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そのご
リシェ不足による禁断症状
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その日、ラスは朝からやけにカタカタしていた。
朝の段階では、忙しなく準備をしていたのでさほど気にはならなかったが、放課後に続き部屋に戻って来た時も妙に落ち着きが無い。
リシェはしばらく放置していたが、やはり気になってしまい「おい」と渋い表情で話し掛ける。
「んえっ!?は、はい」
「何なんだお前。朝からカタカタカタカタと。目に付くからやめろ。癖になるぞ」
具合でも悪いのかと思ったが、そこまで顔色が良くない訳でも無さそうだ。リシェの苦情に、ラスは申し訳無さそうに返す。
「いや、何というか…あれなんですよ」
「?」
「最近先輩をぎゅーっとしてないので…迂闊に抱き締めたら嫌がられちゃうし」
要するにリシェに触れる事を我慢する余り、欲求が高まり過ぎて出る症状のようだ。そこまで陥るのか…とリシェは嫌そうな顔を露骨に見せてしまう。
まるで全ての原因が自分にあるみたいに、と。
「人のせいにするな」
「そんなつもりは…」
カタカタ。
カタカタカタカタ。
側から見れば完全に危ない人間のように見えてくる。
「近くに居るだけでは治まらないのか…」
「近いからこそ欲張りになるってものですよ…ほら、先輩の温もりとか感触とか知ると余計に」
「気持ち悪いな」
ばっさり切り捨てるが、付き合うにつれてラスもリシェの毒吐きには慣れ切っているので全く気にする様子でもない。むしろ話しているのが幸せだという様子だ。
しかしまだカタカタしている状態。
「先輩、やっぱり先輩を補充しないとダメみたいです」
「お前、人を何だと思っているんだ。俺はガソリンスタンドでもなければ給水所でもないんだぞ」
「俺にとってはオアシスなんですよぅ…」
今のラスは砂漠で水を探して彷徨う状態。
「少しだけで良いです。少しだけ抱き締めさせて下さいよ」
こいつと相部屋に居る限り延々とこんな状態を繰り返すのだろうか。リシェはドン引きしつつ消耗しているラスを見る。至って普通の男子高校生なのに、何を間違ったらこんな変態に成り下がるのだろう。
見かけだけは決して悪くは無いのに。
「お前、やっぱり俺と相部屋は環境良くないんじゃないのか」
そのカタカタ加減を見る限り、彼にとって自分の存在は悪影響にしかならない気がする。
…というか、むしろこちらも困るのだ。
リシェの不安に対し、ラスはすぐに顔を上げて「良くなくないです!!」と反論する。
良くなくないって何だ…とリシェは更に引いた。
「俺は先輩と同じ空間に居るだけで嬉しいんですから!!う、う、うれじぃ…」
「ああ、分かった分かった…」
説得をするのも面倒臭い。
リシェはそう言うと、はあっと溜息を吐く。
「少しだけだからな」
「ほんとですか!?」
諦めたようにリシェは了承した。ラスは顔を上げると、すぐさま彼の前に近寄る。そして両手を広げ、がばりと抱き締めた。
ぎゅうぎゅう締め付けられる感覚に、ぐええええ!とリシェは美少年らしからぬ酷い叫び声を上げる。
「んんんっふ…あぁ…久しぶりの先輩の感触ぅうう…!細いし可愛いし、ほっぺも柔らかいいい…」
「おげぇええええ!!」
久しぶりのせいなのか、ラスはリシェに頬擦りをしながら感触を楽しんでいた。その一方でリシェは変な叫びを上げながら腕の中で悶絶する。
余程嬉しいのだろう。次第にラスは震え、しくしく泣き出す始末。
「は…?」
感情の変化が激しい同居人に対し、リシェは眉を顰めた。
「何で泣いてるんだ?」
「だって…嬉しくて…」
抱き締めながら感動のあまり泣くラスに、リシェは「うわ…」と更に引いてしまった。
こんなに面倒臭い奴だったっけ…と。
はっきり煩わしい!と突き飛ばしてやっても良いが、そこから更に面倒な事になりそうな気がしてくる。
「面倒臭…」
するといつものように部屋の扉がノック無しに開かれ、ズカズカとスティレンが中に入ってきた。
「リシェ、課題終わったんでしょ?ノート写させてよ…って、ラス?何してんの…」
室内の異様な光景に、スティレンは怪訝な顔を見せる。
ラスは泣きながら顔を上げると、スティレンに「先輩の」と言った。
「先輩の…補充中でずぅ…」
「補充…もう禁断症状になってるじゃん…」
ヤバ過ぎるでしょ…と呆れた。
どれだけ好きなのだろう。
リシェは諦めたように溜息を吐くと、「ああ、駄目だこいつ」と抱き付いてくるラスを支えていた。
朝の段階では、忙しなく準備をしていたのでさほど気にはならなかったが、放課後に続き部屋に戻って来た時も妙に落ち着きが無い。
リシェはしばらく放置していたが、やはり気になってしまい「おい」と渋い表情で話し掛ける。
「んえっ!?は、はい」
「何なんだお前。朝からカタカタカタカタと。目に付くからやめろ。癖になるぞ」
具合でも悪いのかと思ったが、そこまで顔色が良くない訳でも無さそうだ。リシェの苦情に、ラスは申し訳無さそうに返す。
「いや、何というか…あれなんですよ」
「?」
「最近先輩をぎゅーっとしてないので…迂闊に抱き締めたら嫌がられちゃうし」
要するにリシェに触れる事を我慢する余り、欲求が高まり過ぎて出る症状のようだ。そこまで陥るのか…とリシェは嫌そうな顔を露骨に見せてしまう。
まるで全ての原因が自分にあるみたいに、と。
「人のせいにするな」
「そんなつもりは…」
カタカタ。
カタカタカタカタ。
側から見れば完全に危ない人間のように見えてくる。
「近くに居るだけでは治まらないのか…」
「近いからこそ欲張りになるってものですよ…ほら、先輩の温もりとか感触とか知ると余計に」
「気持ち悪いな」
ばっさり切り捨てるが、付き合うにつれてラスもリシェの毒吐きには慣れ切っているので全く気にする様子でもない。むしろ話しているのが幸せだという様子だ。
しかしまだカタカタしている状態。
「先輩、やっぱり先輩を補充しないとダメみたいです」
「お前、人を何だと思っているんだ。俺はガソリンスタンドでもなければ給水所でもないんだぞ」
「俺にとってはオアシスなんですよぅ…」
今のラスは砂漠で水を探して彷徨う状態。
「少しだけで良いです。少しだけ抱き締めさせて下さいよ」
こいつと相部屋に居る限り延々とこんな状態を繰り返すのだろうか。リシェはドン引きしつつ消耗しているラスを見る。至って普通の男子高校生なのに、何を間違ったらこんな変態に成り下がるのだろう。
見かけだけは決して悪くは無いのに。
「お前、やっぱり俺と相部屋は環境良くないんじゃないのか」
そのカタカタ加減を見る限り、彼にとって自分の存在は悪影響にしかならない気がする。
…というか、むしろこちらも困るのだ。
リシェの不安に対し、ラスはすぐに顔を上げて「良くなくないです!!」と反論する。
良くなくないって何だ…とリシェは更に引いた。
「俺は先輩と同じ空間に居るだけで嬉しいんですから!!う、う、うれじぃ…」
「ああ、分かった分かった…」
説得をするのも面倒臭い。
リシェはそう言うと、はあっと溜息を吐く。
「少しだけだからな」
「ほんとですか!?」
諦めたようにリシェは了承した。ラスは顔を上げると、すぐさま彼の前に近寄る。そして両手を広げ、がばりと抱き締めた。
ぎゅうぎゅう締め付けられる感覚に、ぐええええ!とリシェは美少年らしからぬ酷い叫び声を上げる。
「んんんっふ…あぁ…久しぶりの先輩の感触ぅうう…!細いし可愛いし、ほっぺも柔らかいいい…」
「おげぇええええ!!」
久しぶりのせいなのか、ラスはリシェに頬擦りをしながら感触を楽しんでいた。その一方でリシェは変な叫びを上げながら腕の中で悶絶する。
余程嬉しいのだろう。次第にラスは震え、しくしく泣き出す始末。
「は…?」
感情の変化が激しい同居人に対し、リシェは眉を顰めた。
「何で泣いてるんだ?」
「だって…嬉しくて…」
抱き締めながら感動のあまり泣くラスに、リシェは「うわ…」と更に引いてしまった。
こんなに面倒臭い奴だったっけ…と。
はっきり煩わしい!と突き飛ばしてやっても良いが、そこから更に面倒な事になりそうな気がしてくる。
「面倒臭…」
するといつものように部屋の扉がノック無しに開かれ、ズカズカとスティレンが中に入ってきた。
「リシェ、課題終わったんでしょ?ノート写させてよ…って、ラス?何してんの…」
室内の異様な光景に、スティレンは怪訝な顔を見せる。
ラスは泣きながら顔を上げると、スティレンに「先輩の」と言った。
「先輩の…補充中でずぅ…」
「補充…もう禁断症状になってるじゃん…」
ヤバ過ぎるでしょ…と呆れた。
どれだけ好きなのだろう。
リシェは諦めたように溜息を吐くと、「ああ、駄目だこいつ」と抱き付いてくるラスを支えていた。
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