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真・らぶ・CAL・てっと 四十五
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声にならない叫びをあげる佑。
というか、実のところは声を上げると色々まずいのだ。
ここは教室で、今は授業と授業の狭間、いわゆる休み時間なのだから。
茗の提供したそのコミックの内容は驚くべきものだった。
いや、もちろん彼にとっての話なのだが。
一般的に言ってあまり学舎にはふさわしくない、男の子と男の子の……要するに早い話が端的にいうと『BL』というジャンルのものであった。
前にも述べたように、佑はそういうものを目にするのは初めてなのである。
まして、いまやそのジャンルは成長を遂げ、書店などで1コーナーを築いているなどとは、彼の想像の外なのだ。
まあ、一般的男子の認識というのはそんなものかも知れないが。
(うわ、うわあ)
かなり刺激の強い内容だったが、それだけに目が離せず、ついつい読み進めてしまう。
その内容はというと、ご丁寧なことに主人公の名前が『ハル』といい、同性の先輩に恋をしている設定なのであった。
(ま、まさか飛弾野さんは北条とのこと知ってるのかな)
そんな思いが頭をよぎる。
ラブレター(?)を代筆したのだから知っていてもおかしくないし、グストでのこともあるのだから『知っている』と仮定する方が無理がないのである。
しかし、そんなことを思うと、不安が心を苛むので佑は意識的に考えないようにしているのだ。
(それにしても)
佑にとって腑に落ちないのはその『先輩』のことだ。
それまでは友人達と女の子とかアイドルとかの話をしていたような(つまりノンケの)彼がなぜ『やり方』を知っているのか?
『ハル』の思いを予測していたならともかく、軽く驚いていたようだったのでそうではないだろう。
まるで戸惑う様子もなく、迷いもせずに男の子との行為に突入していく展開に、佑は面食らっていた。
(こ、こういうものなのかな)
もちろんコミックはフィクションであり、実在の人物、事柄、行為や感情等とは関係がない。
が、経験もなければ知識もない佑がそれを『一般的』だと思い込むのも致し方のないことかも知れなかった。
時ならぬ衝撃、しかもいかがわしくもなまめかしいカルチャーショックに戸惑い、うろたえまくっている純情男子の佑であった。
しかしながら茗が『参考書』と言っただけのことはあり、由香と留美の睦み合いよりはかなり参考になった。
いや、参考になったどころではない。
茗の計算の内なのだろうが、後輩の名が『ハル』なのも手伝ってつい彼を当てはめて想像してしまったのである。
その結果、ご想像の通りのことが起こり、佑は慌てて本を閉じた。
しかしそれでおさまるものではなかった。
彼は少しの間、席から立つのもはばかられる状態を保ってしまったのだ。
ここに至り、茗の意図がはっきりとわかった佑だったが
(飛弾野さん……場所柄を考えて欲しかった)
と心の中でぼやくのであった。
それはぼやく対象が茗なのが珍しいだけで、いつものことである。
更に彼は
(でも、留美に後ろから見られなくて助かったよ)
留美がいつも通りの時間に登校していたなら、背後から覗き込まれてどうなったかを想像した佑。
冷や汗をふきながら、留美がまだ来ていないことに感謝したのだった。
さて、こちらは噂の留美と治。
彼女は彼を強引にベッドに寝かせていた。
で、先日佑相手にやったのと同じようなことをしたのである。
要するに看病をしだしたのだ。
「そ、そのこれ、いや、ぼくカゼじゃなくて」
「ダメよー、生兵法は?」
だが、おそらく彼女の医学知識は治よりも少ないだろう。
「佑だって可愛い後輩のことを心配すると思うから、ね?」
可愛らしく首をかしげるようにしてそんなことを言う留美と目を合わせられない治だが、それでも彼女に告白することを決意した。
その点、某先輩よりも決断力があるが、当事者としては慰めにもならないだろう。
それに、彼ほど重い内容の告白ではないので単純に比較はできない。
「ぼ、ぼく」
興奮のためか顔が赤らんでいる治を、留美は通常の五割増しで可愛らしく思った。
「こ、こんなこと、ふしだらで恥ずかしいんですけど」
男の子が自分を表現するときにつかう形容詞ではない。
「留美先輩の顔が」
本当は『姿』で『裸』なのだが、とてもとても(以下かなりの数の『とても』が続くのだが割愛する)そんなことは言えるわけがない。
「夜、目に浮かんで」
一瞬
「あら」
と心の中で思う留美。
先日、体験したことのために治が自分のことを忘れられない状態なのだ、と気がついたが何も言わずにこにこしていた。
それは彼女の性格が悪いから、ということではもちろんなく、恋人である佑の『可愛い』後輩の気持ちが落ち着くのを見極めていたのだ。
だが治はまだ落ち着く様子はなかった。
「ぼっぼくっ、先輩が、佑先輩が好きなはずなのにっ……自分が、こ、こんな浮気者だったなんて……せ、先輩に申し訳なくって」
しゃくり上げるようにしながら、途切れ途切れに訴える治。
ややあって、留美もそろそろ頃よしと見たのか
「治クン?」
と呼びながら顔を近づけ、そして囁いた。
「そんなにショックだったのかな」
ほぼトレードマークと化している悪戯っぽい笑みを浮かべて続けた。
「あたしのヌードって?」
そのセリフの方がショックだった。
瞬間的にその場面、というより彼女の裸身がオーバーラップしたくらいである。
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