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そのさんじゅうさん
撫
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いつもの放課後。
ラスはおもむろにリシェの名前を呼び、ひょいひょいと手招きした。
「何だ?」
大人しく彼はラスに近付く。その様子を黙ってスティレンは見ていた。放課後の屋上は、変わらず他の生徒達もそれぞれの休息を謳歌している。
にこにこと笑みを浮かべ、ラスはいきなりリシェの頭を撫で始めた。
「!?…何だ?何をしている?」
何もしていないのに頭を撫でられ、リシェは驚いてラスを見上げる。
「いや、何となく撫でてみたくて」
なでなで。
意味不明過ぎて、リシェは変なくすぐったさに身を捩る。
「や、やめろ。何のつもりだ」
「んふふ…」
なでなで。
「先輩の反応がまた可愛いなぁ」
「意味が分からない、やめろってば」
次第に照れ臭くなってきたのか、身動ぎして後退する。しかしラスは止まらない。もう、やめろ!と嫌がるリシェは周辺で逃げ回り始めた。
「あ!先輩!待って下さいよぉ」
「意味不明に撫でてくるのはやめろ!!」
「待ってぇええ」
何だこのお花畑な奴らは…とスティレンは無言で眺めていた。
…全く、人の目の前でいちゃついてるんじゃないよ。
その夜、寮の大浴場で湯を浴びたスティレンは全身ほっこりさせながら自室の扉を開こうとした。
「ん?何だ、風呂か?」
その時丁度、食堂で晩御飯を食べ終えたリシェとかち合う。
「もう入ってきたよ。今は皆食堂に行ってるからね、空いてて使いやすいし」
「へえ」
スティレンはそんなリシェをじっと見る。
不意に放課後の事を思い出した。
「ふうん…」
「?」
何か?と首を傾げてスティレンを見上げるリシェ。同時に、スティレンの手がリシェの頭に触れた。
「は?」
なでなでなで。
「何だお前まで!!やめろ、ハゲるかもしれないだろ!!」
ここでも意味不明に頭を撫でられたリシェはスティレンの撫でてくる腕に手をかけ引き離そうとしていた。
だが一向に止めようとはしない。
「うるさいなぁ。撫でて何かあるのかって思ったんだよ」
「何も無いだろうが!!」
くすぐったさと妙な歯痒さで、リシェは困惑しながら身動ぎする。
「やめっ、やめろって…」
「うーん…」
やがて顔を紅潮させ、へろへろになってきたリシェは撫でられながら恥ずかしそうにスティレンを見上げた。
「やめろったら…」
うぅう、と目を閉じて引っ込もうとする。その様子を目の当たりにし、スティレンは何故か妙に胸が鷲掴みにされた気分になった。
きゅううんと締め付けられる感覚。
リシェの容姿にも問題があるのかもしれない。弱々しく訴えるその姿は、完全に間違いを起こしかねない様相なのだ。
下手をすれば誤解してしまう。
「…この…っ!!」
顔が熱くなる。
がしがしがし、と少し力を込めてリシェを撫でた。彼は本気で嫌がり、ひたすらやめろ!と喚く。
「うるさい、黙って撫でられな!」
頭を撫でているだけなのに、何故惹きつけられてしまうのだろうか。
「何なんだよお前らは!俺を撫でても何も出ないぞ!!」
流石におかしいと思ったのだろう。リシェは半泣きになりながらスティレンに訴えていた。
ラスはおもむろにリシェの名前を呼び、ひょいひょいと手招きした。
「何だ?」
大人しく彼はラスに近付く。その様子を黙ってスティレンは見ていた。放課後の屋上は、変わらず他の生徒達もそれぞれの休息を謳歌している。
にこにこと笑みを浮かべ、ラスはいきなりリシェの頭を撫で始めた。
「!?…何だ?何をしている?」
何もしていないのに頭を撫でられ、リシェは驚いてラスを見上げる。
「いや、何となく撫でてみたくて」
なでなで。
意味不明過ぎて、リシェは変なくすぐったさに身を捩る。
「や、やめろ。何のつもりだ」
「んふふ…」
なでなで。
「先輩の反応がまた可愛いなぁ」
「意味が分からない、やめろってば」
次第に照れ臭くなってきたのか、身動ぎして後退する。しかしラスは止まらない。もう、やめろ!と嫌がるリシェは周辺で逃げ回り始めた。
「あ!先輩!待って下さいよぉ」
「意味不明に撫でてくるのはやめろ!!」
「待ってぇええ」
何だこのお花畑な奴らは…とスティレンは無言で眺めていた。
…全く、人の目の前でいちゃついてるんじゃないよ。
その夜、寮の大浴場で湯を浴びたスティレンは全身ほっこりさせながら自室の扉を開こうとした。
「ん?何だ、風呂か?」
その時丁度、食堂で晩御飯を食べ終えたリシェとかち合う。
「もう入ってきたよ。今は皆食堂に行ってるからね、空いてて使いやすいし」
「へえ」
スティレンはそんなリシェをじっと見る。
不意に放課後の事を思い出した。
「ふうん…」
「?」
何か?と首を傾げてスティレンを見上げるリシェ。同時に、スティレンの手がリシェの頭に触れた。
「は?」
なでなでなで。
「何だお前まで!!やめろ、ハゲるかもしれないだろ!!」
ここでも意味不明に頭を撫でられたリシェはスティレンの撫でてくる腕に手をかけ引き離そうとしていた。
だが一向に止めようとはしない。
「うるさいなぁ。撫でて何かあるのかって思ったんだよ」
「何も無いだろうが!!」
くすぐったさと妙な歯痒さで、リシェは困惑しながら身動ぎする。
「やめっ、やめろって…」
「うーん…」
やがて顔を紅潮させ、へろへろになってきたリシェは撫でられながら恥ずかしそうにスティレンを見上げた。
「やめろったら…」
うぅう、と目を閉じて引っ込もうとする。その様子を目の当たりにし、スティレンは何故か妙に胸が鷲掴みにされた気分になった。
きゅううんと締め付けられる感覚。
リシェの容姿にも問題があるのかもしれない。弱々しく訴えるその姿は、完全に間違いを起こしかねない様相なのだ。
下手をすれば誤解してしまう。
「…この…っ!!」
顔が熱くなる。
がしがしがし、と少し力を込めてリシェを撫でた。彼は本気で嫌がり、ひたすらやめろ!と喚く。
「うるさい、黙って撫でられな!」
頭を撫でているだけなのに、何故惹きつけられてしまうのだろうか。
「何なんだよお前らは!俺を撫でても何も出ないぞ!!」
流石におかしいと思ったのだろう。リシェは半泣きになりながらスティレンに訴えていた。
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