『真・らぶ・CAL・てっと』

倉智せーぢ

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真・らぶ・CAL・てっと 四十三

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「ごめんねー治クン? お湯がなかなか溜まらなかったからそれでね」
と、添い寝していた理由を説明すると、バスルームの中から、たどたどしくか細い声が返る。
「あ、はい。 あの、ありがとう、ございます」
「ローブここへ置いとくからね?」
そう告げて、自分は窓へ近づいてブラインドの隙間から外の様子を確認する。
「あ、良かった。 雨、止んでる」


今度は二人とも別々に身繕いを終えた。
治とて高一なのだし、留美はそこまでおせっかいではない。
「それじゃ帰りましょうか」
留美が促すと
「あ、あの」
「ん?」
覗き込むようにして聞き返され、視線を避けるように目を伏せつつ
「どうして留美さんが?」
治の質問の意味を悟った留美。 そういえば理由を言っていない。
理由とはもちろん
『どうして待ち合わせ場所に佑が来ず、留美が来たか』
の理由である。
「ごめんなさいね、忘れてて。 実はね、佑が」
かくかくしかじか、と聞き
「え、先輩が?」
とたんに治の血相がかわった。
「ぼ、ぼくお見舞いに」
佑恋しさのために、その発言の相手が彼の恋人であるのも忘れたかのようであった。
留美は優しく、今更そのくらいで怒らないということをうすうす理解しはじめたのかもしれない。
しかしながら、お見舞いに、と言われて留美は少し考え込んだ。
「うーん」
ややあってうなずく。
「うん! わかった。 でもその前に」
「その前に?」
「予防をね?」
というわけで、薬局へ寄って治用のカゼ薬とマスクを購入したのであった。


「ど、どうしたの? 北条もカゼ?」
治の出で立ちを見てこちらも血相を変える。
そろそろ体調が回復し、周りのことを気にする余裕が出てきたようである。
もともと周りのことばかり気にして自分のことがおろそかだからこんなことになっているのだが、留美も今度は指摘しなかった。
頭を振った治は
「いいえ、留美さんが買ってくれたんです。 先輩の風邪がうつるかも知れないから予防にって」
ともじもじしつつ説明した。
「あ、そうなの」
軽く微笑んだ佑は、次に留美に向かって
「随分遅かったけど、雨宿りしてたの?」
「ん、そうよ。 途中で降られちゃったけど、雨宿りしてるうちに乾いてね」
留美は適当にぼかした。
治が真っ赤になっていたからだった。
彼が佑に『温まり方』を知られたくないのは明白だったからである。
留美自身はそのことを気にはしていなかったが、治の気持ちを尊重したのだ。

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