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【3】僕
(38)踏切 電車 向こう側
しおりを挟む『えー。つまりこの問題の計算式は—』
2週間が経った
不意にこの学校に現れた彼女はあれからまだ休み続けている。
連絡しようにも、連絡先を知らないのと直接家に行く勇気もない僕は、彼女が学校に来るのをただ待っていた。
クラスは彼女が転校して来る前に戻りつつある。
当初休み始めの時は噂やら心配する声が多数耳に入っていたが、今はまるでいないのは当然かのように。
『おっ。じゃあ続きは明日、お前ら予習しとけよー』
授業終了のチャイムが鳴ると同時にクラスの緊張はほぐれた。
彼女の他に僕にちょっかいを出してくる子もおらず何だか本当にいなくなっちゃったみたいに思えた。
彼女と一緒に帰っていた癖からか
今もまだ一本道を歩いて帰っている。
もしかしたら、あのベンチに君はいるんじゃないかと期待しながら。
他のクラスの子が自転車で僕の事を追い越すたびに微かに流れるこの風は日を重ねるごとに次第に冷たくなっていた。
『あの踏切。どこかで....』
帰りの一本道の途中には1つの駅がある。普段はそちら側を見て歩く事もなく、滅多に使わないその駅は少し、よそよそしく感じる一方でつい最近見たような感じがした。
何となく近づいた踏切は相変わらずボロボロで夜くればホラー映画に出てくるんじゃないかと思えるほどだ。
ちょうど電車の来るタイミングで遮断桿が降りてきて、向こう側に行くわけでもないのに立ち止まる。
不思議だ。
久しぶりにこっちまで来たのに妙に...
カーンカーンカーンカーン
電車が過ぎるまでなり続ける音。
カーンカーンカーンカーン
その音は心なしか大きく響く。
カーンカーンカーンカーン
『———————————。』
カーンカーンカーンカー......
ジッと前を見つめて電車が過ぎ去るのを待つ。
そのほんの数十秒間がとても長く感じる
これが、最初の間違い。
電車が視界に入る少し手前で冷たい風が背中を通り抜ける
隣を駆け抜けていった女性は素足で
白いワンピースを着ており
どこか懐さを感じさせる匂いがした
彼女は遮断桿を抜けて踏切の向こう側を目指して駆け抜けていった。
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