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第2章
第18話 野生動物は癒しなのだよ
しおりを挟む『ふうー、最初から馬車にすれば良かった、こんなに快適なんて思わなかったね』
「そうだな、車より馬車がいいなんて不思議だ、でもこの馬車が特別なんだよな。
この馬車自体がマジックアイテムだもんな。」
『そうだね、ゼノバゼロス様の愛を感じるよ~ワハハ!
桜~ メトとタロに馬車を任せてお茶にしようよ』
「はーい」
「しかし、この馬さんたちは、ただモノじゃないよな?
俺たちの言葉が分ってるし、目的地が分れば自動操縦してくれる。
地球産のナビ機能搭載しているって言われても俺は納得するぞ」
「本当に賢い子たちですよね。それにとても紳士で素敵な2頭です。
先程からすれ違う馬車のお馬さんからの、熱い視線を感じます」
『ふ~ん、ふ~ん、メト、タロ、しっかり走ってよ、おサボり厳禁!! 』
「真琴…… お前馬にまで対抗心燃やすなよ。アイツらどうしようかみたいな顔してるぞ?
それに紳士的な不細工ってこともあるだろが、馬の美醜なんて分らないだろう 」
『ん? そう言えばそうだね。お前たちゴメンよ~俺が悪かったよ。
だよね、物凄く不細工ですれ違う馬が見てるってこともアリだもんね。にゃはは』
〈〈ヒヒーン、ヒヒーン…… 〉〉そんなに不細工では……
イケメンやモテるに過剰反応するのは、転生前から唯一変わらない真琴の標準装備である、今更誰に何を言われようとも己ですら対処できない感情なのであろう。これには相手が馬であろうがなんであろうが、真琴はそう言う生き物だと相手に認識してもらうしかないと、奏多と桜はメト、タロに必殺アイコンタクトを送っていた。
〈〈ヒヒーン、グルグル…… 〉〉ああ、わかりました……
そんなやり取りを真琴抜きでしている最中に、真琴は、さすがに大人げないとメトとタロに角砂糖とニンジンをあげて撫でまわし始めていた。
かなり勝手気ままな真琴だが、本来動物は大好きで水族館より動物園派だと生前から自負していた。
大人げない嫉妬をしていたはずがすっかり忘れて、2頭に懐き始める始末である。
「今日はこの辺で休もうか。メトとタロに任せれば、フォルトザまで一気に駆け抜けるだろうが、
真琴の希望は、のんびり観光目的だしな」
「そうですね、先程から見たこともない動物を見かけるたびに、
真琴様が馬車を止まらせて欲しそうな表情をなさっていましたから」
『だってね、リスみたいな可愛いのがいると思えば、耳がゾウさんだったり、
犬かと思ったら猫又みたいに尻尾が2本だったりして面白いんだもん』
「確かに現世の動物とは一味違うみたいだな。
俺がさっき見かけたウサギはカンガルーみたいに筋骨隆々だった」
『おお! オレも見たいっ』
「大丈夫ですよ、それなら先程も居ましたし、あっ、あちらにも居ますよ真琴様! 」
『えっ? ああ!! いたよ~。なんだ可愛いじゃないか!
何食べるのかな? 果物とか食べるかな? 桜、ここでキャンプしよ。
大きな籠に野菜や果物入れて置けば、きっとワラワラ集まるよ』
「よーし、そうと決まればバーベキューの準備するか」
フォルトザまで馬車で半日程度の距離を残した3人は、ハルフルでの経験を踏まえて、目立たない場所でゆっくり食事を取ろうと決めていた。
人族が住むアンベリファ星自体の食文化には、一切期待が持てないことから、いらぬ災いを呼び込まないように、地球から取り寄せた食事を取る時は、現地の人間が居ない場所でがいつの間にか合言葉になっていた。
「真琴、食材のリクエスト何かあるか? 昨日は焼き鳥食べたから、
今日のメインは魚介類にしたけどどうだ? 」
『おーいいね。ホタテのバター焼きが食べたい! あとは、エビとイカ焼き! 』
「オッケー、全部あるから任せとけ。タイが一匹まんまあるから、
アクアパッツアも作ろうな。桜ープチトマトとアサリ出しておいてくれ」
「はい、わかりました。こちらでオリーブオイルとニンニクは炒めてありますよ」
奏多と桜のしっかり者コンビが、手際よく夕食の準備をしている少し離れた後方で、久しぶりに現世でおなじみの姿(髪色は虹色ロングバージョン)で、せっせと籠にフルーツを大量に盛り付けている真琴の姿があった。
可愛い野生動物と触れ合いたい一心で、怠け者を返上して懸命に働く姿は、ある意味神々しく見えないこともない。
だが所詮野生動物をおびき寄せる罠である。餌付けにすらなっていない所がさすが真琴で、籠に寄ってきたリスに似た尻尾が2本に分かれている小動物を捕まえて、笑いながら撫でまわし、途中桜にドクターストップならぬ、撫でまわしストップを告げられ意気消沈。
しかし野生動物と意思疎通が図れる桜が来たことで、遠巻きに見ていた小動物達が集まり始め、真琴が願った通りのアニマルパラダイスになっていた。
もっとも、集まり過ぎてパラダイスからパニックになったのは言うまでもない。
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