異世界学園の中の変な仲間たち4

へすこ(ひしご)

文字の大きさ
23 / 43
そのにじゅうに

しおりを挟む
 リシェの実家からまたもや大きな荷物が届いた。
 扉に入れる際には直で入れるには厳しく、縦にしてようやく引き摺るように中へ押し進めた後で早速開封してみる。
「おっ…うわ、うわ!!何だこれ」
 にゅるにゅると出てきた物は圧縮された楕円形の何かだった。
「先輩の実家って何でも送ってきますね」
 うっかり見境無く、と言いそうになってしまいどうにか押し留める。
 リシェも困った顔でそんなに送らなくてもいいって言ってるのになぁと呟くと、どうにかして同封されている手紙を引っ張り出した。真っ白い便箋に書かれた内容を、いつものように広げて読んでみる。
「『旅行先で見つけた収納用の壺です。広げて何か入れて下さい』」
「壺?これが壺なんです?」
「壺って書いてるけど…」
 ラスは梱包用のビニールにハサミを入れて外に出した。確かに中の物は茶色いが、収納用の壺とはどういう意味なのだろうか。
 リシェは手紙を閉じた後、首を傾げてラスに問う。
「…何で?」
「先輩、実はそれ一番言いたいんでしょ…」
 毎度のような反応に思わず苦笑した。何でと聞かれてもこちらにも分からない。とりあえず広げてみますか、と折り畳みタイプの壺を広げてみた。
 ガガガガ、と音を立てながら広がった壺は、結構な大きさで上部分から何かを入れる事が出来るようだ。玩具などを入れるにはぴったりだろう。しかし大きさにかなりのゆとりがある。
 蓋部分は自分で取り付ける事が出来るようだ。別入りの袋にプラスチックの蓋が付属していた。
「…デカいな」
 その意外な大きさに、リシェはぼそりと呟く。
「ですね…」
 確かにその大きさは小柄な人間なら普通に入る事が出来そうだ。
「こんなに大きい収納ケースなんて見たの初めてですよ。よく見つけますねぇ」
「…………」
 リシェはおもむろに壺を少し縮めると、その中に足を入れて入り込んでみた。再び壺を広げ、「おぉ」と何か関心したように呟く。
「先輩…」
「ラス。蓋を寄越せ」
 大きな壺の中にリシェが入る形になる。
 ラスは言われるまま蓋をビニールから出し、「はい」と渡すと彼は自分で壺の蓋を閉めた。蓋はスライド式のようだ。中に留め具があり、綺麗に閉じる事が出来る。
「………」
「………」
「………」
「………」
 しばらく間が開いた。
「先輩」
「ん?」
 ラスは蓋の閉じ切った壺に声を掛ける。
「それ、どうする気ですか?」
「うーん…」
 どうする気かと言われても。
 壺の中に入り込んだリシェは押し黙る。さすがにこれは部屋に入れたままにするのはどうかと思う。使いこなせる自信が無い。かくれんぼとかになら使えそうな気がするが、収納面ではどうなのだろう。
 何かに使えたらなぁ、と考える。
「先輩」
「ん?」
「出ませんか?とりあえず…何か、俺…壺に話し掛けてるみたいで変な気分になります」
 物凄く違和感があるようだ。確かにこの状況を第三者側から見れば、かなりシュール過ぎる画に映るだろう。
「ちょっと待ってろ。何に使えるか考えているから」
「はぁ…」
 壺はひたすらぐらぐらと蠢いていた。
 プラスチック製で、意外にも頑丈そうにも見える。遊び道具として考えるならば、子供はとても喜びそうだ。
「うーん」
 ラスは周りに広がった段ボールやビニールを片付け始めた。
「部屋に置くにもこの大きさだとなぁ」
「そうですよ。それだったら寮側に引き取って貰った方がいいんじゃないですか?何かしら入れる物とかありそうだし…」
 折角送って来てくれた物だが、流石に個室には向かない大きさだと思う。依然リシェは壺の中に入ったままぐらぐらと蠢いていた。
「先輩…」
「ん?」
「出て下さいよ。何だか変な気持ちになります」
 やはり違和感が拭えないらしい。
 しかしリシェは「ちょっと待て」と言いながら一向に出る気配が無い。あまりにも出て来ない様子なので、ラスは困惑しながら壺に問う。
「もしかして気に入ったんじゃないですか?」
「まさか」
 壺の中のリシェはひたすら蠢き「そんなはず無いだろ」と返すものの、やはり気に入ったのかなかなか出て来そうになかった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ

BL
鍛えられた肉体、高潔な魂―― それは選ばれし“供物”の条件。 山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。 見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。 誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。 心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。

強制悪役劣等生、レベル99の超人達の激重愛に逃げられない

砂糖犬
BL
悪名高い乙女ゲームの悪役令息に生まれ変わった主人公。 自分の未来は自分で変えると強制力に抗う事に。 ただ平穏に暮らしたい、それだけだった。 とあるきっかけフラグのせいで、友情ルートは崩れ去っていく。 恋愛ルートを認めない弱々キャラにわからせ愛を仕掛ける攻略キャラクター達。 ヒロインは?悪役令嬢は?それどころではない。 落第が掛かっている大事な時に、主人公は及第点を取れるのか!? 最強の力を内に憑依する時、その力は目覚める。 12人の攻略キャラクター×強制力に苦しむ悪役劣等生

男子高校に入学したらハーレムでした!

はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。 ゆっくり書いていきます。 毎日19時更新です。 よろしくお願い致します。 2022.04.28 お気に入り、栞ありがとうございます。 とても励みになります。 引き続き宜しくお願いします。 2022.05.01 近々番外編SSをあげます。 よければ覗いてみてください。 2022.05.10 お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。 精一杯書いていきます。 2022.05.15 閲覧、お気に入り、ありがとうございます。 読んでいただけてとても嬉しいです。 近々番外編をあげます。 良ければ覗いてみてください。 2022.05.28 今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。 次作も頑張って書きます。 よろしくおねがいします。

聞いてた話と何か違う!

きのこのこのこ
BL
春、新しい出会いに胸が高鳴る中、千紘はすべてを思い出した。俺様生徒会長、腹黒副会長、チャラ男会計にワンコな書記、庶務は双子の愉快な生徒会メンバーと送るドキドキな日常――前世で大人気だったBLゲームを。そしてそのゲームの舞台こそ、千紘が今日入学した名門鷹耀学院であった。 生徒会メンバーは変態ばかり!?ゲームには登場しない人気グループ!? 聞いてた話と何か違うんですけど! ※主人公総受けで過激な描写もありますが、固定カプで着地します。 他のサイトにも投稿しています。

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

BLゲームの脇役に転生したはずなのに

れい
BL
腐男子である牧野ひろは、ある日コンビニ帰りの事故で命を落としてしまう。 しかし次に目を覚ますと――そこは、生前夢中になっていた学園BLゲームの世界。 転生した先は、主人公の“最初の友達”として登場する脇役キャラ・アリエス。 恋愛の当事者ではなく安全圏のはず……だったのに、なぜか攻略対象たちの視線は主人公ではなく自分に向かっていて――。 脇役であるはずの彼が、気づけば物語の中心に巻き込まれていく。 これは、予定外の転生から始まる波乱万丈な学園生活の物語。 ⸻ 脇役くん総受け作品。 地雷の方はご注意ください。 随時更新中。

乙女ゲームのサポートメガネキャラに転生しました

西楓
BL
乙女ゲームのサポートキャラとして転生した俺は、ヒロインと攻略対象を無事くっつけることが出来るだろうか。どうやらヒロインの様子が違うような。距離の近いヒロインに徐々に不信感を抱く攻略対象。何故か攻略対象が接近してきて… ほのほのです。 ※有難いことに別サイトでその後の話をご希望されました(嬉しい😆)ので追加いたしました。

処理中です...