童顔少年。
見た目はどう見積もっても小学生の高学年、それが実は高校2年生17歳という彼女の1人でも欲しくなる、多感なお年頃だとは誰が見ても想像出来ないだろう。
そんな可憐な容姿の持ち主の名前は『円谷 真琴』と言った。
小さくて可愛い外見の真琴だが、見た目に反して格闘技好きであり自身も空手を嗜む黒帯有段者だ。
近所のお年寄りには会うたびに紙に包まれた懐かしい菓子を握らされ、一部某女性団体マニアの間ではギャップ萌えだとか、同級生と歩く姿に腐心を刺激されたとか、ウサギの被り物をプレゼントしたいとか、本人が与り知らぬところで不名誉ではあるが中々人気があったりする。
「真琴、それ何の歌 ? ヘンテコな踊りまで付いてるし」
『ん ? いい歌だろう ? 作詞作曲、なんと俺様だったりするのだよ ! ワハハッ !無論ナイスな振り付けもついでに俺な !昨日の夜にさ、天啓のように頭に閃いたんだ。だから今披露会してるんだよ。でもごめんな ?俺のお初は桜に捧げた !奏多は二番目の男だな !ワハハハ』
「……ああ、まぁ、その何だ、危ないから歌は……うん、踊りは帰って自宅でするのがいいと思うぞ。それに歌を披露する順番を話すには少し不適切な表現だ。」
『そうか ?俺の美声と軽やかなダンス !道行く見知らぬ人々へも天使か神の祝福の如く振りまこうと思ったのに残念だなー あ ? うわああぁードタズベッ ゴン!」
「なにらしくないコケかたしてるんだよ。おい大丈夫か ?早く起きろ制服汚れる…ぞ ? 真琴 ?おいっ 大丈夫かっ真琴 ! 真琴っ !」
ピーポーピーポーピーポーピーポー
ピーポーピーポーピーポーピーポー
そんなやりとりをしつつ学校帰りに友人の奏多と話しながら、いつもの道を呑気に歩いているはずだった。
ありきたりの日常が突然終わり、気づけば見知らぬ場所に、ぐにゃりと空間が捻じれるような浮遊感覚で目覚めることになる真琴だった。
蛇足だが、道路に出来た穴とも呼べない窪みでこけたのが原因で真琴は病院への搬送前にあっさり亡くなっていた。
たまたま、本当にたまたま打ち所が悪かっただけだとしか言えないことを、後に真琴が知ることになり悔しいやら恥ずかしいやらで、のたうち回るのはまだ少し先の話である。
人間の肉体はいとも簡単に壊れてしまうが、その無念の心が残っていたかのように、ある場所で即日復活を果す真琴はかなり丈夫、いや、バリ頑丈になっていたのも記しておこう。
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