異世界学園の中の変な仲間たち４

そのにじゅう

鳥類ネットワーク

　授業が終わった後の帰り道で、リシェは上空から落下してきた何かに頭をぶつけられてしまう。
「………痛っ！！」
　ごつりと頭のてっぺんに衝撃が走る。
　隣に居たラスは彼の声にわっと驚いた後、続けて落下した小さな固形物の存在に気が付いた。そしてすぐに上空を見上げる。
「あー」
「…何だ？」
　リシェも同じく上を見上げると、その先には一羽の真っ黒なカラスが居た。頭目掛けて落としてきたくせに妙にしれっとしている様子。
　ちっ、とリシェは舌打ちする。
「何だあいつ。頭にぶつけてきたくせに謝りもしないで知らないふりしてやがる」
「むしろ謝ってきたら怖いと思いますよ…木の実ですね。割って欲しいんじゃないですか？」
「割って欲しいなら欲しいって言えばいいだろ」
　そんなめちゃくちゃな。
　ラスは痛む頭を押さえ文句を言うリシェにまぁまぁと怒りを押さえるように説得すると、これは習性だと思うから仕方無いと思いますよ、と地面に転がる実を踏んで割った。
　実は綺麗に割れ、中身が出てくる。きっと自分達が居なくなればカラスも警戒を解いて拾いに来るだろう。
「さ、行きましょう先輩」
「くそ…殴られ損じゃないか」
　すりすりと頭を撫で、リシェは忌々しげに上のカラスを睨んでいた。

　…その数日後の帰り道。
　同じ場所を歩いていると、再びリシェの目の前に木の実が転がってきた。
「またか」
　今度は目の前に落下するだけマシかもしれない。
「学習しましたね」
　ラスも思わず感心していると、再び上から実が落ちてくる。
「痛っ、痛っ！！」
　こつん、こつんと別の実が落とされ、またリシェの頭に直撃した。しかも二回とも。反射的に彼は頭を防御し、上を見上げる。前の時と同じように二羽のカラスはしれっとした様子で違う方向を見ていた。
「…何だお前ら！！俺らが割ると思ったら大間違いだぞ、甘ったれやがって！！そして人様の頭目掛けてぶつけてくるな！！」
　言ってもどうしようもない事を怒鳴る。一方のカラスは、口を開けたかと思うと「アー」と気の抜けたような鳴き声を放つ。
　もう…とラスは前回と同じように割ってやると、怒り狂うリシェを再び宥めて「まぁまぁ」と頭を撫でた。
「あいつら、こっちが親切で割ってやるのを理解してるからわざと俺にぶつけるんだろう」
「記憶力がいいんですね…」
　苛立ちながらその場を去ろうとすると、ちょうど目の前を一羽のハトが通過する。ハトはこちらを見た後、おもむろに上空を見た後数回鳴き声を上げた。
「………」
「………」
　そしてその後、軽く小回りした後、二人の目の前でフンをして飛び去ってしまう。
　まるでこちらを見て嘲笑うかのように。
「…はぁああああああ！？」
　ハトの態度が妙に腹立たしくなったのか、リシェは激昂した。
　今まで散々ハトによる被害を被ったせいで、彼らに対して非常に敏感になっている様子だ。
「…あいつが元々の元凶じゃないのか！！」
「そ、そんな訳ないでしょ！言葉が通じると思えないですもん！！」
「いや、同じ鳥同士何らかのネットワークを作ってるに違いない！！俺らがここを通れば餌の開封に困る事は無いって言ってるはずだ！！」
　そんな無茶苦茶な。
　怒りだすリシェに、ラスは絶対違いますって！！と押さえようとする。ハトネットワークとか鳥類同士とかとか聞いた事もない。そもそもカラスとハト同士、会話が成り立つのかも知れたものではなかった。
「あのハト、俺の事を敵視して下に見ているからあんな態度を取るんだ！！いつか焼き鳥にして食ってやるからな！！」
「その辺に居るハトは確実に食用じゃないと思いますよ！！」
　怒りの余り横暴な発言をするリシェをよそに、賢いカラス達はバサバサと羽根を鳴らし木の実を捕獲すると、その場を悠々と飛び去っていった。