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そのよんじゅういち
繋ぐ場所
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またここか、と真っ白な周囲を見回しながらリシェは思った。謎すぎるこの空間に飛ばされるのはこれで三度目。
どうせ居るんだろ、と呆れる気持ちになりながら「おい」と何も無い空間に向かって話し掛けてみる。待つまでもなく、すぐに返事が戻ってきた。
「またお前か。何しに来た」
「何しに来たって言われても。好きで来た訳じゃない」
同じ姿をした相手は、風変わりな格好ではなく寝巻きの姿をしていた。
「寝てたのか?」
「寝てたかもしれない。起きているが」
どういう意味なのかは分からないが、意識ははっきりしているようだ。リラックスした格好の為かそれとも現状に慣れているのか、警戒する事無く二人は会話を進めていた。
何がきっかけで自分と会話をしているのか、果たして意味があるのかは謎だった。
「怪我の状態はどうなんだ?」
前に会った時にはベッドで寝入ったままだった事を思い出し、リシェは同じ顔をした相手に問う。彼は「いつの話をしているんだ?」と怪訝そうな顔で前置きすると、大丈夫だと答えてくれた。
「ふん…ずっと怪我をしてる訳にはいかないからな。もうすっかり治ったぞ」
「そうか。それならいいんだけど…」
「何だ?」
「こうして自分を同じ顔の奴が知らないうちに勝手に怪我をしているっていうのが変な感じなんだよな。俺はどこも悪くないのに…まぁ、たまに食当たりを起こす位で」
一体何処で生活しているのだろうと疑問を感じる。
だが、深く知ってはいけない気もしてくるのだ。
「食当たりだと…拾い食いでもしているのか、みっともない」
思いっきり嫌そうな様子で、同じ顔のリシェが吐き捨てた。思わず「そんな訳あるか!!」とこちらのリシェも反論する。
「俺は拾い食いなんてしていない!!」
ムガー!!とヤケになって怒鳴る。
体調を崩してしまうのは手作り関係が原因で、決して拾って食べるなどという恥ずかしい理由ではない。
「それならいい。お前が俺と同じ顔をして、何処で何をやっているか全く分からないが変な行動だけはして欲しくないからな。そもそもお互い何処で生きているのかも分からないっていうのに…」
それはこちらのセリフだとリシェは思った。
何なんだ…と謎に満ちた真っ白い空間の中を見回していると、何処か遠くで自分を呼ぶ声が聞こえてくる。
「………ん?」
「どうした?」
「誰かが俺を呼んでる気がする」
相手も黙って耳を澄ますが、怪訝そうな顔で首を傾げた。
「俺は全然聞こえないぞ…」
「おかしいな。俺は聞こえてくるんだけど…」
…ぱい、せんぱい。せーんぱーい!!
もしかして自分にしか聞こえてこないのか?とリシェは周りをキョロキョロさせる。
「それならお前を呼んでるんだろう。行ってきたらどうだ」
「ずっと先輩先輩ってうるさいからな。面倒臭いなぁ」
「先輩…?」
相手側のリシェは、きょとんとした顔をした。
「やたら呼んでくるんだよ。俺は別に先輩でもないのに」
頭の中でひたすら自分を呼ぶ声に、リシェは首を振りながら「ああ、やかましい」とうんざりする。
「分かったよラス。行ってやるよ…しつこく呼ぶな!」
そう怒鳴った瞬間、同じ姿の二人のうち一人がふっと姿を消し、一人だけ真っ白い空間に残ってしまう。残されたもう一方のリシェは、ポカーンとした面持ちで空虚を見つめていた。
「ラス…?って、あのラス?」
彼の世界にも、それぞれ別の同じ人間がいるという事なのだろうか。違う世界観を生きる自分達が居る、となればこの真っ白い空間はお互いを繋ぐ道のようなものかもしれない。
あまりこの場に居てはいけないのだろう。だが、この真っ白な空間から出られる扉などは一切見当たらなかった。
深く考え込んでいると、やがて睡魔が襲う。
「はぁ…何か…眠くなってきた…」
この空間はどういう訳か、ひどく居心地が良い。
リシェはそのまま横たわると、再びすやすやと寝息を立てて眠り始めた。
どうせ居るんだろ、と呆れる気持ちになりながら「おい」と何も無い空間に向かって話し掛けてみる。待つまでもなく、すぐに返事が戻ってきた。
「またお前か。何しに来た」
「何しに来たって言われても。好きで来た訳じゃない」
同じ姿をした相手は、風変わりな格好ではなく寝巻きの姿をしていた。
「寝てたのか?」
「寝てたかもしれない。起きているが」
どういう意味なのかは分からないが、意識ははっきりしているようだ。リラックスした格好の為かそれとも現状に慣れているのか、警戒する事無く二人は会話を進めていた。
何がきっかけで自分と会話をしているのか、果たして意味があるのかは謎だった。
「怪我の状態はどうなんだ?」
前に会った時にはベッドで寝入ったままだった事を思い出し、リシェは同じ顔をした相手に問う。彼は「いつの話をしているんだ?」と怪訝そうな顔で前置きすると、大丈夫だと答えてくれた。
「ふん…ずっと怪我をしてる訳にはいかないからな。もうすっかり治ったぞ」
「そうか。それならいいんだけど…」
「何だ?」
「こうして自分を同じ顔の奴が知らないうちに勝手に怪我をしているっていうのが変な感じなんだよな。俺はどこも悪くないのに…まぁ、たまに食当たりを起こす位で」
一体何処で生活しているのだろうと疑問を感じる。
だが、深く知ってはいけない気もしてくるのだ。
「食当たりだと…拾い食いでもしているのか、みっともない」
思いっきり嫌そうな様子で、同じ顔のリシェが吐き捨てた。思わず「そんな訳あるか!!」とこちらのリシェも反論する。
「俺は拾い食いなんてしていない!!」
ムガー!!とヤケになって怒鳴る。
体調を崩してしまうのは手作り関係が原因で、決して拾って食べるなどという恥ずかしい理由ではない。
「それならいい。お前が俺と同じ顔をして、何処で何をやっているか全く分からないが変な行動だけはして欲しくないからな。そもそもお互い何処で生きているのかも分からないっていうのに…」
それはこちらのセリフだとリシェは思った。
何なんだ…と謎に満ちた真っ白い空間の中を見回していると、何処か遠くで自分を呼ぶ声が聞こえてくる。
「………ん?」
「どうした?」
「誰かが俺を呼んでる気がする」
相手も黙って耳を澄ますが、怪訝そうな顔で首を傾げた。
「俺は全然聞こえないぞ…」
「おかしいな。俺は聞こえてくるんだけど…」
…ぱい、せんぱい。せーんぱーい!!
もしかして自分にしか聞こえてこないのか?とリシェは周りをキョロキョロさせる。
「それならお前を呼んでるんだろう。行ってきたらどうだ」
「ずっと先輩先輩ってうるさいからな。面倒臭いなぁ」
「先輩…?」
相手側のリシェは、きょとんとした顔をした。
「やたら呼んでくるんだよ。俺は別に先輩でもないのに」
頭の中でひたすら自分を呼ぶ声に、リシェは首を振りながら「ああ、やかましい」とうんざりする。
「分かったよラス。行ってやるよ…しつこく呼ぶな!」
そう怒鳴った瞬間、同じ姿の二人のうち一人がふっと姿を消し、一人だけ真っ白い空間に残ってしまう。残されたもう一方のリシェは、ポカーンとした面持ちで空虚を見つめていた。
「ラス…?って、あのラス?」
彼の世界にも、それぞれ別の同じ人間がいるという事なのだろうか。違う世界観を生きる自分達が居る、となればこの真っ白い空間はお互いを繋ぐ道のようなものかもしれない。
あまりこの場に居てはいけないのだろう。だが、この真っ白な空間から出られる扉などは一切見当たらなかった。
深く考え込んでいると、やがて睡魔が襲う。
「はぁ…何か…眠くなってきた…」
この空間はどういう訳か、ひどく居心地が良い。
リシェはそのまま横たわると、再びすやすやと寝息を立てて眠り始めた。
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