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そのろくじゅういち
先輩カウンター
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「先輩、先輩っ」
物凄く上機嫌そうな様子でラスはリシェに話しかける。
一方でリシェは毎度の無表情のままでラスに目を向けていた。
「はぁああ…今日も可愛いですね、先輩!ただいま!」
「………」
休日の午後、アルバイトから帰ってきたラスは残りの自由時間の為か物凄く機嫌が良かった。
一方のリシェは部屋の中で一人で過ごしていたが、途中でスティレンが勝手に部屋に入ってきて寛いできたので適当にやり過ごしている最中だった。帰寮したラスのあまりのテンションの高さに辟易しながら、スティレンが「何回先輩って言うつもりさ」と小馬鹿にした様子で言う。
ラスはにこやかな笑みを讃えながら帰る間際に購入してきたケーキの白い箱をテーブルに置くと、鼻歌混じりにお茶の準備をする。
「この後ラスが先輩って何回呼ぶのか賭けてみない?」
全く動かないリシェに、スティレンはこそっと耳打ちした。
リシェは「何だって?」と眉を寄せる。
「ほら、あいつめっちゃ先輩連呼するじゃない。俺はここから五十回以上は呼ぶと思うけど、お前はどう思う?」
「いくらなんでもそんなに呼ばないだろ…大体いつまでの時間を計測する気だ?数えてるとキリが無いぞ」
「そうだね。今から二十分位にしてみよっか。その間ラスがお前を何度先輩って呼ぶか。俺、メモっておくからさ」
「………」
良くまぁそんな暇な事を思いつくなとリシェは思った。
言い出しっぺのスティレンはやる気満々なので別に放置していれば問題は無いが、ラスもそんなにしつこいレベルで連呼しないだろう。ちょっと待ってな、とメモ用紙を準備する従兄弟。
そうしているうちに、ラスは人数分のお茶を持って戻って来た。
「新商品のイチゴクリームのケーキなんですよ。凄く美味しそうだったから買ってきちゃいました!」
「はぁ」
そう言い、これもまたしっかりと人数分のケーキを丁寧に小皿に取り分ける。メモを準備していたスティレンは、その華やかな見掛けと美味しそうなケーキに目を輝かせながら「やるじゃない」と満足気に言った。
ラスに知られないようにメモを膝下に寄せた。
「先輩の喜ぶ顔が見たいからね!」
満面の笑みでそう言うと、スティレンは一回目の印を記入した。
リシェはそれをちらりと見る。興味無さそうにしていたが、多少は気になったようだ。
「じゃあ食べよっか。スティレンも遠慮無く食べなよぉ」
「そこまで言うなら食べてもいいけどっ?」
「素直じゃないなぁ。んじゃ、いただきまーす!」
リシェもラスに礼を言い、ケーキにフォークを入れた。一口食べ、甘い味に思わずううんと唸り声を放つ。
「美味しい」
「…良かった!先輩、甘いもの好きですからね!もっと食べていいんですよ!」
リシェのお気に召した様子に、ラスもご満悦だった。
同時にスティレンのメモは二回目の印が刻まれる。
ケーキに乗っていた大振りのイチゴを一口で食べるリシェの様子に、ラスは幸せそうに「うぅううん」と声を放つ。
「甘いな、このイチゴ」
柔らかな頰をもごもごさせて夢中になる彼を見て、ラスはテンションが上がったままで我慢出来ないのか彼に抱き着いた。同時に上がる悲鳴。
「うあああああ!!先輩!!」
「ぎゃぁあああああああ!!何だお前気持ち悪い!!」
「先輩、先輩!!可愛いっ、めっちゃ可愛い!もうダメですってば、反則です先輩!!」
一気に先輩カウンターが増加していく。
このままでは目安の二十分を待たずして予想していた先輩カウンターが五十を超える勢いだった。
「離れろ!食えないじゃないか!!」
「だって先輩が可愛くて!もう、どうしてくれるんですか!!」
「知るか馬鹿!!」
引っ付いてくるラスの頭を本気でガスガス殴りながら、リシェは退けと立腹する。殴りつけられても抱き着くので、こいつはドMなのかと疑いたくなってきた。
むしろ彼になら何をされてもいいと思っている節もある。
「あぁあああもう、ケーキごと食べてしまいたいぃいい先輩いぃい」
「うるさい!!…スティレン、こいつを止めろ!!」
助けを求めようとリシェはスティレンに目を向けた。
しかし彼はひたすらメモをしている。
「スティレン!!数えてないで助けろ!!」
ペンを走らせていた彼はリシェの声にようやく気付き、「邪魔するんじゃないよ!!」と怒り出した。
「てか五十回超えたんだけど!?まだ開始から十分も経って無いんだよ!?何なのラス、この変態!!」
延々とラスが先輩呼びしていた回数を追い続けていたらしい。
いきなり意味不明な罵倒をされ、ラスはリシェに抱き着いたままきょとんとする。何の話をしているのか分からない様子だ。
「え?何て??」
「どんだけこいつがお気に入りなのかって言ってんだよ!」
その言葉に、ラスはにっこりと笑いながら答えた。
「めちゃくちゃ大好き♡」
同時に、リシェのきつい拳骨が彼の頭を直撃した。
物凄く上機嫌そうな様子でラスはリシェに話しかける。
一方でリシェは毎度の無表情のままでラスに目を向けていた。
「はぁああ…今日も可愛いですね、先輩!ただいま!」
「………」
休日の午後、アルバイトから帰ってきたラスは残りの自由時間の為か物凄く機嫌が良かった。
一方のリシェは部屋の中で一人で過ごしていたが、途中でスティレンが勝手に部屋に入ってきて寛いできたので適当にやり過ごしている最中だった。帰寮したラスのあまりのテンションの高さに辟易しながら、スティレンが「何回先輩って言うつもりさ」と小馬鹿にした様子で言う。
ラスはにこやかな笑みを讃えながら帰る間際に購入してきたケーキの白い箱をテーブルに置くと、鼻歌混じりにお茶の準備をする。
「この後ラスが先輩って何回呼ぶのか賭けてみない?」
全く動かないリシェに、スティレンはこそっと耳打ちした。
リシェは「何だって?」と眉を寄せる。
「ほら、あいつめっちゃ先輩連呼するじゃない。俺はここから五十回以上は呼ぶと思うけど、お前はどう思う?」
「いくらなんでもそんなに呼ばないだろ…大体いつまでの時間を計測する気だ?数えてるとキリが無いぞ」
「そうだね。今から二十分位にしてみよっか。その間ラスがお前を何度先輩って呼ぶか。俺、メモっておくからさ」
「………」
良くまぁそんな暇な事を思いつくなとリシェは思った。
言い出しっぺのスティレンはやる気満々なので別に放置していれば問題は無いが、ラスもそんなにしつこいレベルで連呼しないだろう。ちょっと待ってな、とメモ用紙を準備する従兄弟。
そうしているうちに、ラスは人数分のお茶を持って戻って来た。
「新商品のイチゴクリームのケーキなんですよ。凄く美味しそうだったから買ってきちゃいました!」
「はぁ」
そう言い、これもまたしっかりと人数分のケーキを丁寧に小皿に取り分ける。メモを準備していたスティレンは、その華やかな見掛けと美味しそうなケーキに目を輝かせながら「やるじゃない」と満足気に言った。
ラスに知られないようにメモを膝下に寄せた。
「先輩の喜ぶ顔が見たいからね!」
満面の笑みでそう言うと、スティレンは一回目の印を記入した。
リシェはそれをちらりと見る。興味無さそうにしていたが、多少は気になったようだ。
「じゃあ食べよっか。スティレンも遠慮無く食べなよぉ」
「そこまで言うなら食べてもいいけどっ?」
「素直じゃないなぁ。んじゃ、いただきまーす!」
リシェもラスに礼を言い、ケーキにフォークを入れた。一口食べ、甘い味に思わずううんと唸り声を放つ。
「美味しい」
「…良かった!先輩、甘いもの好きですからね!もっと食べていいんですよ!」
リシェのお気に召した様子に、ラスもご満悦だった。
同時にスティレンのメモは二回目の印が刻まれる。
ケーキに乗っていた大振りのイチゴを一口で食べるリシェの様子に、ラスは幸せそうに「うぅううん」と声を放つ。
「甘いな、このイチゴ」
柔らかな頰をもごもごさせて夢中になる彼を見て、ラスはテンションが上がったままで我慢出来ないのか彼に抱き着いた。同時に上がる悲鳴。
「うあああああ!!先輩!!」
「ぎゃぁあああああああ!!何だお前気持ち悪い!!」
「先輩、先輩!!可愛いっ、めっちゃ可愛い!もうダメですってば、反則です先輩!!」
一気に先輩カウンターが増加していく。
このままでは目安の二十分を待たずして予想していた先輩カウンターが五十を超える勢いだった。
「離れろ!食えないじゃないか!!」
「だって先輩が可愛くて!もう、どうしてくれるんですか!!」
「知るか馬鹿!!」
引っ付いてくるラスの頭を本気でガスガス殴りながら、リシェは退けと立腹する。殴りつけられても抱き着くので、こいつはドMなのかと疑いたくなってきた。
むしろ彼になら何をされてもいいと思っている節もある。
「あぁあああもう、ケーキごと食べてしまいたいぃいい先輩いぃい」
「うるさい!!…スティレン、こいつを止めろ!!」
助けを求めようとリシェはスティレンに目を向けた。
しかし彼はひたすらメモをしている。
「スティレン!!数えてないで助けろ!!」
ペンを走らせていた彼はリシェの声にようやく気付き、「邪魔するんじゃないよ!!」と怒り出した。
「てか五十回超えたんだけど!?まだ開始から十分も経って無いんだよ!?何なのラス、この変態!!」
延々とラスが先輩呼びしていた回数を追い続けていたらしい。
いきなり意味不明な罵倒をされ、ラスはリシェに抱き着いたままきょとんとする。何の話をしているのか分からない様子だ。
「え?何て??」
「どんだけこいつがお気に入りなのかって言ってんだよ!」
その言葉に、ラスはにっこりと笑いながら答えた。
「めちゃくちゃ大好き♡」
同時に、リシェのきつい拳骨が彼の頭を直撃した。
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